Autumn Cafe
秋、だけど落ち葉までは、まだ少し
静けさが、外へと誘う、昼下がり
街、行き交う人の顔、おだやかに
思うまま、過ぎゆくときに、身を任せ
街角の、小さなレンガのカフェは
今日も誰にも気付いてもらえない
木の扉、開いたその向こうには
ステキな笑顔が待っているのにね
鈴の音一つ鳴らして、顔を見せたボク
コーヒーの香、少し、きつく鼻をついた
「いらっしゃい!」って一言、聞こえてきたんだ
一番好きな、笑顔、待ちわびていたのかな?
久しぶりだねって、最近、どうしていたの?って
聴き慣れた、あの娘の言葉、優しく迎えてくれた
久しぶりだよって、色々、大変だったよって
ちょっとだけ、照れ笑いして、いつもの窓辺の席へ
秋、通りの顔ぶれも、いつの間にか
色褪せて、夏の記憶と、似てなくて
風、葉をなびかせながら、またどこか
薄い影、アスファルトの上、揺れている
ぼんやりと、頬杖ついて見ている
ボクの視線は移ろい右左
色んな顔、色んな想い抱いて
雑踏奏でて消えゆく景色
グラスの氷はじける、季節外れでも
アイスコーヒーが、ボクの、お気に入りなんだよ
「美味しいね」って一言、返したボクに
笑顔をくれた、あの娘、ちょっと上機嫌かな?
流れゆく時間が、あまりに、早すぎる毎日
気がつけば、また一つだけ、年を重ねていたよ
変わっていないって、呟く、独り言の強がり
本当は、そんなことくらい、わかりきっているのに
また顔を出すよって、あの娘に、言い残したボク
鈴の音を、もう一度だけ、鳴らしてドアを開けた
また来てくださいって、ぬくもり、胸の奥まで触れて
ドアの外、頬を撫でてゆく、秋の儚さ感じ
(-simplex.269g.net-、2006年10月15公開)




