8話 転移魔法
今日の寝食を無事確保できた。今は宿屋のベッドの縁に腰を下ろしている。
「ごめんな、一緒の部屋で」
傍らに立ったままのアルウにベッドに座るよう促し、二人揃ってベッドの縁に座る。
宿屋には一人用の部屋しかなく、2部屋借りるのは金銭的に無理だった。
「いい」
気を遣ってくれているのか、大丈夫だと言ってくれる。
アルウは身を寄せ、自身の尻尾を俺を囲うようにまわしてきた。
「アルウって一体何者なんだ?」
「?」
「ああ、えっとこの尻尾とかその角とかみんなと違うところ多くてさ」
「私は竜人」
「ドラゴン!?」
「そう」
へ、へぇ。そうなんだ。
とんでもない話をさらっと聞いてしまった。
「どうしてあんなところにいたんだ?」
「つかまった」
「誰に?」
「わからない……けどもういない」
「え、どうして?死んだの?」
「アオイ」
俺?俺がどうしたんだ?
「代わりにアオイ、呼び出した」
「え?」
今なんて言ったの?
「代わりにって?呼び出したって……え?」
「そしたらアオイ、そのまま連れて行かれた」
「……」
全然意味が分からなくて頭が痛いが、なんとなく流れは理解した。
なぜ、俺が目覚めた時、あの地下牢に居たのか。
なぜ、俺が衛兵に捕まってしまったのか。
それはどうやらあそこにいたはずの本来の犯人、オーロスとかいう奴と入れ替わりで転移してきてしまったかららしい。
「待って。じゃあ俺が死にそうになったの、アルウのせい?」
「そうかも?」
まじかぁ。
結果、生きてるんだからいいけど、なんだろうこの気持ち。
「どうして俺なんだ?」
「わからない」
呼び出したらたまたま俺だったということか。
なんか脱力感がやばい。
「!」
耐えきれず体を倒したら、後ろにまわっていたアルウの尻尾を下敷きにしてしまった。
びくっとアルウが身を揺らす。
「怒ってる?」
「怒ってはないよ」
心配そうに顔を覗き込んでくるアルウにそれだけ伝えた。
それでも眉を寄せる。
「アオイも私と同じことできる」
「同じこと?」
「うん。魔法」
「え、そうなの?」
「うん」
「やってみたい!」