7話 クエスト
「ほら、そっち行ったぞ」
「あいよ」
華麗な槍捌きで5匹目となる猪の息の根を止める。
手慣れた手つきで害獣を駆除する彼らを離れて見守る。
「ま、大体こんなところかな」
「結構大変そうだね」
同じく離れて見守っていたパーティーメンバーの一人が俺に教えてくれた。
冒険者ギルドでしばらく話した後、一緒に依頼に出かけることになった。
依頼内容は、作物を荒らす害獣の駆除だ。
見ず知らずの俺を気前よく誘ってくれるなんて、なんていい人達なんだ。
と言いたいところだが、どうやらそういうわけではない。
簡単に言うと、初心者を連れて依頼を受けることでギルド側の仲介料が何割か減るらしい。
ギルド側としては、初心者は早くベテランになってほしい。
初心者側からしたらなるべく安全に経験を積みたい。
ベテランは、初心者を連れることで取り分が増える。ということだ。
「じゃ、頼んだぜ」
「はい…」
二人で猪を倒した男達がその処理を獣人に任せてこちらに向かってくる。
「どうだい?ちょっとは勉強になったかい?」
「そ、そうですね」
ギルドの仕組みについては勉強になったが、実践はそうともいかない。
ベテランの冒険者が害獣を狩るところを見たって自分の技量がぐんと上がるわけではない。
俺には討伐系の依頼はこなせそうにないか……。それは置いておいて気になることがある。
「あの、彼女は?」
「まあサポーターみたいなもんだ。狩った獲物の解体とか荷運びとか」
「サポーター……」
そうなのか。
首輪を付けていて、一見奴隷のように見えなくもないが……
昨夜の地下牢での出来事を思い起こしてしまう。
この世界には奴隷文化があるのだろうか。でも俺が捕まったのは、無許可奴隷取引の罪だったはず……?
無許可……ってことは許可されていればいいということか?
ぶんぶんと頭を振って気を紛らわす。いかん今は考えないでおこう。
「よっしゃ。この辺の獲物はいなくなったし、戻りますか」
「おー」
「はーい」
ギルドに戻ったあと、依頼達成と素材の回収を済ませたリーダーが戻ってきて報酬の分配を始めた。
俺はただ見ていただけだからもらうことはできないだろと思っていたが、リーダーは銅貨を何枚かくれた。
「これで今日の泊まるところぐらいは確保できるだろ」
「ありがとうございます」
「おう。なんかあれば声かけてくれよな」
報酬の分配が済むと彼らは、じゃあな。と呆気なく行ってしまった。
彼らの心遣いに感謝しつつ、依頼の道中で教えてもらった安い宿屋へと向かって歩いた。