6話 ギルド
街に入ったはいいが、俺は一文なしだ。
出店からいい匂いを漂わす焼肉も宿屋のふかふかベッドもありつくことは叶わない。
「アルウ、何か稼げる仕事ってないか?」
なんでもかんでも彼女に聞いてしまって申し訳なく思う。彼女もなんでも知っているわけではないだろう。
そもそもアルウがどこまでこの世に精通しているのか分かっていない。
なぜ地下牢にいたのか。どうやって俺を助けてくれたのか。彼女は一体何者なのか。
教えてもらわないといけないことはやはり教えてもらわないといけないが少しは自分で考える努力をしてみる。
「当面の目標はやっぱり金だよな」
稼ぐ方法は、起業するか、雇ってもらうか、物乞いをするかぐらいだろうか。
起業といっても先立つものがなければやはり何もできない……いやそんなことはないか。
「なあアルウ、俺を転移させてくれたあの技…魔法?って何回でも使えるのか?」
「できない」
「そっかあ」
もし、簡単に転移ができるなら運送業に革命が!と思ったがそう簡単にはできないようだ。
凡人の脳みそではやはり起業は無理がある。
そうなれば雇ってもらうしかない。サービス職、事務職、専門職。
異世界のサービス職と言えば酒場などの接客、事務職なら商会などの事務、専門職なら狩りに鍛冶にと言ったところか。
流れ者の俺がありつける職業なんてあるのだろうか。
「この世界って、魔物とか害獣みたいなのいるのか?それを討伐する人とか」
「いる」
「そっか。冒険者的なのはあるんだな」
悩んでいても進まない。やはり異世界といったら冒険者ギルド。
加入に審査とかあって、異世界転生した俺は超能力発揮してしまう!なんて展開があるはずだ。
「では、こちらが身分証になります」
「ありがとうございます。」
やはりアルウに頼って、冒険者ギルドらしいところに案内してもらった。
加入に審査などなく、加入時の手数料もない。身分証は厚紙一枚きりだ。
来るもの拒まず、去るもの追う精神で、とにかく加入者を増やし依頼の仲介料をもらうというのが冒険者ギルドのようだ。
「依頼はこっちの掲示板か。受けられそうなのあるかな」
「おーい。新米くん!」
掲示板を見ていたらガッと首に腕を回された。
やばいやばい。たかり?
「俺なんも持ってないですよ」
「は?」
男はきょとんとして笑い出した。
「違う違う。そんなんじゃないから。どう、ちょっとあっちで話さない?」
指差す先にギルド内の備え付けのテーブルがあり、男のメンバーであろう人達が手を振っていた。
話すくらいなら。そう伝えて男についていく。