3話 公開処刑
冗談ではなかった……
「市民の皆様。こちらが本日の大罪人になります」
「「「おおおぉぉぉ!!!」」」
市民が今か今かと熱狂した声を上げている。
死刑はどうやら公開処刑のようだ。わざわざ広場に断頭台が用意されている。
あれから時間は過ぎて正午辺りだろう。お天道様が高く昇っている。
「この者、オーロス・マーヴァルは国家反逆に値する罪を犯した!」
「国家反逆!?」
そんなに重いの!?
じゃあ死んで当然か…とはならない。冤罪なのだから。
「同胞は必ずこの者と同じ運命を辿るだろう!」
「この人でなし!」
「早くやっちまえ!」
死刑執行人の声も外野の声もうるさいが緊張し過ぎて頭に入ってこない。
「まずはこの大罪人に死刑を執行する!!」
まじか、俺もう終わりなのか。せめて時世の句を。
しゅるると断頭台の刃を張る縄が解ける音がやけに耳に残った。
刃が胴体と首を切断する刹那、魔法陣が断頭台下に出現し、俺は転移した。
転移した先は街道が近くにある原っぱだった。
断頭台ごと転移しなくてよかったっと思ったのは落ち着いた後だった。
「うおおおおおおおおお!」
ひとまず叫ばずにはいられない。
人は恐怖に打ち勝つため、己の気を保つために絶叫しないではいられない。
「うああああああぁぁぁ……お?」
言葉にできない激情を発散し終え、正気に戻ると見知った顔が目の前に合った。
昨夜地下牢で出会った蒼鱗の獣人だ。もちろん女の子。
「君が助けてくれたの?」
こくりと頷く。
返事をしてくれない辺り、一発で分かる。内気な子だ。
「ありがとう。とても助かったよ。君は命の恩人だ!」
こくりこくりと頷く。
どうやら恩に着せたいらしい。
「何か俺にしてほしいことがあるの?」
またしても頷くだけだ。
「なんでもはしないけど、言ってみて?」
保険をかけて聞くだけ聞いてみる。
中々話してくれないので顔を近づけたら小さい声が聞こえた。
「番いになってほしい」