表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の娘は穏やかに暮らしたい  作者: 追放系聖女Tuber
1章 聖女の娘の日常
9/25

9話 スタートライン

 リインの加護を得て聖女の力を手に入れてから一年が過ぎた。

 聖女の力というのはなんとも便利なもので、考え事をしながら敷地内の畑に水やりができるし、怪我した時も楽に回復魔法を使えるから傷も残らない。

 そもそも回復魔法自体が貴重なものらしいので、やはり教会からのオファーがあったが当然断った。

 異世界だから冒険者になるなんてこともなく、毎日ママの手伝いをして、たまにリサとリアと遊んで、気が向いたら一人で街に行って知らない子供たちと遊んで、なんともまあ子供のような生活を満喫している。


「ママ、遊んでくるねー」

「暗くなるまでに帰ってくるんだよ」

「はーい」


 昼ご飯を食べた後、今日は勉強もお休みなので、二人で暮らすには少し広い家の敷地から出て、王都中心の広場に向かう。

 いくら王都とはいえ、さすがに子供一人で出歩いて何の心配もない程に治安がいいわけではないが、私には加護があるので何かあれば眷属なりリインなりを呼び出せば何とかなるので、ママとしては特に心配はないようだ。


「アリサちゃん!」

「リサ、リア。お久しぶりです」


 広場に遊べそうな子が居なかったので適当にほっつき歩いていると、リサとリアに遭遇した。

 一年で身長も少し伸び、ますます私よりも背が高くなって、服も学校の制服を彷彿とさせる物を着ている。


「その服、どうしたんですか?」

「学院よ。今年から中等部に通うことになったの」


 学院……王立クレア魔法学院の事だろうか。

 確か、貴族や商人の家の子が教養を付けるために小等部から通い、中等部から魔法や剣術、礼儀作法にダンスを本格的に習い始め、高等部では政治経済と魔法、剣術をさらに専門的に習うとママに聞いた。まあ私は元教師がついているからと通っていないが。


「制服似合うー?」

「はい。似合っていますよ。にしてもその服、高そうですね」

「デザインを重視しつつも魔法防御と物理防御が施されて実用性もばっちりらしいわよ。その分なかなかの値段らしいけど」

「ホントに高そうですね……」


 頼めばそういう服も買ってくれるだろうけど、私には縁がなさそうだ。


「アリサちゃんは学院には通わないの?」

「うーん、まあママがいますし」

「出会いの場も兼ねてるからせめて高等部くらいは通った方がいいんじゃない?」

「出会い……」


 そりゃ可愛い子と出会いたいけど、私には——俺には、前世に大切な彼女がいるからな。

 ただ、気持ちは今でも変わらないのになぜか名前も顔も思い出せない。それでも、彼女のことを考えると新しく彼女を作ろうとは思えない。


「あと、お父様が学院でしか学べないこともあるって言ってたわよ」

「それはなかなか気になりますね」

「楽しいよー。お友達も出来るしいろんなこと勉強できるし」


 そう言われると気になる。


「アリサちゃん、高等部に行けるくらいの実力はあるんだし十二歳になったら受けてみたら? そしたら一緒に居られる時間も増えるし」


 少し迷っていたところに、追い打ちをかけるようにそう言われた。


「行く……行っていいか聞いてきます!」

「じゃあ私たちも一緒に行ってもいい?」

「もちろんです!」


 理由はともかく、学院に行ってもいいか許可を貰わないといけないので、早々にリサとリアを連れて家に帰った。

 二人が一緒に暮らしてくれたら無駄に広い敷地も家も寂しくならないのにと思いながら家に入る。


「おかえりー。あらリサちゃんにリアちゃん。久しぶりだね」

「ユウカの娘と友達?」


 帰ると、知らない少女がいた。

 見た目だけならば年齢はたぶん十二とかそこらだろうが、喋り方からしてママと同じように見た目が若すぎるだけで年は普通に大人なのだろう。けど、ナチュラルにママの膝に座っているし、本当に大人かも怪しいな。


「ママの友達ですか?」

「そう。私はフラウ。ユウカの愛人。フラウと呼んで」

「普通に友達でしょー。子供たちの前で変なこと言わないで」

「ふふっ、ごめん。そこの真ん中の子がアリサ?」

「で、右がリサちゃん、左がリアちゃんね」

「そう、みんなよろしく」

「よろしくお願いします」


 なんとなくママと同じような、とんでもなく強い人特有の気配を感じるが、ママの友達と思うとそこまで怖くはない。けど、リサとリアはなぜか固まっている。


「ま、魔王……」

「知ってたんだ。まあそんなに怖がらないで。私も今では書類に埋もれるただの魔族……はぁ」

「はいはい、仕事のことは考えないの。せっかくウチに来たんだから、ね?」

「うん……」


 仕事に疲れて友達の膝の上で頭を撫でられながら慰められる……そもそも魔族と人族は和解したと聞いたけど、魔王って元から怖い人じゃなかったのでは。

 流石にこんな可愛らしい姿を見れば警戒心も解けるようで、リアに至っては必死に撫でたい衝動を抑えている。


「あっ、そうだ。ママ、私も学院に通いたいです。高等部から」


 フラウに驚いて忘れていたが、本題はこっちだった。


「うーん、行かせてあげたいけど、色々不安なんだよね」

「不安ですか?」

「そう。あそこって貴族とか商人とか騎士とか、まあプライド高めな子たちが多いから、力があるだけの平民ってちょっと疎まれがちなんだよね」


 多分、別の学院で教師をやっていたママが実際に経験したことなのだろう。


「それに、もし通っちゃうと卒業した後好きに暮らすなんてことはできないよ? アリサちゃんだと騎士団か教会かのどっちかに所属することになると思う」


 それは流石に嫌だな。

 教会ならまだしも、騎士団なんて血生臭そうなところに所属したくはない。

 もちろん将来的には働きたいが、私は戦わないでいい道を進みたいのだ。

 けど、せっかくなら色々な繋がりを作りたいし、リサとリアとももっと一緒にいたい。それに、魔法を専門的に学べるというのも魅力的だ。


「……少し、考えてみます」


 行きたい気持ちはある。しかし、行けば将来やりたくない仕事をやらされることになるかもしれない。

 もちろん前世程に自由が保障されていないこの世界では仕方のないことだし、むしろこの世界の基準で言えば騎士になれるのは名誉なことなのだろうが、少なくとも私には不向きだ。

 教会でシスターになるのも聖女として民を癒すのも、嫌というわけではないが、前の国の教会の良くない噂を聞いてしまったせいで躊躇してしまう。

 この世界のことは知識では知っているが、経験が少なすぎるし、何より価値観が違うのでこういうことを判断しようにも迷う要素が多すぎる。


※ ※ ※


 リサとリアが帰った後、私はママとフラウから色々と話を聞いていた。

 やはり騎士団や教会に所属するとなるとどうしても「聖女」として扱われることになるなるらしく、正直私にはハードルが高い。

 別に肉体労働だとか戦闘自体はいいのだが、人と戦い、そして命を奪うとなるとさすがに躊躇ってしまう。


「……聖騎士は少し気になりますけど……」


 気になった職業の一つ、聖騎士は教会所属の騎士だ。

 倍率は高いが、聖剣を使って全線で戦うだけでなく後方での支援や街の治安維持の仕事もあるようで、国家所属の騎士と比べて血なまぐさい仕事も少ないらしい。

 ただし、一人一人が騎士より圧倒的に強く、特殊な装備を与えられる代わりに魔族やドラゴンとの戦闘と言った危険な任務を任されることが多いらしいので、有事のことを考えると気が進まない。

 けど、こういうことはたぶん迷っていたら最後まで決まらない。


「やっぱり、行きたいです」


 聖女という肩書で苦労することはあるだろうが、さすがに融通は効くだろう。

 それに、考えようによっては聖騎士なんて男のロマンじゃないか。今は女だけど。


「そう、じゃあ高等部に入れるように、お勉強頑張ろっか」

「はい!」

「って言って、ももう中等部卒業程度の知識はあるから復習くらいしかやることはないけどね。どうせあっちで剣術もやるんだし、ふーちゃんに教えてもらったら?」

「いいんですか?」

「もちろん。いくらでも教える。暇があれば」


 こうして、私の学院入学に向けた特訓の日々が幕を開けたのだった。


これにて1章も終わりです!

果たして2章からはどうなるのか……

明日から2章始まります(`・ω・´)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ