8話 女神の加護
「着いたよ」
王都にママの知り合いがいるらしく、その人に挨拶しに行くために教会に来ていた。
教会と言っても街中の大きい教会ではなく、郊外にあるこじんまりとした教会だ。
「お久しぶりです、聖女様」
中に入ると、十代くらいであろう若いシスターが一人でいた。
「久しぶり、マリアちゃん。大きくなったね」
「聖女様は十年も経ったのに若いままですね。隣の子は例の娘さんですか」
「そうだよ。可愛いでしょ」
「ええ、とっても。初めまして。マリアです」
「あ、アリサです……」
流石に前世の俺と同い年くらいの女子と喋るのは緊張する。
人見知りもあるけど、巨乳だし太ももが見えてるし黒い紐も見えてるし、年頃の男子にはとても刺激的だ。
そういえば前世で女子と話す時ってどうしてたっけ?
学校に行っていれば同級生に女子くらいいくらでもいるはずだが、どうも記憶があいまいで思い出せない。
「お祈りですか?」
「ううん、りぃちゃんに会いに来たの」
マリアではなくりぃちゃんというのがママの知り合いか。いったいどんな人なのだろう。マリアみたいに煽情的な恰好じゃなければいいけど。
「今から呼ぶので少しお待ちください」
どこかに呼びに行くかと思いきや、マリアは教会の中にある像に祈りを捧げ始め、その祈りに答えるように魔法陣が現れ、そこからツインテ―ルの少女が現れた。
「久しいの、ユウカ!」
現れるや否や、ママに駆け寄って抱き着いた。
「相変わらずいい身体じゃの~」
抱き着いたと思うと今度は胸に顔を埋めながら尻を揉み始めた。この人ヤバい人では。
「娘が見てるんだから変な事しないで」
「おっと、そうじゃったな。エクセリア王国の守護神として、先代の聖女ユウカと聖女アリサが我が王国の王都に住まうことを許す」
この少女、神様だったのか。ということは、確か再生と浄化を司る女神リイン様では?
つまり、ママは知り合い(女神)に会いに来たと……。
「それと、アリサにはおまけじゃ」
「おまけ?」
「そうじゃ。アリサは初めての相手に拘りはあるか?」
「初めて……あの、処女だけは、好きな人がいいです……」
リイン様の耳元で、ママに聞こえないように小さく答える。
「そうか。じゃあキスはいいのか?」
「……ちょっとだけなら」
「うむ。では——」
「んんっ⁉」
なぜあんなことを聞いたのかと思っていると、突然舌を絡ませて熱いキスをしてきた。
「んっ……んあぁ、なに、これ……」
身体が少し熱い。頭もぼーっとするし、キスのせいで妙にムラムラする。
幸い身体がまだ未熟なので、色々とバレてはいないが、たぶん顔には出ているだろう。
「刺激が強すぎたか。まあこれでアリサにもわらわの加護が与えられた。これで、アリサも聖女になれるぞ」
ぼーっとしているせいで、いまいち言っていることが理解できない。
「アリサ様、奥の部屋で少し休んでください」
マリアに抱きかかえられ、私は奥の部屋のベッドに運ばれた。
ママはリイン様と話があるようでついてきてはくれなかったが、「ママも通った道だから大丈夫だよ」と言っていたしなんともないのだろう。
突然熱でも出たのかどんどん熱くなっていくので、マリアに手伝ってもらって服を脱ぐ。
「マリア、さん……これって……」
「リイン様の加護が与えられた際に魔力が流れ込んできた影響です。馴染めば収まるので、それまでゆっくり休んでください。体力も使いますからね。それと、私のことはどうぞマリアとお呼びください」
「マリア……その、手を繋いでてもらっていいですか?」
風邪を引いたわけではないけど、こういう時はなぜか無性に不安になる。
「もちろんいいですよ」
いつもの手じゃないけど、こうしていると安心する。
マリアはベッドに腰かけているので、腰のあたりと黒い紐パンがちょうど見えてしまうのだが、それどころではないのであまり興奮しない。
「んっ……ふあぁ~、寝てた……」
いつの間にか寝落ちしていたようで、起きた時には体調も戻っていた。それどころか、加護の影響なのか、朝よりも体調がいい気がする。
「おはようございます、アリサ様。お身体はどうですか?」
「直ったみたいです。むしろ力がみなぎってます!」
それに、今までは近くに人がいただけで気配を無駄に感じ取っていたのもなくなった。
「よかったです。では、報告に行きましょうか」
部屋から出て、楽しそうに話しているママとリイン様に上手くいったと報告しに行く。
「おー、それはよかったのじゃ。これでアリサも聖女を名乗れるぞ」
「力が使えるようになったってことですか?」
「そんな感じじゃ。ちゃんとした聖女の力は女神の魔力を受けて初めて使えるものじゃからな。それと、魔力が溢れ出ておったのでそれも抑えておいたぞ。今まで無駄に気配を捉えて大変だったじゃろ」
「それで……ありがとうございます、リイン様」
「気にするな。ユウカの娘はわらわの娘のようなものじゃからな。それと、様はいらん。わらわのことはリインと呼ぶのじゃ」
「わかりました。リイン」
まあ信者というわけでもないし、そもそも人に様を付けて呼ぶこと自体あまり慣れていないからありがたいな。
「信者ならまだしも、娘からリイン様などと呼ばれたくはないのじゃ」
「気持ちはわからなくないけど、アリサちゃんは私の娘だからね?」
「わらわの魔力と加護があるなら娘も同然じゃ。それに、産まれたときから見守っておったしな」
見られていたのか。変なことしてなくてよかった。もし思春期が来て色々するようになっていたら大変なことになっていたな。
「そうじゃそうじゃ、加護の説明をしておこう」
重要な事な気がするが、完全に忘れていたようだ。
リインによると加護で聖女としての力を最大限発揮、一部の魔法発動の簡略化、リインの眷属への命令権、リインと眷属を召喚できる特殊魔法の習得、いつでもリインと話せる魔法が使えるようになったらしい。
しかし、そこまで色々出来てしまうと逆に不安だ。
「まあ何かあればわらわを呼べばよい。面倒な事の無いようにわらわも色々伝えておくし、気負うことはないのじゃ。そもそも聖女と言えばユウカじゃからの」
そういえば聖女様と呼ばれるのはママばかりだったな。まあ少なくとも聖女として召喚されて八年以上はこの世界にいるのだから、ママのほうが聖女として認識されていて当然か。
それに、もし何かやらなきゃいけないとしたら最初からリインもどうするか聞いていただろうし。
「そういえば眷属って?」
「眷属は蛇と聖属性の天使と精霊じゃな。蛇はともかく、天使と精霊は可愛いし強いしなかなか便利じゃぞ。わらわも眷属共も、普通に念じれば来てくれるから何かあれば呼ぶといい」
こうして私は女神の加護を受け、色々な力を手に入れた。
話を聞く限りは所謂チート的な感じなのだが、まあ使用用途と言えば今後も身体と髪を綺麗にしたり、動くのが面倒なときに魔法で出した水を飲んだり、私かママが怪我した時に回復魔法を使うくらいだろうから、きっと生活が変わることはないだろう。
色々力を手に入れたが、普通でいいからこれからも王都での生活を満喫したいものだ。
魔法の水は条件を満たさない限り消えないので飲み水になりますが、広島の水道水のほうがおいしいです