20話 逃げるアリサ
3章あらすじ
前世の記憶を徐々に取り戻してきたアリサは、あることで悩むようになった。
それは、前世の彼女との関係。
魔界に来て仲良くなって、二人でいろいろなコトを経験したクロエのことを意識してしまうけど、前世の彼女とのことに決着がついていないアリサは、どうするべきか悩んでついには一人で遺跡に潜る。
アリサは過去のことに決着をつけ、そして新たな人生を始められるのか――
シエラに前世のことを聞いてから四ヶ月、あれから私はよく彼女の夢を見るようになった。
やはり名前は思い浮かばないし、結局彼女が誰であるか、確信には至らなかった。
そして、やはり私は前の私とは違うようで、どれだけ彼女のことが気になっても、どうしても気持ちが揺れてしまう。
彼女のことは確かに今でも好きだ。未だに最高の彼女だった思っているし、彼女以上の女性が現れることなどないと思っている。
それでも私はほかの子——クロエのことが、どうしても気になってしまう。
あれほど大切にして、大切にしてくれていた彼女の事を差し置いて、十一歳になった子のことを意識してしまうなんて、私はいったいどうしたんだ。
そもそも、平然と「私」と言って、敬語で喋って、体位振る舞いも女の子らしく、そしてあれほど思っていた彼女よりもクロエのことを考えてしまう。本当に私は前世から同一人物なのだろうか。
確かに肉体は全く違う。しかし、記憶を持って、人格も変わっていないはず。現に趣味も性癖も、この世界で可能な事に関しては全く変化がない。
私はいったいなんなんだ。
そもそも、なんでクロエのことを好きになってしまったんだ。確かに可愛いしスタイルもいいし性格もいいけど、まだ十歳だぞ?
それ以上に気になるのが、前世の彼女へに対する感情が変わっていたことだ。
確かに彼女のことは今でも愛しているけど、恋愛感情かと言われると違う気がする。
気持ちが変わった……というのは、少なからずあるだろう。しかし、愛が冷めたとか、そういうことではない。
やはり、私の想像が——彼女が今のママであるということが事実なのだろうか。
しかし、それならなぜ私は彼女に対して——ママに対してクロエが好きであることに罪悪感を覚えるのだろう。
自分の感情がよくわからない。
※ ※ ※
夜、私は毎日のように前世のことを夢に見る。
私は——俺は、彼女のことを侑先輩と呼び、侑先輩はあっくんと呼んでいた。
まあ内容は毎回下着が濡れてしまうようなものなので、完全に忘れている重要な記憶が見つかるなんてことはなさそうだが。
しかし、その呼び方だけでもいい収穫と言える。
本名が何だったかはまだ思い出せないけど、ママと侑先輩が同一人物であることに確信は持てた。
侑先輩と恋人として過ごした期間より母娘として過ごした期間のほうが長ければ、当然好きな異性という認識ではなくなるだろう。それに、転生してすぐ侑先輩のことが気にならなくなった理由にも納得がいく。
けど、「ママ、好きな人が出来ました」なんて報告することにはやはり躊躇いがある。
侑先輩のことだから、ママとしても先輩としても、私の幸せを願って背中を押してくれるだろう。けど、そんな最高の彼女を裏切っていると思うと胸が痛い。
こんなことになるなら、初めからすべて知っていたかった。
わざわざ記憶を封じる必要なんてあったのだろうか。
※ ※ ※
「アリサちゃん、魔力ちょーだい」
最近、クロエが妙に魔力を欲しがる。
先輩のことを考えると控えたいのだが、ああいわれたときにはすでに馬乗りになられているし、なんなら服を脱がされた状態になっているので断れない。
「いい、ですよ……」
「やったぁ」
そして、相手がクロエならと素直に受け入れて、そのまま終わるまでよがってしまう自分に嫌気がさす。
どれだけ先輩のことを考えても、クロエに気持ちよくされてすべて真っ白になる。
「クロエ……もっと、強く……」
クロエの体液に含まれる魔力で、無駄に感度がよくなるし、理性もどんどん蒸発していく。
十歳とは言え、やはりサキュバスは侮れない……。
「ふぅ、おいしかったー」
美味しく食べられた。
まだまだ未熟な身体のはずなのに、頭が真っ白になるくらいに蕩けてしまう。
前世の私ってこんなに感じやすかったっけ。
若干Mだったような気はするけど、あんなによがりまくることはなかった。むしろ基本的にはリードしたいほうだったし。
身体が変わった影響で精神も順応したとか、そういうことなのだろうか。
もう前世の私の要素なんてないに等しい。
……そういえば、クロエってなんで私の魔力をこんなに欲しがるんだろう。
正直、魔力が美味しいってだけの理由だったらなく自信がある。
けど、やっぱりクロエから「触って」なんて求めてはこないし、きっと魔力が欲しいだけなのだろう。そもそも、サキュバスとエッチな事するからってそこに愛を求めるほうがおかしいのだ。
ママに私の心境含めて色々バレたらどうしよう。子供にはまだ早いって叱られるかな。もしママが私と付き合っていたころのことを認識していたら泣かれるかな。
……はぁ、賢者タイムって無駄に色々考えて虚しくなるな。
それから数日、私は侑先輩と子供が何人欲しいとか、幼馴染が居たらいいねとか、そんな話をしている夢を見た。
あんなことをした後なだけあって、罪悪感で死にたくなる。
たぶん、これ以上クロエと居ると私は堕ちてしまう。
フラウに頼んで、いったん魔王城から逃げよう。
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