表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の娘は穏やかに暮らしたい  作者: 追放系聖女Tuber
2章 聖女の娘の修行
12/25

12話 処刑

「じゃあユウカ、また来年」

「うん。アリサちゃんをよろしくね」


 武者修行は却下されたが、代替案として一年間魔界でフラウや魔王軍の幹部達に剣や魔法を教わることになった。

 実技的なことは軍で、座学的なことはフラウから教わることになっている。

 魔界までの移動は馬だと時間がかかるので、フラウの魔術での移動だ。

 ちなみに、最近フラウに教わったのだが、魔法陣や詠唱が必須なものや中規模以上の儀式が必要なものが魔術、詠唱を必要とするが慣れれば省略可能なレベルのものが魔法らしい。

 フラウは慣れた手つきで魔法陣を展開し、私を連れて魔界に転移した。

 魔界といっても、どこかの大陸にある特殊な結界の中にある魔族の王国の様な場所なので、普通に空は見えるし、植物もある。

 しかし、見慣れない植物や魔物ばかりで、妙にソワソワしてしまうのでフラウの手が離せない。


「……魔王城に直接転移しちゃダメだったんですか?」

「いいけど、ここの景色も見せてあげたかったから」

「その、綺麗なとこだけど慣れなくて……」

「それは多分魔力のせい。魔界の魔力は人界とは違うから」


 そのせいで落ち着かないのか。

 まあリインの魔力が入ってきた時も熱が出たし、それに比べたらマシなのですぐに慣れるだろう。

 おぞましい魔物に関しては……見なければ気にならない。


「フラウ、手を離さないでくださいね?」

「離さない」


 やっぱり見なくても気になる。

ホラー映画を観た後一人でトイレに行けなくなる様な少年だったので、いると言う事実だけで怖い。


「もうすぐ街に着く」


 向かっているのは人で言うところの王都で、城壁の向こうに大きな城が見えている。

 魔物のせいでここを歩くだけでも怖いが、魔王城と言う存在だけで恐怖もどこかへ消えて無くなった。


「ま、魔王様……どうしてこちらに? それに、隣の人族は……」

「今日から魔王城で面倒を見る」

「はじめまして。アリサです」


 魔族といっても耳が少し尖っている程度で人族との外見的な差は少ないので、さほど緊張はしなかった。


「ああ、君が聖女の娘か。一年間頑張るんだよ」

「はい!」


 前世の知識では大抵人と魔族は敵対関係だったので少し警戒していたが、フラウ以外も案外人には友好的らしい。

 きっと、ハーバーの様な奴の方が少数なのだろう。もっとも、あれは人への敵対心とは違ったが。


 城壁の中に入ると、煉瓦の家が立ち並んでいた。

 観光したいが、周り始めると日が暮れそうなので素直に魔王城へ向かう。

 王都の宮殿なんかとは比べ物にならないほど大きな城に、空には飛竜、門番は黒い鎧と戦斧を持ってただじっと立っている。戦斧に魔石が埋め込まれているのはやはり魔法が得意な魔族だからだろうか。

 隣にフラウがいるので特に取り調べ的なことをされることもなく魔王城に入ると、まずは宿泊する部屋に案内された。


「ここ、自由に使って。隣には同い年の子もいるから寂しくなったら遊ぶといい」

「フラウは……忙しいですか?」

「うん。休暇以外は訓練の時しか一緒に居られない」


 まあ魔王だから仕方ないよな。

 正直一人でいるのはあまり好きではないけど、隣に同い年の子がいるなら一年もあれば仲良くなれるだろうし大丈夫だろう。

「でも、今日は休みだから一緒に居られる。せっかくだし魔王城、案内するよ」


 部屋に荷物を置き、フラウに案内されて魔王城を回る。

 施設としては特に変わったものはないのだが、広いので迷子になりそうだ。

 一応部屋から魔王軍の訓練場、玉座の間、フラウの私室、トイレの位置は覚えけど、下手に移動すれば迷子になりそうなので、探索したい気持ちを抑えて素直に部屋で待機しておく。


 フラウと談笑すること数時間、部屋に魔王軍の幹部らしき魔族の男がやって来た。


「休暇中だけど?」

「その、ハーバー元帥の件で早急な対処が必要になりまして……」

「何があったかここで言って」

「し?しかし……」


 私を見て報告を躊躇う彼に、フラウは「アリサも関係者だから」と言い聞かせ、ハーバーについて報告させた。

 要約すると、ハーバーが邪神の力で脱獄し、流れで他の罪人達も逃したそうだ。

 さらに罪人をヘル教団なる邪神ヘルを崇拝する教団に引き込もうとしているのだとか。


「はぁ……すぐ終わらせる。アリサ、行くよ」

「え、あ、はい!」


 まさか私も同行することになるとは。

 現状ハーバーを捕らえに向かった魔族達は、邪神ヘルの力に苦戦を強いられているらしい。

 フラウがハーバーのいる場所まで私ごと転移させると、脱獄犯と軍の兵士、お互い重傷者が数名、周りの家は半壊でなんとも悲惨な光景が目に入った。

 血と煙の匂い、負傷兵の叫び声で頭がおかしくなりそうだ。けど、この世界ではこんなのよくあること。

 怖がる前に、まずやるべきは治療だ。


「彼等の傷を癒やしあるべき姿に戻したまえ」


 ママに教わって必死に練習した範囲回復の魔法を使って負傷兵だけを回復させる。

 幸い誰も呪いを受けていなかったので、傷は完璧に治癒できた。


「ありがとう、アリサ。お礼にハーバーの処刑、担当させてあげる」


 私が兵士たちを回復させていた間に、フラウはハーバー含む脱獄犯を全員捕らえていた。


「それ、お礼っていうか最初の特訓ですよね……」

「そうだけど、普通ならアリサが直々に手を下すことはできないから」


 一応魔王軍が拘束していたわけだし、それもそうなのはわかるけど、お礼と言われても嬉しくないな。

 けど、私には乗り越えたい壁がある。


「じゃあ、やらせてもらいます」


 私は戦うのが苦手だ。それなのに、よく戦闘に巻き込まれる。なら、一人でも戦える力を身につけなければいけない。でないと、私と一緒にいる人が傷ついてしまう。

 けど、私は例え敵であれ人が傷つく姿は見たくない。そのせいで戦うのが苦手なのだ。

 なら、荒療治が一番早い。


「この場でやっても?」

「いいよ。サクッとやっちゃって」


 そういえば剣を持っていなかったので、兵士から剣を借りて拘束されたハーバーの前に立つ。


「あの時俺を殺せなかったお前が俺を殺せるのか?」


 確かにあの時、殺す気で魔法を発動したけど結局は躊躇ってしまって殺せなかった。

 もちろんハーバーの強さもあるが、もし私に覚悟があれば、あの時ハーバーを殺せていたはずだ。


「手が震えているじゃないか」


 確かに私はハーバーを殺せないかもしれないが、これから処刑されるというのにやけに煽ってくるな。正直イライラしてきた。


「あの聖女も、力があるだけの少女を庇うためだけに身を犠牲にするとは愚かなものだ」


 このまま怒りに身を任せたらあっさり首を斬り落とせそうだ。

 けど、私がやりたいのはそういうことじゃない。

 深呼吸してどうにか心を落ち着かせ、言葉を発する。


「確かに、私が奇襲にも気付けるほど強ければマリアが怪我をすることはありませんでした……けど、そんな私を助けてくれたマリアを侮辱するのは許せませんね。死ぬ前に訂正する機会をあげますよ」


 ああ、自分のセリフから冷静じゃないことがよくわかる。


「愚か者に愚かと言って——」

「黙れ!」


 フラウに教わったように、腕に魔力を纏わせて強化し、そしてハーバーの右足を切り落とす。

 怒りに身を任せていると、自らこの手で、人の足を切断しても特になんとも思わないものだな。

 怒りも振り切ってしまえば逆に冷静のようになってきて、もうこのまま流れで本当に彼を処刑できてしまいそうだ。


「訂正は? ほら、早く訂正しろよ」


 傷がつかないように左足にも剣を当てる。


「訂正しろよ」

「ほう、人格が変わったようだ。面白いな」

「はぁ……」


 続いて、左足も。

 足がなければ流石に立っていることはできず、あっさりと地面に崩れ落ちた。


「あと切れる場所は三ヵ所あるな」

「いい、いいぞ。その調子だ! もっと怒れ!」

「ああもう、うるさいな……」


 この調子で訂正するわけがない。そう判断して、ハーバーの首を切り落とす。

 ああ、敵ならば殺すのもこんなものか。


珍しく男の子みたいに喋るアリサちゃん

幼い子が可愛い声で怒りに任せて怒鳴るのってちょっと胸痛いよね


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 11話と同じです...
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ