イレブンルール
【朝、はやいですね?】
[はい。いつも、この時間に起きているんですよ]
(壁掛け時計が4時を指す)
【朝は強い方ですか?】
[強くはないんですけどね、執筆するならこの時間が、向いていると思うんですよね]
【そうですか?頭が回らなくないですか?】
[逆に他の時間の方が、頭が回らなくなるんですよ]
(水道でコップに水を入れる)
【それは、どういう理由で】
[静けさが一番あるのが早朝で、誘惑が一番少ないのが早朝であると思うんですよね]
(コップの水を一気に飲み干す)
【なるほど】
[昨日の出来事がリセットされて、余計なものが何もない状態が、朝な訳ですよ]
【嫌なことも忘れますもんね】
[はい。早朝は、活動している人も少なくて、テレビもニュースばかりなので]
【他の人が寝ている時間なので、邪魔されることも減りますしね】
[はい]
(ベッドに寝転がる)
【そこで、いつも執筆しているんですか?】
[はい。リラックスして書かないと、ストレスが溜まってしまうので]
【全てスマホでやっているんですか?】
[たまにタブレットは使いますけど、ほぼスマホですかね]
【集中が出来ないと思うので、ちょっとあっち行ってますね?】
[はい]
【朝の4時から、お疲れ様です】
[ありがとうございます]
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◎ルール① ☆朝の4時から執筆する☆
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【すみません。執筆は、どんな感じですか?】
[もう終わりましたよ]
【終わったんですか?】
[はい。今日はもう書きません]
【まだ一時間ほどしか、経っていませんよね?】
(ソファーに寝転ぶ)
[僕、集中力の続かない人間なんです]
【そうなんですか。書くのがはやいと、噂では聞きましたが?】
[そうなんですかね。他の人がどのくらい書いているか、よく分からないのでね]
【結構な字数、書いていると思われますよ】
[まあ。短い時間なら、一気に書けるんですよね]
【そうでしたか】
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◎ルール② ☆短時間集中で仕上げる☆
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【すみません。今、書いている作品って、どのような作品なんですか?】
[書いた作品、見ますか?]
【えっ、いいんですか?】
[はい。どうぞ]
(スマホをいじくり、画面をこちらに向ける)
【これは掌編のデータですね?】
[はい]
(再びスマホをタッチして、また画面を向ける)
[それでこれが長編です。歌詞とかも、たまに書いたりしますよ]
【いっぱい在庫があるんですね?】
[そうなんですよ。前にも言ったと思うんですけど、集中力がないんですよね]
【はい】
(両手をピンと真上に伸ばして、ストレッチ)
[一日一作品だけだと、飽きちゃうんですよ。だから、執筆に関するほとんどのジャンルに、手を出しましたね]
【それが、それなりの評価を受けているわけですからね】
[まあ、エッセイのようなものが、なぜか、一番ウケがいいんですよね]
【私も好きです】
[ありがとうございます]
【エッセイに、力は入れてないってことですか?】
[まあ、そういうことになりますね]
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◎ルール③ ☆執筆は同時進行でやる☆
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【今から、新しい作品を書き始めるんですか?】
[そうですよ]
(両手でスマホを持ちながら入力する)
【準備とか、してないんですか? プロットのようなものはないんですか?】
[はい。少し書くときはありますけど、基本は、まったくアイデアが無い状態から、一気に生み出すことが多いですかね]
【0から一気に100に、ということですか?】
[はい。それじゃないと、いつまで経っても書き始められないほど、考え込んでしまうんです]
(ペットボトルの水を一口飲む)
【準備なしで書けるのはスゴいです】
[それでないと、書けないんです。集中力がないもので、メリハリをつけた方が、スムーズに書けるので]
【長編も、全く構想をしないわけですか?】
[いえ。さすがに、しないわけにはいかないので、軽くは書きますけど]
【掌編などは、ほぼ即興なんですね?】
[はい。タイトルを決めて、一気に書きますね]
(部屋の中をぐるぐる歩きながらスマホを打つ)
【こういうやり方をする人は、他にはあまりいないですよ】
[そうですかね。あと、プロットを書くと、一日中、そのプロットのことばかり考えてしまって、日常生活に支障をきたすので、やめているのもあります]
【日常生活のためが、一番大きいということですか?】
[やはり、ほぼ即興の方が、満足いく作品が完成するんですよね。作品のクオリティーを考えても、執筆の準備は、極力しないのが一番なんです]
【そうなんですか】
[あっ、はい]
【あのう、どうかされましたか?】
[話し掛けられると、書けなくなるタイプでして]
【あっ、失礼しました。静かにしていますね】
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◎ルール④ ☆執筆準備は極力しない☆
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【何か買いたいものがあるんですか?】
(歩道をはや歩きする)
[買い物がメインというよりは、気分転換目的ですね]
(風がそよそよと、髪を揺らす)
【散歩のようなものですね?】
[そんな感じですね。スーパーが大好きなんです。新商品などを見つけたときは、テンションが上がりますよ]
【気分転換には、やはりスーパーですか?】
[はい、そうですね。あの、ちょっとすみません]
(歩道に設置されているベンチに、腰を下ろす)
【何か、思い付いたんですか?】
(スマホを取り出す)
[はい。横断歩道の白色の薄さなどについて、色々とメモを]
【では、黙っておきますね】
[すみません]
(黙々とスマホ画面を、親指で押し続ける)
[あっ、書き終わりました]
【やはり、散歩中はアイデアが降りてきやすいですか?】
(再び、歩き始める)
[そうですね。一番は散歩中ですけど。他にも、かなり溢れてくるのが、お風呂とトイレですね]
【リラックスしているから、とかですかね?】
[たぶん、そうですね]
(空を中心にキョロキョロし始める)
【いつも、頻繁にアイデアが溢れてくるんですか?】
[先程のアイデアも、すごいアイデアというわけではないので。少し弱いかなというアイデアなどでも、いざ読み返してみたら、かなり役立つということも、多くあるので、一応メモしてます]
【迷ったら、忘れ去るのではなくて、とりあえず保存する。それが大事ということですね】
[そういうことです。何でもモッタイナイと、思ってしまう性格もあるんですけどね]
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◎ルール⑤ ☆考えは何でもメモする☆
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【ここは図書館ですか?】
[はい。本がたくさんある場所です]
【執筆に関する情報を調べるんですか?】
(高い本棚の間を、はや歩きで通り抜ける)
[それもあるんですけど、最近は情報を吸収したくて吸収したくて、たまらないんですよ]
【それは、特にジャンル関係なく、ということですか?】
[はい。そうです]
(高い位置の本を手に取り、パラパラとめくる)
【図書館で得た幅広い知識が、かなり役立っているということですね?】
[はい。知識をガンガン入れ込めば、アイデアがバンバン溢れてきやすくなるんですよ]
(一冊の本を持って、窓際の一人用の読書スペースに移動し、座る)
【元々、読書好きなんですか?】
[読書は好きなんですけど、小説などの作品を読んでいると、創作意欲を掻き立てられてしまって、文章を書きたくなってしまうんですよね]
【それで、最近は小説を読んでいないと?】
[そうです。読みたくても、溢れ出したアイデアで、集中できなくなるんですよ]
【それは、仕方がないですね】
(立ち上がり、パソコンの方へと歩き出す)
【パソコンも使うんですね?】
[はい。パソコンの情報収集力は、半端ないですからね]
(鞄からペットボトルを取り出して、ガブガブ飲む)
【ペットボトルのラベルを、見ているんですか?】
[はい。ペットボトルのラベルも、いつも読み込んでいます]
【そうなんですか】
[文字があったら、何でもインプットしてしまいたくなるので]
【職業病みたいなヤツですかね?】
[まあ、そんな感じでしょう]
【そういう生活を続けていると、疲れませんか?】
[気になることがあったら、何でも調べないと気が済まなかったりして、正直、疲れますけど、進化しているという、実感の方が強いです]
【今は、何を調べているんですか?】
[さっき疑問に感じた、図書館はいつの時代に生まれたか?、ということについて調べています]
【そうですか】
[あと、この窓から見える、あの雲はなんという雲なのか?ということも調べる予定です]
【頑張ってください】
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◎ルール⑥ ☆疑問あれば全て調べる☆
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【執筆中、失礼します。少しお時間頂けますか?】
(ソファーから立ち上がり、伸びをする)
[はい、大丈夫ですよ。今、掌編の終わりの部分を書いていたところなので]
【完成したということですか?】
[まあ、そうですね]
(身体をブラブラとさせながら、ジャンプする)
【今、書いていたのは、どういうものなんですか?】
[恋愛系の短い作品です]
【これも、ほぼ即興ですよね?】
[まあ、そうですね]
【どういう展開になるか、いつも気になっているんですよ】
[ありがとうございます]
【最後の辺りが、スゴいといいますか、いい意味の裏切りのオチがいつもありますよね?】
[そうなんです。オチをつけたいとか、ではないんですよ]
【そうなんですか?】
[はい。オチをつけなくて、読者にその後の物語を想像させるやり方もやりたいですよ]
(扇風機に背を向けて、体育座りしながら喋り続ける)
[でも、オチがつけたくなってしまうんです]
【はあ】
[強引にでも、インパクトのあるオチを入れ込まないと、気が済まないんです]
【オチがない作品が不安ということですか?】
【自分が読む場合に、作品にはオチを求めてしまっていて、ハッキリとした最後を欲しているんでしょうね】
(扇風機の方を向いて喋り続ける)
[だから、何か物足りないと思う人を恐れているのかもしれません。刺激や変化を求めている人が怖いんだと思います]
【私は、くっきりとした物語の方が好きなタイプです】
[ありがとうございます]
【少し、扇風機に近くありませんか?】
[あ、ありがとうございます]
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◎ルール⑦ ☆オチは無理矢理付ける☆
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【くつろいでいるところ、すみません】
(しっかりとした椅子に座ってテレビに夢中)
[はい]
【テレビは、好きなんですか?】
[はい。大好きですよ]
【どのようなテレビが好きですか?】
[ジャンルですか?ジャンルは、本当に均等に見ますね]
(CM中、テレビの番組表を見る)
【テレビも、執筆に活きてきたりしますか?】
[はい。アイデアの根源と言いますか、アイデアの方向性と言いますか、それが決まるのは、ほとんどテレビの情報ですかね]
【特にこの番組が、参考になるとかあるんですか?】
[思いがけない情報があるなと、いつも思うのは、深夜ですかね。深夜のバラエティですかね]
【ゴールデンタイムにはない、情報が溢れていますからね】
[はい。深夜の時間帯は勉強になるので、いつも録画してます。普段見ないようなものも、録画なら飛ばして見られて、時間を有効活用できますからね]
【テレビは執筆に役立つということですね?】
(リモコンでテレビの音量を上げる)
[はい。ネットで調べたり、本を読んだりすることも大事ですけど、テレビは見ているだけで、自然と情報を吸収出来て、語彙力も知識も増えた気がするので、いいですよ]
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◎ルール⑧ ☆多くのTV番組を見る☆
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【あの。小説を読まれているんですね
】
(ソファーで寝転び、本を広げている)
[そうですね。小説は少しずつですけど、読みますね]
【誰かに影響されたとか、憧れている作家さんて、いらっしゃるんですか?】
[すみません。そういう人がいないんですよ]
(本を読みながら、立ち上がる)
【そうですよね。あなたと似たような文章の人は、あまりいませんからね】
[真似をしないというか、出来ないんです。誰かを真似るとか、誰かの教えを取り入れようとしても、うまく出来ないんですよ]
【そうなんですね。文章の芯が曲がってくれない、みたいなことですね?】
(本を読みながら、ぐるぐるとソファーのまわりを歩く)
[はい。文章の自我が強い、みたいなことです]
【それは、いいことですよ】
[あっ、ありがとうございます]
【アドバイスが、入ってこないタイプなんですね。私もですよ】
(ページをめくるペースが早くなる)
[そうなんですね。アドバイスを脳内に入れても、気が付けば自分色が出てしまうんですよね。アドバイスされたことに近づけよう近づけようとすると、集中できなくなるんですよ]
【はい、分かります】
[自由度が高くないと、書けない性格なんですね。最近は、小説もあまり読めなくなってきています。自分がブレる物語の情報を、入れたくないのも、あるかもしれませんね]
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◎ルール⑨ ☆有名作家の真似はなし☆
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【ショッピングですか?】
[そうです。でも、たぶんそんなに買いませんけどね]
【今日も気分転換ですか?】
[そうです。朝の執筆以外は、なるべく執筆のことは考えない方が楽なので]
【そうですよね】
[でも、考えようとしなくても、考えちゃうときは、考えちゃうんですけどね]
【はい】
[ここ、入ります]
(見かけた、100円ショップに入る)
【よく来るんですか?】
[はい、好きです。前に、100円ショップの掌編も、書いてしまいましたし]
【そうでしたよね。あれは、面白かったです】
[執筆の準備をすると、頭が痛くなるので、したくはないですけど、情報収集は勝手にやってしまいます]
【それで、ほぼ即興で書くと】
[はい。一度細部を作ることに手を出してしまうと、こだわりすぎてしまうので。プロット作成も、推敲も時間を決めてかなり短くします]
【そうしないと、時間がかかりすぎる、ということですか?】
[そういうことになります]
(お菓子コーナーに、足を踏み入れる)
【今まで色々試した結果、手を付けすぎない、という結論に行き着いたと】
[まあ、そんな感じです。推敲だけで2回年をまたぐということが、起きるかもしれませんから]
【作品のクオリティーも下がってないですし、それが先生に合っていますよね】
[どうも]
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◎ルール⑩ ☆推敲は過度にやらない☆
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【今は何をしているんですか?】
[あっ、これは読者のメッセージなどを読んでいるんです]
(スマホをスクロールさせる)
【キチンと読んでるんですね】
[もちろんです。返すことは出来ていませんけど]
(ソファでずっとスマホを弄くる)
【どちらかというと、あなたには、メッセージを返すイメージをしている人が多いかと】
[僕も返したいんですけど、悩みすぎて、他のものが手につかなくなるんです]
【心配性ですもんね】
(立ち上がり、首を回す)
[はい。返信の文面を2日考えても一行しか出てこないときがあって、そこからメッセージの返信はやめました]
【でも、読者からの意見とかは、参考にすることはありますよね?】
[読者に合わせたら、起伏のない作品になってしまうんですよ。だから、あまり参考にはしていません]
【はい】
(再びソファに寝転びスマホを弄くる)
[自分を押さえつけないようにしています。趣味の延長みたいに考えないと、書けませんから]
【なるほど】
[大勢の読者より、ひとりのマニアックな人に向けて書く。みたいな感じですかね]
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◎ルール⑪ ☆読者の気持ち無視する☆
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【最後に、言いたいことはありますか?】
[はい。僕は、ずっと、偶然と必然だけを信じてきました。
自分でゼロから生み出したものを、全部、自分のせいにすることが、嫌だったからです。
努力して生み出した考えが、評価されないことが耐えられないんです。
偶然と必然的に生まれたものならば、全部を自分の思考のせいにしなくて済むので、気が楽なんです。
ダジャレは、元の言葉に合わせにいくもの。
鼻うたは、自然と内側から、漏れ出していくものです。
だから、そういうものが好きですね]
【今日は、どうもありがとうございました】
[はい。ありがとうございました]