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全くもって、スッキリ、スカッとしない話

作者: 白起

 高校生の頃からの友人で、東京在住のT君とは広島に彼が出張で来た時は良く一緒に飲みに行ったものだ。

 T君は実はゲス先の住処のモデルとしたくらいには羽振りが良い。

 仲良しカルテットのT君とN君とT2君とオイラは偶に会うと、蟹食って、キャバクラ行って、バー行って、最後に石鹸の国(オイラは除く)に行くと言う馬鹿丸出しの楽しい時間を過ごしていた。

 T君が金の心配は要らないからと石鹸の国に誘われた時、

「金の問題じゃねーし! 浮気じゃねーか!」

 と、全力で断っており、それでも誘って来るので、オイラは妻に電話して許可が出たら行くと答えた。

 そして、マジでみんなの前で妻に電話したら、却下された。

 まあ、当然である。

 つーか、N君だって妻帯者だかんな!

 そんなT君から昼休み中に電話が掛かって来て、要件は洒落にならない金額の借金の申込みだった。

「頼むから、50万貸してくれないか?」

「金は貸せない。友情を壊す1番の原因が金銭トラブルだ」

 と、オイラは1度はT君の願いを突っぱねた。

 すると、T君は経緯を話し始めた。

 T君の不倫が原因で元妻に支払う慰謝料と子ども2人の養育費を賄う為、消費者金融から借金をしてしまったらしい。

 不倫相手は人妻だったらしく、相手の旦那からも多額の慰謝料を請求されたらしい。

 事情は理解出来たが、オイラは金の管理には一切関与していない。

 全ては妻に任せている。

「15時までに5万で良いから貸してくれ! 振り込んで貰えないと、俺マジでヤバいんだ!」

 と、T君の切迫した話し方を受けたオイラは先ず妻に電話して事情を説明した。

 妻からは電話で話す内容じゃないと帰って来いと言った。

 帰宅での車の運転中にN君とT2君の2人に電話した。

 すると、N君は既にT君に100万をわざわざ新幹線で東京まで行って貸したらしい。

 緊急事態宣言が出ている最中の広島と東京を往復する暴挙を既に実行していたらしい。

 妻帯者のN君に金の出所を聞くと、車を買い替える為に貯めていたお金をT君に貸したそうだ。

 T2君も既に10万円貸していた。但し、本人曰く、あげるつもりで貸したらしい。

 オイラが2人から言われたのが「貸すな」だった。

 T君は4人の中で群を抜いて金持ちだった。

 どうしてそうなったかは今日集まって話し合おうとT2君が提案した。

 帰宅すると、オイラは妻に事情を説明するも、大混乱の真っ最中で、支離滅裂な事を話しまくっていた。

 結論から言うと、妻が出せるお金は5万円までで、あげなさいと言われた。

 でも、15時までに間に合わなかったので、既に意味をなさなかった。

 妻から小遣いを前借りし、3人で集まる事にしたのだが、蟹食っている最中にT2君がT君が会社を懲戒免職された事実をオイラに教えてくれた。

 何と内容証明が会社に届き、会社にバレたT君と浮気相手は2人とも懲戒免職されたらしい。

 慰謝料をせしめた後に会社に内容証明を送りつけるなんて、良くある「ざまぁ」展開なのかもしれないが、現実に親友とも呼べる存在にそんな事をされたオイラ達が出した結論は「T君の自業自得」だった。

 だって、T君はそりゃあ昔から女癖が悪かったし、金遣いは荒かった。

 まあ、しゃーない。

 全然スッキリとか、スカッとする話と違うので、読者の皆様にはT君の浮気相手の旦那さんの視点でこの話を読んで欲しい。

 洒落になってねーよ!

 オイラ達、今年で不惑だぞ! 40にして惑わずだ! めちゃくちゃ誘惑に負けてんじゃねーかよ!

 もうやだ! 借金して返済頑張る奴が大好きだとかほざいてたら、親友が借金地獄に落ちちまっただよ!

 笑えねー!

 今夜は持ってる金は全部N君に渡した。

 あまりにも笑えない状況にバーでN君はドンペリをボトルで入れたw

 生まれて初めて飲んだドンペリは……コーラの方が美味かった。

 オイラの感想なんてそんなもん!

 妻には終電前には帰る約束をしていたが、破ってしまった。

 ごめんなさい。

 クレジットで会計を済ませていた酔いどれのN君は請求月に酔いを醒ます事だろう。

 会計はホンマにヤバかった!

 ぼったくりバーじゃなくて、正規の料金でぼったくりバーに匹敵する値段だった。

 3人で話し合ったと言うか、飲み合った結果、T君とは縁を切る事に落ち着いた。

 理由はオイラ達には助けてあげられないから。

 N君だけは貸したお金がお金なので、連絡を取るといったが、

「まあ、アイツと連絡取れるのも長くはないよ。電話止められるしね。懲戒免職で履歴書にバツが付いたし、このコロナ禍だし、東京なんて日雇いなんて争奪戦だろうしな」

 と、呂律が回らないなりにそんな意味の言葉を吐き捨てたN君。

 オイラ達は分かっている、T君に残された道が自己破産しかない事を。

 でも、本当は助けてやりたくて堪らない。

 だから、N君もT2君も浴びる程酒を飲んだ。

 深夜の2時まで飲んでから、裏口(バーはね、深夜の12時を過ぎたら裏口から出るのがエチケットなんだよ)から出たオイラ達が今後3人で集まって騒ぐ事は無いだろう。

 それはオイラが口にした。

「3人で飲むのはやめような。どうしてもT君を思い出すから」

 と、オイラは泣きながら言った。

 そして、N君もT2君も一緒に泣いた。

 タクシー代と渡された1万円をオイラは受け取らずに歩いて帰る事にした。

 家まで15km以上あったが、とにかく歩きたかった。

 川を通ると川魚が跳ねる音がした。

 孫に会えなくなった両親から勘当されたT君は借金塗れの人生を歩んで行く。

 でも、マジで本人の自業自得なので、同情する気持ちは薄い。

 金の切れ目が縁の切れ目とは言うが、縁を切ったのがオイラ達なのか、T君なのかを判断すると、やっぱりオイラ達になる。

 帰り道に泣いた。

 シクシクと泣いた。

 誰の為の涙なのか、何故涙が出て来るのかオイラには分からなかった。

 オイラがしっかりと泣く事で、浮気相手の旦那さんの溜飲が少しでも下がったらストレス発散、スッキリ、スカッとのオチになれるのに。

 そう言えば、酔いどれのT2君はこう言っていたな。

「あ〜あ〜相手の身元分かるんだよなあ〜俺、今度長期休暇取って、相手の男車で轢くわ。殺意証明難しいし、Tの為なら刑務所くらい入ってやるよ」

 その時のT2君の顔は酔った勢いでしか言ってないだろう事は想像に難くない。

 T2君は車は移動に使うか殺人に使うかの2用途しかないと普段から語るちょぴりサイコなおじさんだが、まあ心配はしてないから安心して欲しい。

 但し、本当に実行に移してもオイラは全く驚かないし、浮気相手の旦那さんには重度の後遺症が残るくらいの事故に会えば良いなぁとは思ったりもする。

人を呪わば穴2つ。

妻の浮気で他人から自分の幸せを奪われたら、相手を徹底的に追い詰めるのも、見てる分には良い。

でも、その行動を逆恨みとは理解しつつ、浮気相手の旦那を嵌めてやろうと考える人間だって居ても不思議ではない。

他人の親友を破滅させたならば、そいつがとんでもない行動に出る可能性は考慮して、身元は必死に隠して生きていく事をお勧めしたい。

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