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キールとの話も終わり、私はギルバート……様の居る場所に向かっている。 いざ話してボロが出ないように、心の中でも様をつけて呼ばなきゃ。
付いてきているのは、案内役のキールとメイドさんが二人。 それと鎧姿の兵士さんだ。 キールと一緒に着いてきていて、扉の外でずっと待機していたらしい。 ……私とキールの話、聞かれてないと良いけど。
「ほら、ここだよ」
「…………」
一際大きな扉の前に来た。 周りには私を見る兵士さんが沢山いる。 急に緊張してきた私は、思わず手に力が入ってしまう。
「大丈夫だって。 適当にはいはい言ってれば良いんだよ」
手をひらひらとしながら言うキール。 緊張を和らげようとしているんだろうけど、私は彼を見ないようにした。 だって、周りの兵士さん達の非難の目が彼に集中しているんだもの。
私が一歩前に出ると、扉脇に居た兵士さんが扉を開く。 重厚な音を立てて開いた扉の先には……玉座に座るギルバート、様。
彼のすぐ近くに控えるのは三人。 長身の綺麗な女の人と服の上からでもわかるガタイの良さをした男の人。 それに、髭をたくさん蓄えたお爺さんだ。
行くまでの道の左右にも沢山の人が並んでいる。 その人達の視線に耐えながら、私は前へと歩いていった。
気づけば、キールがいつの間にか居ない。 彼を心の中で恨みながら、玉座の前に到着する。
来る時にメイドさん達に教えて貰った通り、膝をついて頭を垂れる。 それで……良いと言われるまで待つ……であってるはず。
「面を上げよ」
その言葉を聞いてから頭を上げる。 言ったのはお爺さんだ、ギルバート様はじっと私を見たまま。
「セラと申します。 この度は、私を受け入れて頂き、感謝しています」
「うむ」
辿々しい私の口上に反応したのは、ガタイの良い男の人。 彼は一歩前に出てくる。 ……その時、隣の綺麗な女の人と目があった。 子供を見るような笑みだ。
「私は、軍務総括官のエリックだ。 さて、貴様は自分が何なのか。 説明は受けているな?」
「……え……と、はい」
ガタイの良い男の人の名前は、エリックさんと言うらしい。 説明……と言うと、キールが言っていたやつ……? あれは、私から聞いた事だけど。
「その反応を見ると、キールはサボったみたいね?」
若干困惑していたのを悟ったのか、綺麗な女の人が私の後ろ側を見ながら言った。 つられてみてみると、入ってきた扉から閉まるのが見える。
「……はぁ。 まぁ、良いわ。 お仕置きは後にしましょう。 私はラスティ、ラスティ·ランクルよ。 よろしくね?」
「……宜しくお願いします」
ラスティさん。 笑ってるけれど、それまでの言動から素直に受け取れない。 彼女は怒らせないほうが良さそう。
「これ、彼女が困っているだろう」
目の前の二人を諌めながら出てきたお爺さん。 恐らく、この人も偉い人なんだろう。 エリックさんとラスティさんが、頭を下げて下がっているから。
「儂はリード·ルブルム。 この国で宰相を務めているものじゃよ」
にこにこと、今度こそ温和な笑みを浮かべるお爺さんは、リードさんと言うらしい。 握手を求められ、反射的に握って返す。
「さて、セラ殿。 まず……そなたが今、どんな状況に置かれているかを説明するとしようかの」
ようやく、ちゃんとした説明が聞ける。 そう考えていたのが顔に出たのか、リードさんの表情が優しくなった。
「転生者について、どこまで聞いておるかな?」
「え……と、他の世界で死んだ魂が、この世界に呼ばれたもので……特別な能力を持っている存在だと……」
キールに言われた事を、ほとんどそのままで答えた。 どうやら合っていたみたいで、リードさんは満足そうに頷く。 ……これで間違っていたら、後でキールを〆なきゃいけないとこだった。
「そうじゃ。 じゃが、我々は転生者について、全くと言っていい程に知らないことが多い。 転生者を呼ぶ古代の術の仕組みも、なぜ能力を持っているのかも」
知らない……。 確かに、転生者を呼ぶ術の仕組みがわかっているのなら、わざわざあんな競売のような場を用意しなくても、自分達のほしい能力を持った転生者を呼べばいいだけだ。
それに、私が他の世界で生きていたという確証も無い。 断片的な記憶はあるけれど、この世界のものかもしれないし。
「ただ、分かっていることが一つ。 我らは代々、転生者に生きる術を与え……その見返りに能力による恩恵を受けて来た事じゃ」
能力……。 私にも能力を使った何かを求められているのだろうか。 もし、私が何も能力を持っていなかったら? この国を追い出される? 何処かに売り渡される? 不安なことばかりが脳裏によぎってしまう。




