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12:もふもふと実験してみる

 翌日、店で私の作る酒の効能を試す会が開かれた。


「今日も体の調子がいいわね」

「僕も。昨日とは違う感じだけど」

「俺もだ。朝から街をひとっ走りしてきたが、全く疲れない」

 

 参加者は、メイダン、レーナ、アロー、私の四人。

 けれど、その前に一騒動あった。

 昨日のお客、鹿獣人のディアさんと兎獣人のバニさんが閉店中の店へ駆け込んできたのだ。

 夜勤明けの彼らはくたびれているが、そんなことはお構いなしにまくし立てた。


「聞いてくれよ! 昨日、猛毒を持った大サソリが出たんだよ! めったに上の階層に現れない大物さ!」

「一巻の終わりだと思ったよ。でもね、倒せちゃった」

「そうそう、なんだか相手の攻撃がぬるくてさ、当たってもダメージを大して受けなかったんだよな。毒も効かなかった」

「大サソリに吹き飛ばされて、僕は岩壁に激突しちゃったんだけど……なぜか怪我が回復しちゃったんだよねー」


 口々に喋る二人に、食堂の面々は顔を見合わせた。

 ディアさんに渡した酒は、スリー・ミラーズ。ブランデーとラムを使っている。

 バニさんに出した酒は、アメール・ピコン・ハイボール。薬草のリキュールが入っている。

 少し考えた様子のアローが言った。

 

「これから、ドリンクの試飲会をするんだけど。あんたたちも飲んでいく?」

「いいのか!? 仕事後の酒は嬉しいぜ! 可愛い新人さんもいるしな!」

「その代わり、何か変わったことがあれば教えてくれ」

 

 二人は、大サソリと戦ったときの異変を、酒と結びつけていないようだった。

 アローは彼らを実験台にする気らしい。

 店内の席に着いたディアさんとバニさんは、メイダンを見つけた。


「ああっ! 凄腕のメイダンじゃないか!! なんでこんなところに!? あんたの噂は聞いているぜ。新人のくせに、この街で一番深い階層まで潜った奴だろ?」

「僕も知ってる! 本人に会えるなんて思わなかった!」

 

 メイダンは、一種のヒーロー扱いをされている。

 さすが公爵令嬢の護衛、かなりの腕を持っているのだろう。

 

「……ここは俺の滞在先だ」

 

 二人の勢いに気圧されたのか、メイダンは少し距離を置いて私の近くに座った。

 

「思いつくものを、片っ端から作れ」


 無駄に偉そうである。しかも、私に対してだけ無茶ぶりすぎるので断った。

 悪女に発言権はないかもしれない。けれど、言うべきことは言わせてもらう!

 

「それじゃあ、お酒の効果がわからないよ。今まで作ったもので検証すべきだと思うけど?」

「…………」

 

 メイダンが黙ったので、少し溜飲が下がった。

 いつまでも言われっぱなしじゃないのだ。

 と言うわけで、順番にお酒を作り、皆の前へ並べていった。

 

 スリー・ミラーズ

 アメール・ピコン・ハイボール

 スクリュードライバー

 ジン・リッキー

 ジントニック

 ジン・バック

 ジン・フィズ

 オレンジ・フィズ

 ビッグアップル

 ライムソーダ

 レモネード

 

 その結果、次のことがわかった。

 

 ジンを使ったカクテルを飲んだ者は、疲れが飛ぶのだ。

 手前のジン・リッキーを口にしたメイダン曰く、持久力増加や体力回復の効果があるようだ。

 そして、ウォッカを用いたカクテルは、力が強くなる。

 ビッグアップルを飲んだアローが、軽々と荷物を持っていたのは、酒の効果が発揮されたから。

 アメール・ピコン・ハイボールを試したレーナは、包丁での切り傷が治ったと言っている。

 レモネードを選んだバニさんは、いつもより体が軽く、早く動けると答えた。

 酒の種類によって、違いが見られる。私は皆の言葉から仮説を立てた。

 

 ジン・持久力と体力回復

 ウォッカ・攻撃力増加

 リキュール(薬草系)・怪我の回復

 ノンアルコール・素早さ増加

 

 使うお酒、アルコールの有無によって、一時的に身体能力を高める効果が得られるのではないだろうか。組み合わせ次第で、強力な効果を発揮しそうだ。

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