夢?天国?それともやっぱ現実!?
「…」
サー…
「…」
サー…カサ、カサ…
「…ん」
風に吹かれ葉っぱ同士が擦れるような音を聞き、俺はふと目を覚ます。
「ここは…どこだ…?」
辺り一面には全く見覚えの無い草原、その光景に俺は困惑していた。
「確か俺はそろそろ辞表を出すと決めていた会社でしかめっ面をしながら働いていたはずだが…でも途中で意識が朦朧として倒れて―あ」
そうか。
見覚えが無いのも当たり前だ、倒れて目を覚ましたということはここは―
「なるほど、夢か天国にでも来たか」
どう考えてもその2つのいずれかしか考えられない。
それにこうなった主原因はどう考えても―
「働きづめによるもの、だろうなぁ。うん、よし寝よう」
そう結論づき俺は再び草原に寝転がる。
「…」
サー…
「…」
サー…ガサ、ガサ。
「…」
ぴょん、ガサ、ぴょん、ガサ。
「…ん?」
このまま微睡むのを待っていると何やら変な音と共に近づいてくる何かが来る気配を感じた。
「一体何だ―」
そう呟きながら目を開け起き上がろうとした瞬間。
「…え?」
ぶるん、ぶるん、ぶるるるるん!
今にも飛び掛かってきそうな勢いでこちらへ何かが向かってこようとしていた!
「うおわっ!?」
前に大きく前転しつつ俺はそれを避ける。
何とかそいつとぶつかる前に回避できたものの、何かは一旦止まると再び俺にぶつかろうと勢い良く跳ねながら向かってきた!
「なんなんだ!?なんなんだよ、こいつはー!?」
とにかくここは逃げるにしかず、当たらなければどうということはない!
「ここが夢なら俺は無限に走って逃げ切れーる!」
そんな根拠で勝ち確めいたドヤ顔をしつつ俺は全速力で走り、この謎の生命体から逃げ切れてざまーみろガハハと笑いここは事なきを得るだろうと思っていたのだが―
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…!」
普通に感じる息切れ、そして大して距離が開かない奴との差。
どう足掻いてもこれは夢ではないという結論にたどり着く結果となっただけであった。
(嘘だろ…!?息は普通に切れるし足もそんな早くねえし、ここまさか現実なのか!?)
でもそれだと会社からここまで意識がない中わざわざ誰が運んできたのか?何のために?といった疑問で頭を埋め尽くされてしまうので俺はとりあえず考えることを止めた。
「それに…今は、全速力で…逃げ、ないと…!」
相変わらずのスピードで迫ってくる謎の生命体に恐怖を感じつつも、追い付かれるわけには行くまいと俺も今持てる力を全て出し尽くす覚悟で逃げるのを決め、走った。