現実の終わり
俺は両親のように一般的な家庭をその内築けるだろうと思っていた。
しかし現実は無常で非情で残酷だ。
五体満足で産まれ育った俺は両親には当然感謝の言葉しかないが、男性の平均よりも10cm下回った身長に普通とは言えないちょい太りな体重。
更には祖父譲りの濃すぎる体毛により恋愛面は悉く失敗、現在何連敗したかもわからない。
そんな俺でもソシャゲやSNSを介せば色んな人達と仲良くなれ、少なからず充実したネットライフを送れると思っていた時期があった。
だが流行りが過ぎるのは早く、仮に話に追い付けたとしても周りは既に別の話をしており、仲良くなれたと思っていた人達とは既に疎遠とされ、同じソシャゲをやろうとすれば何故かもうそこにはそういった人達はいなくなる、何とも疎外感を感じるように俺はなっていった。
いつしか俺はそんな人達のやり取りを見るだけの―いわゆるROM専になり、話題に混ざることも関連画像を貼ることもやめるようなスタイルを貫くようになった。
でもこれでよかった、どうせ俺のことなんか誰も気にかけはしないし、俺が相談相手になってたやつも今では他の人にテノヒラクルーして話すらしなくもなったし、やるだけ無駄だというのが身をもって分かったから。
そんな生活を続けて数十年、俺はいつしか歳を取り両親が結婚した時よりもいくばくか上の歳になっていて、両親には悪いが孫の顔を見せることは当分叶いそうにないような生活をだらだらと送り続けるようになっていた。
だがある日、俺にとって急展開を迎えるような事が起こった。
いつものように休みも賃金も何もかも足りない未だ摘発されないブラック企業で働いている途中、俺は倒れた。
病院に搬送されたものの俺の身体は決して起き上がることはなく、親不孝者という烙印を押されたと同時に。
―現実の俺はその世界から生を失った。