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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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98/100

エピローグⅡ

 七月五日、その日はあいにくの小雨だった。晴ればかりの天気では水不足も懸念されるし、空気が乾燥することだってあるだろう。

たまに降る雨も悪くないだろう――と、思う人物もいるかもしれない。しかし、ここは草加市のARゲームエリア、そういう雰囲気になる人物は少ないだろうか。

『雨か――あまり見なかったから、降らないと思っていた』

 雨が降り、傘をさす光景が見える中でアルビオンは何かを考えていた。

雨が降らない時にばかり行動をしていたのも理由かもしれないが、彼は――。

(この雨がイースポーツ化に対する嘆きの雨なのかは、誰も知らないか)

 アルビオンは相変わらずのARアーマーだった事もあり、その表情を読み取ることは出来ないだろう。

しかし、声のトーンは明らかに何かの終わりを嘆いているようでもある。彼の目の前にはセンターモニターがあり、そこには――。

『全ては、動き出し始めたという事か――』

 モニターのニュースには、ARヒーローゲームの開発を開始したという速報が流れていた。

アルビオンにとってはベストヒットと言えなくもないステージだが、それでも主追う所があってあまり喜べないでいる。



 七月六日午後一時、草加市のゲーセン入口にいたのは長門ながとハルだった。

彼は既にアルストロメリアを抜け、自分で新たなステージへ進もうとARリズムゲームをプレイしようとしている。

「久しぶりに見る顔と思ったら――」

 このゲーセンを本拠地としている女性リズムゲーマーの一人が、長門に声をかけた。

この数カ月程はヒーローブレイカーがメインでリズムゲームの方は未プレイの機種もあったかもしれない。

それを踏まえてのリハビリと言えるだろうか? ヒーローブレイカーをプレイして未収穫だった訳ではないのだが、そこで得られた物はこれからの道にも重要だった。

「そう言えば、君はここのゲーセンがホームだったかな」

 彼女から声をかける事は少ない為、意外な顔はしつつも長門は反応する。

ゲームはシングルプレイ前提の作品でも実際にプレイしているのは一人だろう。しかし、ライブ中継や動画経由では何十人、何百人が見ているのかもしれない。

だからこそ、ゲームはプレイさせられているという感覚でプレイしたら負け――それを長門はヒーローブレイカーで学んだ。

(これからのステージは、彼女たちとは別の道を歩むかもしれないけど――きっと、また道はつながる)

 長門は、色々な事を思いつつも、今はリズムゲームの方に集中する事にする。

ヒーローブレイカーは、まだ復活をしていないのだから。



 同時刻、長門とは違うゲーセンで他のARゲームをプレイしていたのは大和やまと三笠みかさだった。

彼女たちは既に他のARゲームでも適応が早く、あっさりと上位勢力に入りこむほどの実力を見せる。

ヒーローブレイカーは草加市ローカルとなっていたが、それでも上位には大和と三笠がトップランカーに名前を連ねていた。

「やっぱり、相変わらず強い存在だよ。あの二人は」

 今回は魔法少女のコスプレで秋葉原の写真会に参加していたのは、島風彩音しまかぜ・あやねである。

現在はコスプレイヤーを専業としているが、いざとなったらゲームに復帰できるように準備は出来ていた。

彼女はセンターモニターに表示される上位プレイヤーのランキングを見て、貫録を見せている二人に対して敬意を表す。

「二足の草鞋で勝てるほど、彼女達は甘くないという事か」

 練習量の差等はあるかもしれないが、大和と三笠の実力は折り紙つきと言えるだろう。

それを見せつけられては、さすがの島風もお手上げと言うべきなのか。もしくは、隠れた闘志を見せているのか。

(今度は、あなた達に勝てるように努力する――)

 そして、島風は撮影スタジオへと戻る。この姿は秋葉原の街中でも目立つのは間違いないだろう。

それでも島風が恥ずかしいと思う様な事はなかった。ある意味でもコスプレイヤー魂と言うべきか?

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