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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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エピローグ

 西暦二〇二〇年七月上旬、日本ではスポーツの国際大会が開催されようとしているのだが、草加市にとってはそちらでは観光客の利益を得られないという考えが多かった。

それを踏まえた緊急会議が行われ、内容は当然だがイースポーツ関係だったのである。

「海外でも様々なゲームが流行し、イースポーツ分野も様々動きがある――」

「それを踏まえての、アレだったのではないのか? 実際はどうだ?」

「ARパルクールではコラボのライセンス関係で難航し、更には開発の遅れ――これでは間に合わないぞ」

「しかし、それを決めたのは草加市なのでは? 噂では芸能事務所の裏金工作があったとか?」

 やはりというか、会議の方は激しい討論会の様子になっている。このままでは、様々な個所で炎上をしかねないだろう。

その状況下で姿を見せた人物、それは――南雲ヒュベリオンだった。

「この動画を見てください。これを見れば、考えも変わるはずでしょう!」

 南雲が姿を見せた理由、それはサービス終了したヒーローブレイカーに関する復活希望を望む声だった。

彼は、その声を届けようと草加市へ直訴する事にしたのである。失敗を恐れては、今回の様なアイディアは浮かばなかっただろう。

「その動画自体も作り物――と言う訳ではないようだな」

 ある議員の一人は、動画の内容を見て訴えている人物の熱意をくみ取る。

「しかし、一度終了したゲームをサービス再開させるのは――」

「そうだ。筺体は既に草加市内以外の物は別ゲームに変更されている」

「運営が解体されているに近いゲームを復活させるのは、費用の無駄なのでは?」

 周囲からは散々とも言えるような意見が飛ぶ。

言いたい事は分かるかもしれないが、あくまでも議員の意見は草加市としての都合だろう。

「それを実行して、あの結果を生み出した人たちがよく言う――」

 先ほどの熱意をくみ取った議員は、他の議員が述べている反対意見には意思が感じ取れないとも指摘した。

他者にすがるような意見では今後のコンテンツ運営も失敗するだろう、そう彼は思ったのだろうか。

「そこまで言うならば、君自身にも今回の一件がどういう事だったのかは――理解できているのかね?」

 別の議員からは、念押しをするかの様な質問が飛ぶ。

それ位で折れるようならば、ここまで押しかけた意味はない。全てはヒーローブレイカーと言うゲームの為ではなく、今後のコンテンツ市場の為だ。



 七夕の日、様々な願い事を書いた短冊が見られる中で、ある願い事が話題になっていた。

【ヒーローブレイカーが復活しますように】

 これを書いた人物が誰なのかは定かではない。記名式短冊ではないので、名前がないのである。

しかし、実際に復活するという事が公式ホームページで告知され、それがきっかけで話題になったのだろう。

【本当に復活するとは】

【復活と言っても、他の地域ではなく草加市限定+αと聞いているが】

【しかし、これをきっかけに全国再始動もあり得るのでは?】

 様々な反響があるのは事実であり、この時を待ち望んでいたプレイヤーもいる。

念願は、思わぬ形でかなったと言えるのかもしれない。

「中途半端に止められ、メーカー側の思惑で改変された物語は、思わぬ形で復活するのか」

 センターモニターで再始動のニュースを見ていたのは、フード付きコートを着た人物である。

この時期だと暑いと思われるのだが、薄着仕様なので問題はないようだ。それに、フードを深く被って正体を隠すので、おそらくは彼女だろう。

「これが、もう一つの始まりと信じたい」

 フードを外して、素顔を見せたのはセンチュリオンではなく――。

「ヒーローブレイカーは、再び蘇る! 今度こそ、SNS炎上しないような新たな形で」

 その人物は何と照月てるつきアスカだった。

彼女の眼は蘇ったと言ってもいい。新たなゲームを探し求めるような表情は、まるでゲーマーのソレと同じようでもある。

全ては、ここから仕切り直されるのだから。ヒーローブレイカーと言うゲームも、彼女にとってのイースポーツに対する雷撃となる一歩も――。


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