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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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24-2

 照月てるつきアスカとセンチュリオンの対決とも言えるマッチング、それは周囲のギャラリーも衝撃を受ける物だった。

「マッチングした他プレイヤーは空気では?」

「空気と言うにはレベル差がかけ離れている訳ではない。もしかすると、ブラックホースかも」

「プレイヤー同士が対戦するような物ではない。あくまでも協力プレイが求められる」

「イースポーツ版でも同じような協力プレイになるのかな?」

「イースポーツ版は三人チーム同士の対戦になるという話は聞いている」

 A館のセンターモニターでライブ映像を見ていたのは、興味本位で足を止めていたプレイヤーが多い。

その場を占拠して観戦するような人物はいないが、これに関しては通路で足を止めると他のお客に迷惑がかかるのだろう。

(今から戻っても――間に合うかな?)

 周囲の状況を見つつ、スマホの時計をチェックしていたのは天津風唯あまつかぜ・ゆいだった。

彼女は直接、マッチングを見た方が良いのでは――と考えている。

「まさか、この場で島風に会うとは想定外と言うべきか」

 ビスマルクは、この場に姿を見せた天津風と島風彩音しまかぜ・あやねには驚いていた。

彼女たちと遭遇する事はない、そう思っていた時期もあったからである。その理由は、当然だがイースポーツ大会が関係しているだろう。

「まさか、ここにビスマルクがいるってことは、イースポーツ大会で?」

 島風が核心に迫るような質問をビスマルクに投げる。しかし、それを聞いてビスマルクはセンターモニターの方を振り向く。

すると、丁度マッチングバトルが始まる所だった。今から向こうへ行っても間に合わない可能性は高いだろう。

「仕方がない。他のメンバーには後で連絡をするか」

 天津風はスマホをスリープモードに切り替え、待機席が存在する別の場所で観戦する事にした。

さすがに、道の真ん中で見るのは通行人にも迷惑がられてしまうだろう。



 バトルが始まって動きがあったのは、三〇秒を過ぎたあたりである。

やはりというか、動きを見せたのは照月だった。彼女がアンノウンを次々と撃破していき、スコアを上げていく。

その一方で、センチュリオンは自分に迫る敵だけを撃破しているのでスコアの方はあまり高くない。

下手をすれば、他のマッチングプレイヤーと比べても最下位だったのである。これには周囲のギャラリーからも動揺が広まっていた。

しかし、アルストロメリアのメンバーはセンチュリオンが何かを隠している可能性を考えている。

(チートスキルの類を使っているとも思えないが、このスロースターターは一体?)

 島風はセンチュリオンのプレイを見て、技術的な部分は劣っていないのに出遅れている事に違和感を持つ。

どう考えても、彼女が手加減をして得をする人物なのか? SNS上で聞いたアルビオンの一件とは事情も異なるだろう。

(あの状況だと、彼女は手加減をしている訳ではなく――)

 天津風の方はセンチュリオンが使いなれていない何かを抱えている可能性を考えていた。

ヒュベリオンのあの事件以降、一部ガジェット等で調整が入っている。もしかすると、今まで使っていたガジェットで弱体化した可能性もあり得るだろう。

一体、センチュリオンに何が起こったのか?



 このバトルを別の場所で見ていたのは、ヒュベリオンである。その場所とは、竹ノ塚にある漫画喫茶だった。

(センチュリオン、まさかな)

 今の動きを見て、ガジェットの弱体化が影響しているとは考えにくい。

他のプレイヤーもガジェット弱体化は共通しているハンデなのに、センチュリオンだけクリティカルするのもおかしいからである。

(チートツールは、今回のセキュリティ強化で更に使えなくなっている。まさか、それを知らない訳では――)

 彼女自身ではなく、意図的にツールを仕込まれている路線も考えるのだが、そうだとしても利益があるプレイヤーがいるのか?

調べようとも考えたが、今のヒュベリオンは権限が凍結されているので何もできないのが現状だろう。


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