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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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21-3

 アルビオン及びアルストロメリアのメンバーは、西洋風の街並みに変化したステージでのプレイを観戦する。

プレイヤーの方は、相手が上位陣だが実力はアルストロメリアの方が上だろう。味方プレイヤー側もレベルはたかが知れていた。

あまり参考になるような動きや行動パターンではないが、レイドボスは初見なので敵のパターンを見るという点ではアリなのだろう。

「まさか、ファンタジー作品とのコラボがあったなんて」

 木曾きそアスナも情報収集抜けがあった事には悔しがっていた。

これがなければ、他にも空席がありそうなゲーセンはあったというのに。思わぬ誤算だろう。

『しかし、何時も都市ばかりと言うのも飽きると思うプレイヤーがいるのも事実だろう。違うステージが出てくる機会があれば、新規ユーザーも現れる』

 アルビオンの言う事には一理ある。イースポーツ大会を前に何かしらのアクションがあればいいのだが――。

他のメンバーは観戦をしているだけで、特にアルビオンへ話しかけようという空気ではなかった。



 その一方で、アサシン・イカヅチはメンバーを調整する為に天津風唯あまつかぜ・ゆいと連絡を取る。

どうやら、彼女は秋葉原のゲーセンへ来ているようだが、やはりというか混雑をしているようだ。

彼女は入り口付近で電話に応じているようだが、それでも客の出入りでアクションゲーム辺りの爆音が流れてくるのが分かった。

「今、何処にいる?」

『秋葉原のゲーセンよ。VR版だと混雑は確定しているから、どうしようか悩んでいる所よ』

「そこから、数分以内で行けるゲーセンは?」

『あれば苦労しないわ。一六台置かれている所とかは混雑していて、それどころじゃないし』

「ファンタジーゲームコラボが理由で混雑しているようだ」

『通りで。新規プレイヤーも増えている気配だったのは、その為だったのね。所で、あと数分と言っていたのは?』

「チームメンバーに選ぼうと思ったからだ。行けるか?」

『ここのゲーセンでも空席が出始めたから、可能であればVRでログインするけど』

「出来ればARで頼みたいが」

『無茶言わないで。マッチングのシステムは分かってるでしょ?』

「メンバーは、どう調整する?」

『自分を確定とすると、後は照月と島風辺りで』

「島風は無理だ。この場にはいないし、それに――」

『じゃあ、メンバーは――』

 最終的にメンバーも天津風と相談した結果、天津風は確定として、照月てるつきアスカと――。

「木曾、三人目はお前だ。あそこまで言った以上、やれるという事だな」

 三人目は、何と木曾になったのである。まさかの指名に驚きを隠せないが、選ばれた以上はやる気らしい。

「指名された以上は、やるしかないようね」

 木曾の方も覚悟を決めて、ARガジェットを起動してアーマーのカスタマイズを始めた。

他の二名は、既にゲーセンへ入店した天津風と、観戦したまま言葉も出ない状態になっている照月である。



 時間近くになり、何とかVR側の筺体に空席が出来たので天津風は筺体備え付けの椅子にすわり、ログインの準備をしていた。

隣は空席で誰もいないはずなのだが、途中から金髪で巨乳の女性プレイヤーがログインをしてくる。

その人物に関して、天津風は何も興味を示すことなく自分のアーマーカスタマイズを行う。今回はイカヅチに指示されていたESPで挑むようだ。

(ARの方をチェックしておいてよかったかも。店舗ローカルマッチング限定と気付かなかったら、危なかったというべきね)

 ARの筺体もある店舗だったが、ローカルマッチングになっている関係で他店舗とは繋いでいないらしい。

その原因は様々あるだろうが、調整中と言う事でローカルマッチングオンリーのインフォメーションもセンターモニターに表示されていた。

データのアップデートはされているし、オフライン運営と言う訳ではないのだが――事前に調べて正解かもしれない。



 マッチングの方をチェックし、アルストロメリア側は照月、木曾がARでのログイン、天津風がVRでのログインとなった。

相手側はアルビオンとVR側のプレイヤー二名の構成となる。そして、彼が言及した通りにマッチング運が向こうに来てしまったらしい。

「アークロイヤル!?」

 若干の裏声気味に驚いたのは、秋月千早あきづき・ちはやである。

彼女も以前に木曾からWEB小説を見せてもらった時に、同名のゲーマーが登場している小説が存在したのは分かっていた。

しかし、まさか同名のプレイヤーが実在するとは秋月も予想にしていなかっただろう。

(実際に同じ名前でも、あちらと同じように相当な実力者とも限らない)

 センターモニターでアークロイヤルの名前を確認した木曾も、この状況には驚きを隠せないでいる。

ただし、焦ったとしても何も始まらないので落ち着く事にした。プレイ前から怯えるのは――既に負けを認めているのと同じだから。

(もう一人は聞き覚えのないプレイヤーネームね。シルバーネームだから、中堅プレイヤー以上なのは確定か)

 照月は別のプレイヤーがシルバーネームだった事に驚いている。アークロイヤルに驚かなかったのは、ネームがブロンズネームだったのもあるだろう。

称号的には、ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→レインボーとレベルが上がっていく。

レインボーは、それこそ大和やまと及び三笠みかさしか持っていないと言われても不思議ではない称号でもあった。

『ハンデを拒否したのはそちらである以上、こちらも手加減はしない!』

 アルビオンは明らかに特撮チックなARアーマーを装着するが、武器装備が全くない事にイカヅチは違和感を持つ。

(素手格闘を使うというのか? ヒーローブレイカーで!?)

 ヒーローブレイカーで素手格闘は存在するが、プレイ人口で素手使いは一割以下と言ってもいい。

素手であればAR対戦格闘等をプレイすれば充分なはず。それなのに、彼は既にこだわるのか? それとも、武器なしでも勝てると考えているのか?


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