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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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19-4

 ギャラリーの予想は、まさかの的中となった。相手側がソロプレイに徹した事が敗因ではない。

だからと言って、あの魔法使いが暴走した事が原因でもなかった。単純に、相手側は甘く見ていたのである。

「あのバトルは既に三〇秒を過ぎたあたりで決まっていた」

「そうだな。島風とセンチュリオンが組んだ事も驚きだが」

「センチュリオンと言う名前を聞いた事がなかったから新人と思っていたこちらにも、油断があったのだろうな」

「相手側の情報収集不足、それに戦力差を甘く見ていた事が敗北につながったと言える」

「ヒーローブレイカーが連携を必須としない箇所があったとしても、ここ最近はイースポーツ大会の対象作品に選ばれ、チームを組もうというプレイヤーもいるというのに」

 既にギャラリーは中継されていたバトルの結果を踏まえた討論会になっている。

センチュリオンの実力を甘く見ていた事はギャラリーも同じだが、それはプレイヤー側も同じだった。

それに加えて、島風彩音しまかぜ・あやねの実力も以前より上昇している個所も、彼らは計算していなかったのだろう。

【バトル自体は一分で決着したが、どう考えても更に早い決着でもおかしくはなかった】

【レイドボスの耐久力を計算済みだったら、それこそ速攻決着は決定的だ】

【そこまで速攻にならなかったのは、削ったメンバーが島風とセンチュリオンの二人だけだった事だろうな】

【もう一人之プレイヤーは? 途中リタイヤとかあり得ないはずなのに】

【途中リタイヤはないだろうが、途中で通信環境の事情でログアウトしてしまう現象もある】

【もしくは、周囲のアンノウンをメインで攻撃していたか――そのどちらかか】

 SNS上でも、センチュリオンと島風の機動力があった事が評価されているようである。

それ以外ではレイドボスの耐久力も計算されていたら、それこそ一分以内の決着もあり得ただろうという意見も出た。 



 バトル終了後、島風とリアルで顔を合わせることなくセンチュリオンはログアウトをしており、すぐに姿を消す。

実は、センチュリオンのいたゲーセンと島風のいたゲーセンはARでログインしたのだが、系列店は同じだが場所違いでもある。

お互いに草加市内のゲーセンらしいが、そこまで島風は突っ込むような事もなかった。

(あのバトル自体、茶番が過ぎる。明らかにアレを計画したのはダークフォースに悪意を持って炎上させようという人間だ)

 一瞬だが、センチュリオンの目つきが敵意をもったような物に変わるのだが、フードで隠れているので表情を確認するのは周囲にとって不可能である。

しかし、筺体に八つ当たり等をすると出入り禁止になるので抑えているのが現状だろう。

『低能集団とレッテル貼りをされてまとめサイトで炎上する方が問題――と言っても、既に炎上してグループ自体がないがな』

 店を出ようとしたセンチュリオンの目の前に姿を見せたのは、何とアルビオンである。しかも特撮ヒーローであるアルビオンの姿で――。

「ダークフォースは既に壊滅したはず。それこそ、お前が関与する事ではないのでは?」

『ダークフォースと言うブランドイメージ自体が今のイースポーツ大会で必要となっている』

「まさか、イースポーツ大会に招待でもするのか?」

『それはないだろう。ダークフォースの今まで起こした行為を公表してSNS正常化を訴える可能性がある位だ』

「それこそ、本当に夢物語だ。現実味に欠ける」

『確かにまとめサイトを力づくで根絶するのは不可能だろう。しかし、一定のルールを設定して悪質なサイトのみを摘発する形式に変えれば、ある程度は可能なのでは?』

「それを含めて、全てヒュベリオンのシナリオだというのか?」

『それはご想像にお任せするよ。現実味に欠けると否定するのであれば、そこまで意見の押し付けはしないつもりだ』

 そして、アルビオンはゲーセンの店内の方へと消えていく。どうやら、別ゲームをプレイする為に訪れたというのが正しいようだ。

その際にセンチュリオンと遭遇したというべきか?



 一連のセンチュリオンのプレイは予想通りだが、まとめサイトで炎上をしていた。

過去にセンチュリオンがダークフォースで名前が効かれていただけに、様々な憶測情報が独り歩きをした結果として――。

【センチュリオンがやはりというか、アルストロメリアに寝返ったようだな】

【しかも、ダークフォースを炎上前提で批判とか】

【俺たちは捨て駒扱いか?】

【やはり、他所者に頼ったのが間違いだった。復活させるならば、今度こそ――】

【しかし、ヒュベリオンの様なカリスマ管理人がいなければ、また同じことの繰り返しだ】

【芸能事務所と手を組むのはどうだ?】

 SNS上ではセンチュリオンを直接名指しは若干避ける形でねつ造記事が作られていく。

直接名指しはSNS上のやり取りで名前は出ているが、記事のタイトルではセンチュリオンを出さないようにしている。

下手に名前を出せば、ガーディアンに通報されて終わりだとサイト管理人が思っている可能性も高い。

 しかし、これらのねつ造サイトも炎上し、次々と削除されていく状況だった。

その理由として、例の魔法使い以外にも同じような目的でダークフォースの名前を使って暴走するプレイヤーがいた為である。

彼らの醜態が晒された事でダークフォースの名前は価値を失い、遂にはこの舞台からは完全退場をする事になった。


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