第15話:動きだしたシナリオ
>更新履歴
・午前2時48分付
誤植修正:問う音つ→唐突
四月九日、ネット上では様々な事件が報道されていた。
それこそ、一連の超有名アイドルグループによる出来レース、自作自演騒動はもちろんの事、それ以外にも色々と。
「やっぱりか。ヒーローブレイカーを潰そうとしていたのはダークフォースではなく、芸能事務所だったのか」
「むしろ、この場合はダークフォースを騙る芸能事務所では?」
「全ては自分達が売れれば問題ないという考えによる物が原因だった?」
「リアルで芸能事務所襲撃とかしたら、それこそ警察に通報されるだろう。だからと言って、芸能事務所がこれでは――」
「もはや、リアルアイドルの時代は終わった。これからの時代はバーチャルアイドルで決まりだな」
こうしたやりとりも、やはりというか一連のニュースが流れれば拡散されるだろう。
案の定というか、ダークフォースとは別の勢力によるマッチポンプも疑われる展開に発展する事も把握済みかもしれない。
(やはり、そう言う――全ての事件はダークフォースではなく、それを騙る勢力の仕業なのか?)
センターモニターでの話が聞こえた三笠は、一連の事件が全てのカギを握るとも考えている。
それとは別件で、三笠はある人物に関する情報をSNSで集めていた。その途中で、今回の一件を目撃する。
「これは、一体――」
三笠のスマホには、ある人物に関してのなりすましが発見されたというまとめサイトの記事が炎上していた。
なりすました人物の正体はマイナー事務所のアイドル候補制で、この人物は習慣等で晒し物になった果てに引退と言う末路までが予想できる。
草加市ではSNS炎上禁止を目的とした条例が存在する事は、すでに周知されている物と思ったが――このような事件がピックアップされている以上は、周知されていないのだろう。
「こうしたなりすましが横行するとは、民度の低さを疑われても文句は言えないか」
ネット上でヒーローブレイカーは無法地帯とも取り上げているニュースは存在する。
ただし、これらのニュースは大抵が芸能事務所の手による炎上を目当てとしたアフィリエイト系サイトのフェイクニュースだろう。彼らのやりそうなやり口だ。
「しかし、あの話題自体が全てフェイクだとしたら――?」
三笠はある事実に気付いた。超有名アイドル騒動自体、全てはフィクションであり、別のSNS等から引っ張り出した話題ではないか、と。
それを含めて、三笠は再び何かの情報を洗い出し直す。全ては、ヒーローブレイカーの事実を知る為に。
そして、ある人物との接触も同時に断念する。その人物とは、島風彩音だった。
四月一〇日、SNS上で様々なサイトが炎上している。これは彼のシナリオ通りなのかは定かではない。
しかし、彼は思っているだろう。『これ位の事をしなければ、変える事が出来ない所まで来ている』と――。
「彼が望むイースポーツとは何だろう?」
「分からん。一連の炎上騒ぎは特定企業の仕業と言うのも判明しているが」
「我々とは違う業種が妨害を仕掛けてくる事自体、既にスケールが違いすぎる。株式上場しているような会社だったら、信用問題だぞ」
「イースポーツに革命を起こす。荘社長は断言した。何を言おうとも、何を進言してもあの社長がそのまま通すか?」
「それもそうだな。あの社長は社員の意見は受け入れる体制を持っているが、その一方で通さない意見もある」
「自分の都合に悪い事は通さないという事か?」
「単純に社長の都合が悪い事を通さないようには思えない。そうだったら、一歩間違えるとブラック企業と変わりないぞ」
ゲーム会社の会議室では、集まった数人の幹部級の人物が議論を展開していた。
そのテーマは、イースポーツ、社長、ヒーローブレイカーである。
「しかし、ヒーローブレイカーに関しては手早く対応している。しかも、先の先を行く対応までやっている事が安心させているのは事実だ」
「あの時のサーバーエラー騒動も、瞬時に特定して鎮火させている。SNS炎上も最小限と言う話だ」
「それを踏まえれば、優秀とも言えるのだろうな」
「あのゲームをちゃんとマーケティングした上でリリースしたのかは、疑問に残るだろうが」
「あれくらいの規模であれば、VR版だけにすればよかったと思う」
「しかし、AR版は今となっては我々のメーカーにおける柱と言えるコンテンツになった」
社長の能力に関しては、周囲も疑問に思う個所はあったらしい。その上でヒーローブレイカーをスタートさせた。
結果として、最初の内は成功とは言い難い物のSNS等で有名になり、今の状態になっている。
「我々は、何を恐れていたのだろう」
ある男性幹部が唐突に切りだした。彼は今まで会話には参加せず、ノートパソコンで情報を集めているだけである。
俗に言う動画配信担当と言うべきか。実際、この会議も動画サイトを通じて配信されているのがその証拠だ。
「SNSの炎上を恐れて、何が改革なのか――それをあの社長はヒーローブレイカーで証明しようとしている」
それを聞いて、何人かのスタッフが動揺する。もしかすると、彼らはSNSでの悪評が影響で降格やリストラをされるとでも思っているのだろうか?
「社長を信じる事が、重要なのではないのでしょうか?」
この一言で、周囲の幹部は拍手。しかも、スタンディングである。一体、どういう事なのか?
この配信も全ては仕組まれていたのではないか――そう考える人物もいるかもしれない。




