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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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第13話:新たなゲームが始まりを告げる


 四月八日、ヒーローブレイカーのバージョンアップが行われた。ただし、日付が変わってからすぐではない。

ARゲームを扱うゲーセンの中には深夜営業していない場所もある。深夜に待機していたプレイヤーは揃って残念がっていた。

「さすがにこのタイミングではないか」

「ただ、深夜に更新していたとしてもプレイする様な物好きなプレイヤーがいるとは考えにくい」

「それにVR版だけ更新しても不公平が生じる。やはり、ARゲーム版も同時にするべきだろうな」

「騒音的な要素でARゲーム版は午後十一時辺りで終了する場所が多い。それを踏まえると、これもやむ得ずか」

 VR版をプレイしていた男性プレイヤーは、深夜の更新がない事を残念がっていた。

しかし、プレイ終了後は家に帰ったので徹夜ゲーセンをする為に来たのではないのが分かる。

【深夜更新ではなかったか】

【実際にプレイするのが営業時間内であれば、深夜更新で開店時間と同時にプレイ可能にしてほしいが】

【しかし、開店時間と同時に――あり得るのか?】

【あり得るだろうな】

【そこまでして、ヒーローブレイカーに何を賭けているのか分からない】

 SNS上では様々な声がある。新や更新ではない理由は色々とありそうだが、それを口に出す者はない。

それがきっかけで悪意あるまとめサイトによって炎上し、それこそ芸能事務所等の主壺になっては終わりだ。



 それから時間が経過した午前一〇時、一斉にオンラインでデータ更新が行われ、無事にアップデートされる。

九時に営業するゲーセンは草加市内でもまず存在しない事に加え、そうした特殊な営業時間は年末年始や夏休み限定だろう。

それを踏まえての午前一〇時更新なのかもしれない。この時にヒーローブレイカーをプレイするプレイヤーはいなかったのだが。、

《現在、アップデート作業中です。その為、ヒーローブレイカーはオフライン稼働となります》

 センターモニターにはオフラインを示すメッセージが上部にテロップで流れ、そこにでもムービーが流れる状態だった。

一〇〇円を入れても反応しない訳ではないのだが、ARゲームでオフラインプレイをしようと言うプレイヤーはめったにいない。

その理由は動画アップロード機能やスコア記録と言った物はオフラインでは使えない事にある。



 五分後、アップデートが完了して再起動し、プレイ出来るようになったのは午前一〇時一五分だろうか。

草加市内にあるゲーセンでは、センターモニターに早歩きで接近してでもムービーから昨日のプレイムービーへと切り替えた人物がいる。

その人物とは、私服姿のビスマルクだった。今回はバイトが休みと言う事もあって、バイト先とは違う別のゲーセンへ足を運んでいた。

「トップランカーと言う位置にいるのは、彼女たちが不動と言う訳ではない」

 動画内では、大和やまと三笠みかさが高速移動するアンノウンに対し、長距離射撃で対応する姿が映し出されている。

「他のプレイヤーも望んでいる。芸能事務所が自作自演する様な音楽業界やコンテンツ業界の様な物でなく――ヒーローたちの本気のバトルを」

 ビスマルクは二人のプレイを見て、明らかに何かを意識していた。

そして、ヒーローブレイカーは何かに操られているというまとめサイトを鵜呑みにする訳ではないが――。

「このゲームでは、さすがにデスゲームような要素はないけど――ゲームマナーのなっていないようなプレイヤーがいない事も信じている」

 彼女はプレイヤーのモラルやマナーを信じたかった。しかし、プレイヤー個人の問題ではなくなったのは明らかな部分がある。

それを踏まえると、ヒーローブレイカーというゲームをプレイしたプレイヤーが発言するべきでは、と。

「さぁ、セカンドステージの始まりよ!」

 ビスマルクは、この状況を見て新たなステージに進んだと確信する。既に賽は投げられたと言ってもいい。

そして、AR版をプレイすることなく別ゲームの方へと移動した。あくまでも動画を見る為にセンターモニターへ立ち寄ったのだろう。

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