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・午前2時39分付
誤植修正:延長戦→延長線
今回のバトル動画は、思わぬ反響を生み出した。それは、付け焼き刃な上級技術よりも熟練された技術が上回ることだ。
チートと見間違えそうな能力でも、蓋を開けてみるとそれは上級技術をワンボタンで実行できるようなアプリであったというパターンも多いという。
明らかに分かりやすいチートツールはARゲームでは通じない。もう、チートツールは時代遅れと言う認識かもしれないだろうか。
むしろ、そうしたツールよりも上級技術がすぐに実行できるようなショートカットツールの方が認識されにくいという判断だろうか?
「誰もが馬鹿な事を考える。チートツールが駄目ならば、方法を変えればすり抜けられるのではないか、と」
「しかし、身の丈に合わない事をすれば自分が破滅をする事は明白だ。ヒーローブレイカーは、そう簡単に攻略法を解析されるほど甘くはない」
「だが、そろそろではないのか? 社長の話ではイースポーツ進出を踏まえたバージョン更新は?」
「確かにそう言う話もあったな。しかし、イースポーツとは大きく出たな」
「VRゲームであればあり得るような話だが、ARゲームでイースポーツの対象種目に?」
ゲームメーカーの会議室では、ヒーローブレイカーに関する定期会議が行われていた。
会議に参加しているスタッフと意見交換をしているのだが、中には議論に参加していない人物も何人か存在する。
そうした人物は、意見交換と言うよりはSNS上の反響をチェックしているのだろう。実際に、この意見交換会は広範囲の動画サイトで生配信されていたから。
【ヒーローブレイカーをイースポーツに?】
【それは無理があるだろう。VR版ならば実現可能かもしれないが】
【一体、どういう目的でイースポーツ化を? 人気ジャンルと言えるかどうかは微妙なのに】
【ここ最近の動向を見れば明らかだ。プレイヤーも増えているし、上位ランカーの人気も上がっている】
【だが、考えられることだ。ヒーローブレイカーを次のステージに進めるためにも大きな改革は必要だろう】
【今のプレイヤーたちが単純にイースポーツ化を歓迎するのか? それこそ、プロゲーマーによって初心者狩りまがいな事が起こるのでは?】
投稿されたコメントを見ると、イースポーツ化には否定的な意見が多いように見える。
賛同するようなコメントもあまり現れていないのが拍車をかけているのか、同調圧力なのかは定かではない。
(案の定の展開か。ダークフォースの様な連中が現れたことで、自分達も被害にあう可能性を考えているプレイヤーもいるだろう)
会議室でもARメット姿なのは、ヒュベリオンである。今回に限っては生配信されている関係もあって、普段はメーカー内でも被らないARメットを着用していた。
これには一部スタッフも反発したのだが、社長指示と言う事で従う事に。これは社長の顔を知られるのはメーカー的に痛手と言える事情があるのだろう。
動画サイトに上級技術の動画は存在するが、再生数が急激に上がるような物は存在しない。
あえてあるとすれば、一部のチートツールで似たような挙動があった時に煽りや炎上目的でコメントが伸びるケースだろう。
「あのプレイはあっさりと特定されるような物だったが――」
一連のプレイ動画をチェックし、チートプレイの疑われている動画と比較していたのは三笠である。
イースポーツの番組では、こうしたチートプレイを扱わないように生放送以外では動画のチェックを行っていた。
一例としては、プレイ前のチート有無チェック、プレイ中の通報有無、プレイ後のチェックと言った個所である。
三笠のいう『あっさり特定された』チートとは、アルストロメリアとの対決で使用されたブーストだろう。
あのテクニックは、VRでは容易だが、ARでは相当の熟練度がなければ不可能だ。動画を見ただけで完コピできるレベルではない。
ARで受ける衝撃は高く、ブーストタイミングをミスして落下したら身体に受けるダメージもゼロではないにしても、ダメージを受ける。
ゲームで使用されるARアーマー及びARスーツは、オートバイにおけるヘルメットとライダースーツの関係と同じだ。アーマーを着用する事で、衝撃を緩和できる。
「しかし、ARゲームで大怪我をピックアップされて終了に追い込まれるようなジャンルは多い」
三笠はロケテストの段階でけが人が出たというARゲームを何作品か見た事もあった。
AR『ゲーム』ではあるのだが、体感ゲームの延長線なので禁止行為で怪我をする事もあるだろう。そこだけを事実と捻じ曲げて情報を拡散し、ARゲームは危険と切り捨てるような勢力を三笠は知っている。
(あの芸能事務所勢力が影でダークフォースを操っているとは思えない)
どちらにしても、このような状況を宣伝に利用しようと考える勢力は、指折り数える程度だ。まとめサイト、芸能事務所、広告会社と言った勢力か。
三笠は別の意味でも悲劇を繰り返す事は日本のコンテンツ価値を下げる。結局、超有名アイドル商法を巡る争いは形を変えてテンプレートとして定着しているという事か。
「やはり。上位ランカーも自分の立場を考え、正しいコンテンツ流通の為に発言する事も重要か」
動画を見ていく内に、三笠は自分のプレイを悪用しないようにする為に自らが発言すべきとも考えた。
重要なのは、ARゲームが無法地帯となる前に自分達がお手本を見せて、マナーを守って正しくプレイするスタイルを確立させる事だろう。




