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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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10-2

 アサシン・イカヅチのマッチングに出現した人物、それはVRのプレイヤーのようである。

プレイヤーネームは頭領、レベルもアシュラより高い程度。アバターは忍者を思わせるが、パワードスーツ使いのようでもあった。

イカヅチのソロプレイに加えて、頭領の方は全員プレイヤーだった事もあり、木曾が乱入として入る。

今回に限って言えば、照月てるつきアスカと秋月千早あきづき・ちはやは様子見といった具合だ。

(とりあえず、今回は彼らの実力を見極めましょ)

 照月は自分が乱入しようとは考えておらず、仁王立ちでセンターモニターの映像を見ている。

しかし、改造メイド服なので目立つ事この上ない。さすがにスカートがめくれたりはしないと思うのだが――。

(こちらとしては他メンバーの技量も見ておかないといけない)

 秋月の方は乱入しようという考えは一切なく、様子見一辺倒だ。

その証拠として、照月のいるセンターモニターではなく、VR版の観戦専用モニターでチェックをしている。



 更に今回のプレイを別モニターで見ていたのは私服姿の長門ながとハルだった。

近い内にアルストロメリアへは接触しようと思っている中で、この中継をセンターモニターで確認したのである。

余談だが、彼は照月たちとは違うゲーセンにいた。彼女たちが竹ノ塚にあるゲーセンだったのに対し、長門は草加市のゲーセンにいる。

ちなみにこのゲーセンにはAR版がないのでVR版をプレイするしか選択肢はないのだが。

(これは、もしかして――)

 相手側の方はプレイヤー枠が満杯だったので、それを確認した上で筺体のコイン口へ百円玉を投入しプレイを始めていた。

ヒーローブレイカーは電子マネーにも対応しているが、店舗によってはチャージ未対応なので百円で一プレイと言う場所も多い。

長門のいたゲーセンではヒーローブレイカーよりも別のロボットアクションゲームの方が人気があり、ヒーローブレイカーの方は空席も目立つ。

ある意味でも空席が若干目立つ程度は、穴場スポットと言える状況でもあった。実際、ヒーローブレイカーで混雑している店舗は有名プレイヤーが来る場所が多い。

そうしたプレイヤーにリアルで遭遇する事なく練習できる環境と言うのは、そうそうある物ではないだろう。



 その後、プレイヤーマッチングで長門が入ってきた事に驚いたのは木曾だった。過去に木曾は長門との遭遇歴がある。

「長門――まさか?」

 その状況をバイト先のセンターモニターで見ていたのはビスマルクだった。

自分のバイト先はヒーローブレイカーも満席ではないにしても、そこそこの客入りである。それを見て、他の店舗並みに客入りを良くする方法を模索していた。

(似た名前のプレイヤーもいるし、別人よね)

 気にはしていたが、仕事の方もあるので現状はスルーする事に。

今はゲーセンのバイトに集中するべき時間なので、客の応対等に回った。



 最終的にマッチングはアルストロメリアからはイカヅチ、木曾、長門の三人が参戦と言う展開になった。

一方で、相手は頭領と無名プレイヤー二名。レベルからすれば、アルストロメリアの方が上に見えるかもしれない。

(長門が来たのは、まさか?)

 木曾は何かメッセージを送ろうともしたが、敢えて何も送信はしなかった。長門がアルストロメリアのメンバーになった訳ではないからである。

それに加えて、以前のイカヅチ戦の件もあるので下手にやり取りをしない方が良いとも考えていたのだろう。

(このバトルは、もしかすると他のプレイヤーや強豪プレイヤーが見ているかもしれない)

 長門の手は微妙に震えていた。間違いなく、このプレイは下手に悪目立ちが許されないマッチングになるだろう、と。

「ゲームの方は先手必勝! 決めさせてもらう!」

 頭領はゲーム開始と同時に動き出す。しかも、ターゲットのレイドボスめがけて。

ボスの形状は移動タイプで、道路上しか動けない戦車ボスだった。しかし、その戦車の主砲は瞬時にして相手のライフを半分以上削れる威力を持つ。

下手に戦車の間合いに入る事は、自滅行為を意味する。ただでさえ、ヒーローブレイカーはスコアとしては個人戦に近いが、協力プレイが必須となるだろう。

頭領の使用している武器は戦国時代の種子島を連想するビームライフル、それに薙刀の形状をしたビームスピアである。

(パワードタイプで、あの立ち回りは無茶だろう)

 頭領の立ち回りを見て違和感を持ったのは、自分も同じタイプを使用している照月である。

動画サイトの上級プレイをそのままコピペしても、それを即座に者に出来るプレイヤーは少ないだろう。

それを踏まえると、彼のプレイスタイルは目立ちたいという目的でプレイしている可能性が高い。

頭領のプレイを見て、照月は何かやりきれない物を感じていた。

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