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 四月三日、天気は晴れており、屋外用ARゲームも本日は新規プレイヤーを増やす為にもあれこれと宣伝していた。

そんな中でもダークフォースが別ゲームを炎上させている話題が、やはりというかSNS上では拡散している。

その話題を目撃したガーディアンが動いて最悪の事態を回避したのも、まとめサイト等を見るまでなく当然の結果として受け入れられていた。

こうしたダークフォースを騙るパリピによる炎上行為は日々続いていると言ってもいい。

本物のダークフォースであれば、目的や理由なしで無差別テロまがいの炎上行為を行うとは考えられないからだ。



 別の草加市にあるゲーセン、そこではVR版ヒーローブレイカーをプレイしているセンチュリオンの姿がある。

彼女はAR版から始めると思われたが、予想外の展開と言える物だった。一種のカルチャーショックだろう。

そのプレイが終わってゲーセンを出た所で、この異変は起こった。

「ダークフォース? 興味ない――と言ったら、どうする?」

 ダークフォースを名乗るフラッシュモブ集団に囲まれていたのは、センチュリオンである。

赤髪のツインテール、左目の眼帯、グレーのコートと言う明らかにコスプレっぽい姿をしているが、偽物ではなく本物だった。

『こっちとしてもアシュラの様な勝手を働く連中に、これ以上好き勝手はさせたくない!』

「ダークフォースと言っても一枚岩ではないようね」

『だからこそ、その対抗策としてお前の力が必要なのだ』

「必要と言われて、何も詳細が分からないような組織に力を貸すと思う?」

 明らかにモブと認識されそうな男性が、震えながらもセンチュリオンにお願いをしている。

この場合は脅迫や圧力をかけているように見えるかもしれないのだが、口調や周囲の人物も混乱している事からお願いと言う形になっているのだろう。

ARメットの影響もあって、その素顔を見る事は出来ない。彼らは一種の下っ端なので顔を知ったとしてもすぐに切られるのが目に見えている。

『全く興味がない? では、これならばどうだ?』

 モブの一人はタブレット端末でダークフォースのコミュニティサイトを開き、その中のメンバーリストを彼女に見せた。

(あの名前は、まさか?)

 ある一名の名前を見て眼の色が変わる。彼らもその名前を見せれば――という考えがあったようだが、これほどとは思わなかった。

一体、あの人物とどのような関係があるのか? 真相を聞くのは避けるとしても、気になっている。



 同日午前十一時、長門ながとハルは草加市にあるゲーセンに姿を見せていた。

プレイしていた機種は、ヒーローブレイカーであり、プレイをする目は真剣そのものである。

使用しているクラスはヒーローだが、既にESPもプレイした上で判断した結果だ。

(あのプレイヤーは?)

 マッチング画面になり、そこで目撃したのは木曾きそアスナのアバターである。

使用しているのはESPだというのは分かるが、そのデザインはESPのソレとは次元が違っていると言ってもいい。

それは、ヒーローアバターのカスタマイズパーツも使っている可能性だった。

実際、ヒーローアバターで見覚えがあるパーツをマントと一部のアーマーで使用している。

(しかし、今回は――)

 長門は昨日の事を思い出していたのだが、それもどうでもよくなるような状況になっていた。

それは、相手がプロゲーマーではないが動画サイト上で有名な実況者だったからである。

「負けるわけにはいかないが、全力でぶつかるまでだ!」

 ヒーローブレイカーは相手プレイヤーを倒すゲームではない。この辺りが対戦格闘や他の対戦ゲームとは違うのだろう。

あくまでもボスレイドの協力プレーを楽しむゲームと言う位置づけなのかもしれない。



 三〇分後、秋月千早あきづき・ちはやはARスーツを装着し、AR版にログインをする。

照月てるつきアスカは相変わらずの改造メイド服で、ギャラリーからの注目度も高い。最近では動画サイト上でも知名度が上がった事も理由らしいが。

木曾の方は今回もVR版からのログインのようだ。これは諸事情で秋月と照月のいるゲーセンとは少し距離のある場所にいる為らしい。

 マッチングの相手は、今回もアサシン・イカヅチだった。パートナーは前回とは別のメンバーを揃えてきたようである。

『今回は以前のようにはいかないぞ!』

 イカヅチの装備は以前とは異なり、近接用ブレードも装備したヒーロータイプらしい。銃火器は相変わらずだが、スナイパーライフルのみが気になる。

パートナーもヒーローで、いわゆるオンリーチームだった。この戦法には秋月も呆気にとられている。

(チームバランスを取る意味でもクラスはバラバラというパターンはあるが、オンリーとは)

 照月はこのプレイスタイルに文句を言う事はない。プレイスタイルは人それぞれだからである。

しかし、さすがにこのヒーローオンリーには頭を抱えた。オンリーの場合、武装まで同じだったらパターンを見切られたら終わりだから。

メンバー的にコレしかなかったというのであれば止む得ないが、ギャラリーの方も『負けフラグだな』と言う事が相次いだ。

余談だが、イカヅチのプレイしている店舗は草加市内のゲーセンであり、実は木曾の店舗名と一致する。

(あれっ? 木曾のいる店舗って?)

 照月は即座に何か気付いたようだが、あえて言及する事を避ける。

ゲーセンの場所が違う事で勝敗に関係するなんて事は滅多にないからだ。店舗のメンテナンス的な問題があれば、不利になるかもしれない。

そうした要素が出てくると、SNS上で拡散してお客を失う事になりかねないだろう。ARゲームでは特にメンテナンスは週一回以上を必須とまで決められている。



 バトルの結果は既に明らかだった。ココで言うまでもなく、アルストロメリアの勝利。

理由はイカヅチの用いていた戦略パターンは過去のプレイスタイルであり、今のスタイルとは全く違う事が理由だろう。

『人間は進化する。だからこそ、昨日の勝利パターンが明日には通じないことは分かっているはずだろう!』

 あるアニメの台詞だが、これが明らかに当てはまるような戦略では、さすがのイカヅチでも勝ち目はないと言える。

所詮、付け焼き刃な戦略で勝てるほどにヒーローブレイカーは甘くなかった。

「完全に負けた。これ以上はプレイする意味が見出せないだろうな――」

 その発言は『負けたら引退』を思わせる台詞だった。それに対し、速攻で却下をしたのは予想外の人物だったのである。

「貴方が止める必要性はない。だから、協力をしてほしいの」

 何と、イカヅチの隣筺体にいたのは木曾だったのである。これには別の意味でも衝撃を受け、イカヅチも言葉を失う。

「協力か、いいだろう」 

 イカヅチの口からは予想外の言葉が飛び出した。何と、アルストロメリアに入るという事――。

これには話を切り出した木曾の目が点になっていた。本当に協力してくれるという返事が来るとは思っていなかったからである。



 谷塚駅近くのゲーセンでVR版ヒーローブレイカーを発見、センターモニターを見ていたアルビオンは、既に配信されていたあの動画を発見する。

『なるほど。これでは彼でも負けて当然か』

 それはイカヅチのプレイ動画、その内容を見て分析を行っていたのだが、メインはそれだけではないように見えるだろう。

イカヅチのプレイスタイルも悪い物ではない。逆にウィキ等の情報を鵜呑みにせず、独自に組み立てている個所もあるのは評価出来る。

しかし、それでもアルストロメリアの連携やテクニックには及ばない。プロゲーマークラスのプレイヤーでも、戦略次第では勝てる事を実証したのだ。

『あれほどの実力者でも、ヒーローブレイカーのスキルが低ければ彼女たちには勝てない、と』

 アルビオンは、ARバイザーで何かのデータを確認しているようだったが、それよりも重要視するべきは三人目のプレイヤーの存在だった。

『木曾アスナか。彼女もバーチャルコスプレイヤーだったな』

 アルビオンが木曾に重ねたのは、島風彩音しまかぜ・あやねである。

あちらの方がバーチャルコスプレイヤーゲーマーとしては実力が上、木曾はいわゆる二番煎じと言ってもいい。

それでも、木曾のプレイスタイルは島風にはないような物があるとも考えた。単純な二番煎じと判断するのは早計だろう。


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