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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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9-2


 偶然とも言えるマッチングのはずだが、その盛り上がりは異常だった。

さすがにゲーセン内で騒ぎすぎると他のゲームをプレイしている人にも迷惑なので、若干のトーンダウンはしている。

「アサシン・イカヅチだと!?」

「イカヅチまで参戦するのか」

「ヒーローブレイカーに、イカヅチも来たのか」

「相手はアルストロメリアらしいが、実力からすれば――」

「どちらが勝つのかは分からない。FPSではかなりの実力者らしいが、それでもヒーローブレイカーでは通じないだろうな」

「それはどうかな? 彼は仮にも他のゲームでも実力者と言えるほどのスキルを持つ。一種のリアルチートだ」

 周囲のギャラリーはイカヅチが即興とも言えるチームを組んでいるのだが、それでも彼らが勝つと予想する。

何故に彼らはイカヅチに対して『勝てる』と思っているのか? それは、彼がリアルチートと呼ばれる位の伝説を持つゲーマーだからだ。

最近は実況動画投稿等がメインであり、ゲーマーとしての実力を知る人物は増えているだろう。それでも、実際の実力を把握しているのかと言われると三割以上が分からないと答える。

「リアルチート? それはヒーローブレイカーでは無関係だ。プロアスリートなども挑戦したが、惨敗しているのがその証拠になる」

「それは他のARゲームでも一緒じゃないのか? Arパルクールでは顕著だったと聞く」

「これだから素人は――ARゲームで必要とされるスキルは、プロスポーツで必要とされるソレとは違う。仮に類似スキルがあっても、転用できなければ持ってないと同じ」

 これだから――とギャラリーの素人な発言に割り込んだのは、そこそこの実力者と言われるゲーマーだ。

彼は服装からゲーマーと連想は出来ないが、その視線は――ゲーム画面に向けられている。

「所詮、ネット上で有名になりたいと考えて簡単な気持ちで挑むようなプレイヤーには、これの進化は分からないだろう」

 それだけ言い残すと、彼は別のゲーム筺体へと移動する。

むしろ、移動先はVR版ヒーローブレイカーがある場所にも見えた。

「あのゲーマーは見覚えがない」

「期待のゲーマー辺りでは?」

「だとしても、あれだけARゲームの理解している人物がゲーマーなのか?」

 この人物に関しては様々な憶測が流れるのだが、そんなことはこれから始まるバトルの前では些細な出来事だ。

しかし、その人物はスタッフと思わしき腕章も確認できたので、もしかすると運営側のスタッフと言う可能性も否定できない。

(遂に運営も一連の騒動に関して、無視できない状況になったのか?)

 今回はバイトを休みにしているビスマルクが、偶然にもゲーセン遠征でここへ訪れていた。

そして、明らかに目立つような腕章をしてスタッフと言うアピールをしていた事にも疑問を持つ。

(覆面調査であれば、あそこまで目立つアイテムは身に付けない。もしかすると、あれも炎上勢力の――)

 その事実にビスマルクが気付いた頃には、ガーディアンが偽スタッフを取り押さえていた。

どうやら、彼もダークフォースだったらしい。アシュラの暴走がきっかけで動いたのかは定かではないが。



「下手に過剰干渉はさせない――」

 スタッフオンリーとも言えるようなサーバールームでタブレット端末を片手にサイトを見ている人物がいた。

身長一七〇位、黒のコートに黒のARメットと言う正体を隠す。それだけの外見なのに彼はこの場所のスタッフオンリーとも言える部屋にいた。

どうやら、あの偽スタッフは何かを企んでいたのは明らかだが、それが知られる前にガーディアンが取り押さえており、真相は不明だ。

タブレット端末にはゲーセン内の監視カメラ映像が表示されており、これで偽スタッフを監視していたらしい。

「彼らは貴重なプレイヤーだ。そう簡単に消させはしない。これはデスゲームではないのだから」

 彼は即座に別のコミュニティを立ち上げ、そこへ何かのメッセージを起用に打ち込んでいた。

まるで、その手先はバーチャルキーボードが目の前に出現しているかのようなタイピング速度でもある。

「今後は無差別メールと言う手段は自粛しよう」

 そして、彼は再び姿を消した。まるで、忍術を思わせるかのようにサーバールームの監視カメラを欺いた。



 実際のマッチングはプレイヤーが六人と言うフルマッチング、CPU要素が介入しないので勝手にボスを撃破されるような事態も発生はしない。

その一方で、実力勝負なのは間違いないだろう。スキル、経験、連携、様々なゲーム要素が絡むのは間違いない。

(イースポーツ的な部分でも、これで大丈夫だったのか――)

 バーチャル動画投稿者としてのアバターである歴戦の傭兵風味のイカヅチだが、これはVR版でのプレイである。

その一方で、相方の二名はARでプレイしていた。これで本当にマッチングが成立するのか?

(まずは、相手プレイヤーを調べる方が先か)

 イカヅチはVR版のゲーム画面をチェックし、プレイヤーの名前と所属店舗を確認する。

そして、店舗名を見て自分の名前の隣にある店舗名と比較した。一文字も間違いはない。つまり、同店舗対決と言う展開だ。

(相手も同じ店舗? しかも、一人はVR版。つまり――)

 ゲームの方はまだマッチングチェック中で始まってはいない。その為、左右の筺体を座った状態で確認する。

満席なのは分かっているが、誰がアルストロメリアのプレイヤーなのか。イカヅチは若干不安になってきた。

(こうなるのは、満席になっていた段階で気付くべきだったけど)

 イカヅチの左二つ隣にある一番台では木曾きそアスナがプレイしている。

マッチングが同店舗にいるイカヅチに当たったのは、お互いに驚いているのは間違いないだろう。ただし、それをあの二人が分かっているかどうかは定かではない。

(アサシン・イカヅチ対策を万全にしてから挑むべき人物だが、そうも言っていられない状態と言う事か)

 木曾の方は若干焦りを見せているが、ゲームを始める前から焦っても負けフラグなのは明らかだろう。

それを踏まえて、落ち着こうとも考える。しかし、手に指で人の文字を書く方法の様な物で落ち着く訳がない。

羊を数えるやり方は違うし、ここで大声でも出したら出入り禁止は間違いないだろうか。

「とりあえず、息を整えて――」

 大きく息を吸い、呼吸を整えることで落ち着かせようとする。しかし、それでも大した効果はない。

おまじないレベルでも大きく動揺していた時よりはマシのレベルだろうy。これ以上はゲーム開始が告げられたので、ゲーム中に何とかするしかなかった。


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