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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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8-2

 午前一〇時二〇分、何とか店内に入る事が出来た木曾きそアスナは店内にあったヒーローブレイカーのポスターを発見、入荷しているのを確認した。

ポスターが貼ってなくても入荷している店舗があったりするが、その場合はVR版のみと言うケースが多い。

さすがにAR版と両方設置している場所は稀なので、ある意味でもこの店舗は貴重な存在なのだろう。

「AR版とVR版を同地設置している場所は稀と聞いたが、本当にAR版も置いているとは」

 木曾の見ていたポスターの絵柄はAR版の方である。これが貼られている事はAR版を設置した事を意味しているのだ。

AR版でもポスターを貼っていない店舗はあるが、大抵の店舗はAR版を設置している事をアピールする為にもポスターは貼っていたのである。

(しかし、本当にこの場所へあの二人は来るのか?)

 木曾はSNS上の情報なので信用はしていないのだが、最近になって目撃情報がある店舗がここだった。

大和やまとと三笠{みかさ}の目撃情報は過去に数件書かれていたが、木曾は彼女たちが目的で来た訳ではない。

【最近になって色々な人物が、あのゲーセンに姿を見せていたな】

【島風の姿も目撃されていたが、それ以上に中堅所も目撃事例がある】

【マッチングだけであれば、そのゲーセンへ行く必要性はないはずだ】

【確かにそうだ。オンライン対戦であれば店舗遠征は不要だろうな】

【一部のリズムゲームみたいに、筺体ごとで遠征スタンプを押すような形式でなければ、自宅に近いゲーセンへ行くだろう】

【たしかにそうかもしれない。しかし、筺体が修理中だったりゲーセンが定休日だったら?】

【サブ店舗と言う事か?】

 他にも様々な書き込みが存在するが、批判的な意見とか煽り発言、炎上狙いの物はスルーをしている。

木曾の方も、この書き込みを見てやって来たような物なのだが――その予想は当たるのか?

(他のゲーセンと比べて環境もよさそうだし、様子は見て見るか)

 新たなホームゲーセンにするかは不明だが、全エリア禁煙、小休止コーナー、一〇〇円二クレジットというサービス筺体、色々な意味でもサービスが豊富だろう。

その一方で、マナーを守らないようなプレイヤーはいるかもしれない。こうした事はきりがないというか――。

数分後、ある程度の様子を見終わった事もあって木曾はヒーローブレイカーのエリアへと向かう。

「あれっ? ヒーローブレイカーってこれだったかな?」

 エリアに到着しセンターモニターも確認したが、筺体の数が八台設置されている個所に違和感を持つ。

そして、自分がとんでもないイージーミスをしていた事に気付くのは、実際にプレイした後なのだが――。



 ほぼ同じタイミング、照月てるつきアスカと秋月千早あきづき・ちはやが店内に入ってきた。

「まさか、三〇分待ちと思ったら別のゲームだったとは」

「確かにARパルクールは最近になって人気作品となっているが、ここまで伸びていたなんて」

 秋月はどうやら木曾と同じミスをしていたようで、列に並ぼうとしたが最後列の看板を見て気付いたらしい。

アレがなかったら、もしかしたら並んでいる所だろう。駐輪場辺りまで列が伸びていたので、ここまで人気になっていたと勘違いしたのかもしれないが――。

「それにしても、珍しいわね。あなたが会わせたい人物がいるって」

 照月には誰と会うのかは教えていないのだが、秋月はその人物がここで目撃されている事をSNSで知っていた。

その為、もしかしたら会えるのではないか――という一種の賭けとしてやってきたのである。

「ヒーローブレイカーも混んでいるみたいね」

 一分ほど歩いた場所、ヒーローブレイカーのエリア近くは大盛況だった。外の行列は違うゲームだったのに、予想外の展開である。

大盛況だった事は予想外だったと言えるだろう。足立区でもここまで人気の作品になっていたのか、という意味でも。

「AR版のプレイヤーも増えている証拠かもね」

 照月はARのプレイヤーも若干増えている証拠と歓迎するような気配だが、秋月は微妙な表情をしている。

(本当にARのプレイヤーが増えているのだろうか?)

 彼女は口に出さないのだが、周囲のプレイヤーの様子を見て違和感を持っていた。

もしかして、これがフラッシュモブやSNS炎上狙いのマッチポンプなのではないか――とも。

それを考え出したらきりはないのだが、そうした不安材料は取り除くべきと言う考えにアルストロメリアの方針に変わりはない。


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