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イースポーツオブサンダーボルト  作者: 桜崎あかり


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4-2


 竹ノ塚のゲーセンで設置されているヒーローブレイカーの数は八台。

その内レバータイプの専用コントローラとミディタイプ筺体を組み合わせた物が六台、VRバイザーを合わせたような専用筺体が二台である。

圧倒的に専用筺体待ちが多いと思われたが、ミディタイプの方が割合的に多い。これがVR版とAR版の違いかもしれない。

「既にレベル30オーバーのプレイヤーもいるな」

「稼働してわずか数日でレベル30はあり得ないだろう?」

「確かにVR版が稼働したのは、三月に入ってからに近い」

「まさか?」

「AR版アカウントと共通だとしたら、どう思う」

 ギャラリーの中には、まさかの発言をしている人物がいた。何と、AR版とVR版は共通アカウントだというのである。

ゲームによっては複数アカウントを利用しての不正プレイも横行している事もあって、AR版とVR版を統一しているというのであれば納得だろう。

しかし、稼働時期が離れている機種で、使う端末も若干異なるようなゲームでアカウントを統一する必要性があるのか?

ゲーム機本体が異なれば、セーブデータを引き継げないというのが半数なのに。

「ゲーム機本体の違いで区別するのは、もはや時代遅れだろうな」

「その違いだけでSNSを炎上させる勢力こそが、時代に逆行している勢力かもしれない」

 他のユーザーはダークフォースとは明言しなかったものの、ある特定勢力がSNSを炎上させている事に苦言を呈した。

彼の意見は正論なのだが、それを言及する事は一種のフラグになる事を意味している。

「言いたい事は分かる。しかし、それを迂闊に発言すれば消されるぞ」

「消される? リアルでテロを起こそうというのか? それこそ、とあるガイドラインに引っかかる」

 彼が強気だったのは一つの理由があった。現実で発言者に対しての物理攻撃を行う事は禁止されている。

SNS上の発言であれば相応の処罰はあるのだが、それ以外で発言者に危害を個話得る事は一歩間違えれば無差別テロやマフィアの抗争を連想させる物であり、あってはならない行為だ。

このガイドラインは一種のデスゲームを禁止する事を意味しており、これがこの世界で犠牲者が出ない事を確立させていると言えるだろう。

「そのガイドラインがあるからこそ、日本ではジャパニーズマフィアが激減したと聞く。つまり、そう言う事だ」

「この日本は、全て書き換えられていると?」

「そこまで言っていない。むしろ、そうだとすればこの世界は明らかにフィクションの世界と言う事になる」

「そう言う物か」

 彼らに関しては、そのまま外へと出て行ったようである。

似たようなタイミングで別のプレイヤーと入れ違いになったので、もしかするとこの人物と遭遇する事を恐れて立ち去ったのかもしれない。



 午後一時頃、センターモニターの近くに姿を見せたのは先ほどまでリズムゲームをプレイしていた長門ながとハルだ。

リズムゲームプレイ後はタイミングを見計らってお昼を外食ですませて、ゲーセンに戻って来たのだろう。

 自身もSNS上でFPSジャンルが再燃している事、イースポーツ事業に進出している事等も知っている。

今回のヒーローブレイカーに関する認識も、それを踏まえての視察と言う事だろうか?

「どちらにしても、イースポーツ化の波は避けられないのは確実か」

 長門は色々と思う所がありつつも、見守るしかないと考える。イースポーツの拡散速度は、もはや自分でも予測できないような物だからだ。

日本のゲームメーカーは大きく遅れているとは言うのだが、この状況を踏まえても遅れていると言えるのか?

(コンピュータゲームを競技として用いるような創作作品は様々あるだろうが、それを現実に持ち込むとは驚いたな)

 長門と違う場所からモニターを見ていたのは、ビスマルクだった。先ほどまでは別のゲーセンにいたのだが、バイトのシフト時間だったので姿を見せたという事だろう。

【ヒーローブレイカーはイースポーツからは程遠いタイトルだな】

【どう考えても、別のゲームよりは採用率が低い。原因はARゲーム側にあるだろう】

【ARゲーム側の方はリアルで体力を使うと聞く。それでは有利不利が出過ぎて、ゲームにならない】

 まとめサイトでのコメントを見ると、ヒーローブレイカーはイースポーツには不向きと言う意見が多い。

しかし、本当に不向きなのかは実際に動かしてみないと分からないだろう。それは誰の目から見ても明らかだ。

【それ以上にヒーローブレイカーと類似したゲームが多くないか?】

【フォロワー作品が出るのは当然の流れだろうが、何かがおかしい】

【どう考えても別のAというゲームをヒーローブレイカーが真似たような記述が多いのだが】

 コメントをチェックしていたビスマルクも、このコメントを見た時には頭を抱えそうになった。

さすがにバイトの方もあるので、これ以上はタブレット端末でニュース検索するのも限界だろう。そう考えた彼女は、タブレット端末の電源を切ってバイトを開始する。


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