3.吟遊大詩人と賢者の石
──*──*──*── 宿泊室
〈 賢者の石 〉であるスライム風の〈 にゅい 〉を抱き枕にして、ベッドの上で寝息を立てて眠っているマオ。
室内の様子は、〈 にゅい 〉と〈 妖精 〉のフィンフィレイナの激し過ぎる大乱闘の果てに見ても無惨な散らかり様だった。
セロフィートの〈 結界魔法 〉のお蔭で、爆音も漏れる事もなく、《 宿泊室 》の外は被害を受ける事もなかった。
クリッキスチタルと話を終えたセロフィートは、階段を上がり、《 宿泊室 》の前に立つ。
ドアを開けて室内へ入ると、目を覆いたくなる様な光景が視界に入った。
但し、人間ではなく人形であるセロフィートは、室内の惨たらしい光景を見ても、はにかみながら笑いを堪えるだけだった。
静かに室内を歩き、ベッド迄辿り着くと、ベッドの上に腰を下ろし、静かに座った。
セロフィート
「随分と派手にやんちゃしましたね、〈 にゅい 〉」
にゅい
「にゅ…にゅい〜……」
セロフィート
「ふふふ。
別に怒ってません。
元気なのは良い事です。
フィンが居れば〈 にゅい 〉も退屈しないで済みますね」
にゅい
「にゅい!!」
セロフィート
「日頃の鬱憤を発散させる為にも、喧嘩相手も必要ですよ。
フィンは〈 妖精 〉ですし、手加減不要な相手です。
大事になさい」
にゅい
「にゅ〜……にゅい〜」
セロフィート
「〈 にゅい 〉と対等に喧嘩の出来る相手は、フィンしか居ませんよ。
諦めなさい」
にゅい
「にゅい〜……」
セロフィート
「ふふふ。
良い子です」
マオ専用の抱き枕に徹している〈 にゅい 〉を、セロフィートは優しい眼差しで、にこやかに見詰めた。
〈 にゅい 〉に掛かっている黒髪に目を向ける。
スヤスヤと寝息を立てて眠っているマオの黒髪を女性の様に長く、細く、滑らかな指で撫でた。
セロフィートがマオの髪を一撫でする間に、室内の惨状は元の状態に戻っていた。
セロフィート
「ワタシの居ない時は〈 結界魔法 〉を張れません。
フィンと喧嘩をしてはいけませんよ」
にゅい
「にゅにゅい〜」
セロフィート
「フィンも〈 結界魔法 〉は張れません。
フィンと喧嘩をするのは、ワタシの居る時だけにしなさい」
にゅい
「にゅい〜〜……」
セロフィート
「マオを困らせてはいけません。
良いですね」
にゅい
「にゅい……」
セロフィート
「良い子です」
聞き分けの良い〈 にゅい 〉に手を伸ばすと、指で優しく撫でてあげた。
にゅい
「にゅい〜〜〜〜(////)」
〈 創造主 〉から撫でられた〈 にゅい 〉は、嬉しそうに鳴いた。
〈 にゅい 〉は御機嫌になり、大好きな歌を歌い始めた。
『 歌を歌う 』と言っても『 にゅい 』しか鳴けない為、『 にゅい 』を駆使した歌になる。
抱き枕がリズムを取りながら『 にゅいにゅい 』と歌う様子は、何とも奇妙な光景である。
歌っている嬉しそうな〈 にゅい 〉を見詰めるセロフィートの眼差しは優しい。
セロフィートは微笑みながら、可愛い〈 にゅい 〉の歌に耳を傾けるのだった。
◎ セロフィートも〈 にゅい 〉に優しい時はあります。
◎ 「 鬱憤を発散しないといけない〈 賢者の石 〉って何だよ? 」と思いましたが、『 生きているから 』という理由にしました。
◎ フィンフィレイナも八つ当たりする相手がマオだと手加減をしないといけないので、手加減をせず全力で八つ当たりの出来る〈 にゅい 〉が居て丁度良いと思いました。
〈 にゅい 〉とフィンフィレイナの関係はWin‐Winですね。




