3.老剣士が1人
《 広間 》に1人残されたクリッキスチタルは、再び『 ふぅ〜〜〜〜 』と大きな溜め息を吐いた。
〈 超越マギタ( 魔法使い ) 〉に続き、フィンフィレイナからの話しは、脅しなのか、善意から来る親切で教えてくれたのか、クリッキスチタルは判断に暫く悩んでいた。
知り得なかった情報を幾つか知れた事は、有難い事ではある。
貴重な情報を交えつつの牽制だったのかも知れない。
クリッキスチタルはティーポットの取っ手を持ち、空になっているティーカップの中に紅茶を注いだ。
淹れ立ての紅茶を1人で味わう。
今迄に飲んだ紅茶の中で、間違いなく1番の美味しさだ。
≪ エルゼシア大陸 ≫に1人しか居ないと言われている〈 紅茶ランク 〉の頂点に君臨する〈 紅茶エスター 〉の紅茶すらも凌いでしまう程の美味な味だ。
確か〈 紅茶エスター 〉の名前は、エルティンコット・アップスホートだっただろうか。
生憎クリッキスチタルは、紅茶は飲むが、紅茶には詳しくなかった。
紅茶に詳しいのは、〈 木剣騎士団 〉の〈 木騎総団長 〉のコペルチャセフィス・ラブレボスではなかったか。
確かそんな気がした。
≪ エルゼシア大陸 ≫に12人居ると言われている〈 紅茶ランク 〉の8位である〈 紅茶師範 〉だったと思う。
然し、其は20数年も前の事だ。
現在は〈 紅茶ランク 〉が上がっているかも知れないし、〈 紅茶エスター 〉も変わっているかも知れない。
クリッキスチタル
「──そう言えば、『 他の種類の紅茶も飲める 』と言っていたな。
何れ、一杯ずつ飲んでみるとするかな……」
ソファーから腰を浮かして立ち上がったクリッキスチタルは、盆にティーポットと2人分のティーカップとソーサーを載せると《 広間 》を出た。
──*──*──*── 食堂
《 食堂 》のディシャップカウンターの前へ行くと、幾つかのティーポットが並んでいた。
盆に載せているティーポットを並んでいるティーポットの横に戻す。
フィンフィレイナが使っていたソーサーとティーカップを持つと、《 厨房 》へ入った。
──*──*──*── 厨房
流し台の前に立つと、流し台の中には水が張ってある。
流し台の中に張られている水は、唯の水のではなかった。
水の中に汚れた食器,食具,調理器具等を浸け置きしておくと、勝手に汚れを分解してくれるのだ。
態態、洗剤を使い、スポンジで食器,食具,調理器具等を洗う必要がない。
汚れが分解され、綺麗になった食器,食具,調理器具等は、水の中から出すと、自然に乾いてくれる為、いちいち清潔な布巾で拭く必要がなく、其のまま片付ける事が出来る。
食事後の後片付けは、かなり楽なのである。
汚れを分解した水は汚れず、常に清潔を保っている。
勿論、飲み水ではない為、飲むのは厳禁なのだが、誤って顔に掛かり、目の中に入ったり、口の中に入ったりしても、身体への害はない仕様になっている。
クリッキスチタルは、手に持っているソーサーとティーカップを水の中に静かに入れる。
クリッキスチタル
「此も〈 超越魔法 〉の成せる業なのか……」
手ぶらになったクリッキスチタルは《 厨房 》から出ると《 食堂 》へ戻った。
──*──*──*── 食堂
再びディシャップカウンターの前に立ったクリッキスチタルは、自分が使っているティーカップに紅茶を注ぐ事にした。
全てのティーポットの中に入っている紅茶を試し飲みしたクリッキスチタルは、満足そうな顔で《 食堂 》を出た。
──*──*──*── 廊下
廊下を歩き《 洗面脱衣場 》へ向かったクリッキスチタルは、再度温泉へ入ってから《 宿泊室 》で休む事にしたのだった。




