3.超越魔法使いと老剣士 2
セロフィート
「≪ 王都 ≫は惜しい人材を3名も失いました。
ラオスインダストが〈 光剣騎士団 〉を退団しなければ、アルソリュンドが≪ 都 ≫の〈 領主 〉になる事も、マフィテリオットが〈 情報屋 〉へ転職する事もなかったでしょう。
3名の中の誰かが貴方の後継者として〈 光剣騎士団 〉を纏める総団長になっていた筈です。
貴方も今頃はユグナダールトと共に≪ 王都 ≫で隠居生活を満喫していたでしょうに…」
クリッキスチタル
「夢の様な話ですな…。
ユグナダールトも簡単には隠居させてはもらえますまい」
セロフィート
「〈 風剣騎士団 〉の後継者に相応しい剣士を育てているそうですね。
貴方はどうです?
〈 光剣騎士団 〉の後継者に相応しい剣士は育っていますか?」
クリッキスチタル
「なかなか難しいですな…」
セロフィート
「そうでしょうね。
時代も変わりましたし。
マオは諦めてくださいね」
クリッキスチタル
「………………マオ殿には其だけの実力があると申されますかな?」
セロフィート
「どうでしょう?
判断は貴方がしてください。
剣を交えれば分かるのでしょう?」
クリッキスチタル
「……そうですな。
早速、明日から始めるとしましょう…」
セロフィート
「お願いします。
クリッキスチタルさん」
セロフィートはクリッキスチタルに、にこり…と優しい笑顔を向けたが、クリッキスチタルは背筋がゾクリ──と凍った感覚がした。
未だ自分が20歳を迎える前、《 バセリナ城 》の城内で不覚にも迷ってしまった際に偶偶行き着いた先の《 庭園 》に、此の美し過ぎる美麗な〈 吟遊詩人 〉が居たのだ。
当時と全く変わらない姿で、クリッキスチタルの目の前に上品に座り、紅茶を飲んでいる。
初めて〈 吟遊詩人 〉を見た時は女性の〈 吟遊詩人 〉かと思った。
聞こえて来た詩歌を聞いても性別の判断が出来ない程の中性的な声色で、結局最後迄〈 吟遊詩人 〉の性別は分からず仕舞いだった。
偶偶迷い込んでしまった《 庭園 》は、彼の1度限りしか見た事がない。
数年も掛けて密かに城内を探し回ったが、花の咲き乱れた美しい《 庭園 》を見付ける事は結局出来なかった。
どんなに目を凝らして城内の見取り図を何度見ても、彼の美しい《 庭園 》は無かった。
抑、城内には《 庭園 》自体が存在しなかったのだ。
存在しない筈の《 庭園 》────。
其処で美しい声色で詩歌を歌っていた美しい〈 吟遊詩人 〉は、疲れ過ぎて見えただけの幻だったのか──。
諦めてしまおうかと思う様になり、胸の内に仕舞い、忘れたフリをして10年過ごした。
30歳を過ぎた頃、城内で再び〈 吟遊詩人 〉の姿を見た。
今度は1人ではなく、友であるユグナダールトも居た。
同期の同僚達も居た。
≪ 王都 ≫の建国祭を〈 陸民 〉総出で盛大に祝う其の場で、クリッキスチタルの目の前に居る〈 吟遊詩人 〉は、祝福の詩歌を歌った。
其れは其れは見事な詩歌だったと思う。
〈 吟遊詩人 〉は山程居たが、目の前の〈 吟遊詩人 〉だけは何故だか『 特別 』だと強く感じたものだ。
魂が歓喜に打ち震える感覚に陥った事を、ふと──思い出した。
クリッキスチタル
「──私は貴殿の詩歌を2度聞きました。
1度目は美しい花の咲き乱れた美しい《 庭園 》です…。
2度目は10年後の ≪ 王都 ≫の建国祭です。
貴殿の祝福の詩歌は素晴らしかった……」
セロフィート
「其はどうも。
貴方は《 庭園 》へ迷い込んだ事があるのですね…。
貴方とは並並ならぬ縁がある──と思ってましたけど、そうですか…。
理由が分かりました」
クリッキスチタル
「お聞きしても宜しいですかな?」
セロフィート
「どうぞ」
クリッキスチタル
「私は彼の美しい《 庭園 》を数年も掛けて探しました…。
ですが、城内の何処を探しても見付ける事が出来ませんでした…。
何故なのでしょうか……」
セロフィート
「《 バセリナ城 》には《 庭園 》が無かったですからね。
一時的にワタシが作り出しました。
見付からないのは当然です」
セロフィートはクリッキスチタルを知りませんが、クリッキスチタルはセロフィートを知っている事にしました。
クリッキスチタルは、セロフィートの名前を知りません。
マオがセロフィートの事を「 セロ 」と呼んでますが「 セロッタ 」から取っていると思っています。




