3.宿屋 2
──*──*──*── 食堂
マオが《 食堂 》へ行くと食卓の上には、先程よりも沢山の料理が並べられていた。
昨晩、夕食を食べた時に使った四角い食卓ではなく、大きくて長い食卓に変わっていた。
幾つもあった四角い食卓をくっ付けて大きな食卓にしたのだろうか。
椅子は昨晩も使った《 食堂 》の椅子を使用しているのだから、きっとそうなのだろう。
上品で清潔感のある白いテーブルシーツの端はレースになっており、お洒落だ。
剥いていない美味しそうな果物と茎の無い美しい花は、飾りなのだろう。
食卓の上に置かれている盃風の硝子皿の上に載せられていた。
仄かに甘い香りがマオの鼻を擽る。
マオ
「凄い量の御馳走だな〜〜。
全部セロの手料理なのか?」
セロフィート
「ふふふ。
そう思います?」
マオ
「えっ……違うの??」
セロフィート
「〈 テフ( 原質の源 ) 〉を構成して作った料理です。
ワタシは食卓へ運んだだけです」
マオ
「あ〜〜〜……そうなんだ……」
セロフィート
「ガッカリしました?」
マオ
「うん……。
一寸だけな!!」
セロフィート
「拗ねないでください、マオ。
後でマオだけに作ってあげます。
機嫌、直してください。
此でも食べて──、ね?」
拗ねるマオを『 可愛い 』と思いながら、飾りで置いてある花を1つ取ると、マオに差し出した。
マオ
「『 ね? 』って言われてもな〜〜。
其、花じゃんか!
『 食用の花で〜〜す 』とか言うんだろ!
サラダの付け合わせか何かだろ?」
セロフィート
「違いま〜〜〜す。
残念でした。
此の花は全部、砂糖菓子です。
甘さ控えめの健康に良くて、虫歯にもならない砂糖菓子です。
料理にも使えますし、此のまま食べる事も出来ます」
マオ
「砂糖菓子??
此が??
どっからどう見ても本物の花みたいに見えるけど??」
セロフィート
「ふふふ。
口に入れてみたら分かります。
3色の食紅を使って色付けしました」
マオ
「マジかよ……。
砂糖菓子職人も真っ青になる出来だな……」
セロフィートから渡された砂糖菓子を口に入れて食べてみる。
マオ
「──ん?!
食感は砂糖菓子そのものなのに、ほんのり砂糖味がする。
あっさりしてて、ベタつかないし──、此、食べ易い!!」
セロフィート
「気に入ってくれました?」
マオ
「うん♪
何個でも食べれちゃうよ!」
セロフィート
「ふふふ。
嬉しいです」
マオ
「此、クリッキスチタルさんにも食べてもらいたい♪♪」
セロフィート
「…………………………。
気に入ってもらえるといいですけど……」
マオ
「何弱気な事、言うんだよ。
あっさりしてるし、食べ易いから大丈夫だよ。
健康にも良いんだろ?
きっと好きになってくれるよ!」
イキイキとして嬉しそうなマオを前にして、ちょびっとだけ複雑な思いのセロフィートは、ニコリ…と笑みを浮かべるしかなかった。
マオ
「──セロ、此の四角くて薄いのと丸くて薄いのは何だ?」
セロフィート
「四角くて薄いのはクラッカーです。
丸くて薄いのはリッツと言います」
マオ
「クラッカー??
彼の…食べたらモサモサする味気無いヤツか?」
セロフィート
「此処にあるクラッカーもリッツもモサモサしません」
マオ
「そうなのか?
食べてみていい?」
セロフィート
「はいはい」
セロフィートは手に取った小皿の上にクラッカーとリッツを載せる。
セロフィート
「どうぞ。
食べてみてください」
にこり…と微笑んだセロフィートは、小皿をマオへ手渡した。
マオ
「有難、セロ」
小皿を受け取ったマオは、先にクラッカーを食べ、次にリッツを食べた。
マオ
「──ん??
どっちもモサモサしてない!
サックリしてて食べ易い!
口当たりが軽いから、何枚でも食べれちゃうよ!」
セロフィート
「其のままなら、おやつ感覚で食べれますけど、カナッペにしても美味しいです」
マオ
「カナッペ??」
セロフィート
「特別なナイフを使います」
マオ
「特別なナイフ??」
セロフィート
「そうです。
切る,塗る,盛る,くり抜く…と多彩に使える便利なスパチュラーナイフです。
此のスパチュラーナイフを使って、クラッカーやリッツの上にバター,クリーム,ジャム類を塗ったり、具を載せて食べます。
一口サイズで食べれますし、いろんな具を載せる事で多彩な味を楽しめます」
マオ
「へぇ〜〜。
自分で具を選べるんだ?
楽しそう!
具が載ってるクラッカーとリッツもあるんだな。
こんだけあるとカナッペだけで、お腹一杯になっちゃいそうだな〜〜」
セロフィート
「マオ、コートは脱いで大丈夫ですよ。
《 宿泊室 》に置いて来てください」
マオ
「うん(////)
──あっ!
そう言えばさ、何でセロは、オレと一緒に来た人達が、〈 光剣騎士団 〉だって事を知ってたんだ?
オレ、セロに教えてないよな?」
セロフィート
「フィンから聞きました」
マオ
「フィンに会えたんだ!」
セロフィート
「今は《 宿泊室 》で休んでますよ」
クラッカーもリッツも名前は知ってるけど、食べた事はありません。
「 モサモサしてる 」は、あくまでイメージです。
舞台の時代が時代なので「 モサモサしている 」の表現は大目に見ていただきたいと思います。
「 カナッペ 」食べてみたいな……。




