♪ 2.宿泊室(夜) 3
〈 にゅい 〉にとって唯一無二の絶対主である〈 創造主 〉に口止めと容赦のない死刑宣告をされた〈 にゅい 〉は、弱弱しい声を出すと、項垂れるのだった。
セロフィート
「ふふふ。
良い子ですよ、〈 にゅい 〉。
何時迄もワタシに忠実な〈 賢者の石 〉でいなさい」
にゅい
「にゅ…にゅい〜……」
〈 創造主 〉に絶対服従の〈 にゅい 〉は、逆らう事が出来ないのだった。
セロフィートは折り畳まれたままの朝刊と夕刊をテーブルの上に置いた。
両新聞を読む気等、セロフィートには更更なかった。
ベッドをソファー代わりに使い、静かにベッドの上に腰を下ろして座ると、昨夜と同様に〈 古代魔法 〉を発動させた。
宙に現れた〈 魔法陣 〉の真ん中に、街中が映し出されている。
街中は、何時もと代わらず、シンッ──と静まり返っている。
今朝、話題となった事件の所為もあり、安全の為に外を出歩く様な街民は人っ子一人居ない。
至極当たり前な街民達の行動に、セロフィートは詰まらなそうな表情をした。
此では、昨夜の様に故意に被害を出さなければならないではないか!!!!
セロフィートは今夜は何処を『 UMA 』に襲わせようかと考えながら街中を、絶好の餌場となりそうな場所を探した。
セロフィート
「襲われるならば当然の事……、人気の多い場所が最適です。
さて、≪ 街 ≫の中で現在、最も人間が集中している場所は何処でしょう?
〈 にゅい 〉、お前は何処を餌場に選びます?」
にゅい
「にゅい?!
…………にゅ、にゅ〜い……にゅい…」
セロフィート
「おや?
冴えてますね、〈 にゅい 〉。
お前の意見を採用しましょう」
にゅい
「にゅい〜……」
セロフィート
「気が進みませんか。
優しいですね、お前は。
マオに甘やかされている所為でしょうか?」
にゅい
「にゅ?!
にゅい〜!
にゅい、にゅい、にゅにゅい!
にゅにゅいにゅい!!」
セロフィート
「ふむ?
否定しますか…。
まあ、良いです。
《 宿屋街 》の何処にしましょうね。
どうせならば、手練れた〈 冒険者 〉達や腕の立つ〈 旅人 〉達が多く宿泊している《 宿屋 》にしましょう。
此処の《 宿屋 》から随分と離れてますし、此方が被害を受ける事は先ずないでしょう。
《 地下 》にも広い《 部屋 》がある様ですし。
きっと面白い光景を見る事が出来ます。
楽しみです。
〈 にゅい 〉、お前も早く見たいでしょう?」
にゅい
「にゅ……にゅい〜……にゅいにゅい…」
セロフィート
「ふふふ…宜しい。
では早速始めましょう」
セロフィートが〈 古代魔法 〉を発動させると、標的にした《 宿屋 》の上空に昨夜の『 UMA 』が現れた。
現れたからといって、『 UMA 』の姿は、特殊な〈 魔法陣 〉によって守られている為、誰にも見えない。
勿論、初代人形 〜 現人形と〈 契約 〉している者達にも見えない仕様となっている。
〈 魔法陣 〉の中に居る『 UMA 』は、静かな眠りに就いていた。
セロフィート
「此の高さから落とせば嫌でも目を覚ますでしょう。
其に、此の程度の高さから落ちても無傷でしょうし。
気が立っていれば、激しく大暴れしてくれるかも知れません」
物騒な事を平然と言いながら、セロフィートは丈夫な煉瓦で作られた壁を破壊する為の〈 古代魔法 〉を発動させた。
《 宿屋 》の壁側と屋根の上に〈 魔法陣 〉が現れる。
《 宿屋 》へ『 UMA 』を投下する前に、セロフィートは眠っている『 UMA 』を起こす事にした。
〈 魔法陣 〉の中に水を溜めると、バチバチと電気を走らせた。
眠っていた『 UMA 』は感電した。
感電した『 UMA 』は目を覚ますと、〈 魔法陣 〉の中で暴れ始めた。
〈 魔法陣 〉の中に溜まっていた水は既に消えており、『 UMA 』の体も乾いている。
過激で乱暴に起こされた『 UMA 』の機嫌は頗る悪い。
〈 魔法陣 〉の色が変わると、派手な爆発音が《 宿屋 》を襲った。
《 宿屋 》に大きな穴が開いたのを確認したセロフィートは、一切の躊躇も迷もいなく、『 UMA 』を《 宿屋 》へ投下したのだった。




