♥ 別行動
ドアの鍵は掛けない。
態々鍵を掛けなくても良いのは楽チンだ。
マオは室内を見回してみた。
フィンフィレイナの姿がない。
未だ浴場で温泉に浸かりながら貸し切り状態の温泉を1人で満喫しているのだろうか?
マオ
「 フィンが居ないな……。
にゅい、フィンを見てないか? 」
ずっと宿泊室に居て留守番をしていたであろうにゅいに声を掛けて聞いてみた。
賢者の石:にゅい
「 に゛ゅ〜〜い゛〜〜〜〜?? 」
肝心のにゅいはと言えば、テーブルの上でぐってぇ〜〜〜〜とだらしなく平ぺったく伸びていた。
下手をすれば蒼色のテーブルクロスに見間違えてしまいそうな広がりようだ。
マオ
「 にゅい……。
待たせ過ぎちゃって御免な……。
待ちくたびれちゃったんだよな?
悪かったよ 」
賢者の石:にゅい
「 に゛ゅ〜〜〜い゛〜〜〜〜?? 」
マオに忘れ去れてしまっていたにゅいは、すっかり不貞腐れてしまい、力の抜けたように鳴いて返事をした。
まるで炭酸が抜けてしまい不味くなってしまった温いるコーラのようである。
マオ
「 にゅい〜〜〜、御免っ!
大好きだよ 」
ダラダラ気味のにゅいを両手で持ち上げたマオは、ペタンコになっているにゅいを抱きしめた。
触り心地の好いにゅいに頬擦りをすると、唇を軽く当て、チュッと触れるような口付けをしてみた。
賢者の石:にゅい
「 に゛ゅっ?!
にゅい〜〜〜〜(////)
にゅいっにゅいっにゅい〜〜〜(////)」
頬擦りだけでなく、口付け迄されたにゅいの機嫌は瞬時に直った。
平ぺったかった姿も、何時もの姿に戻っていた。
にゅいは目には見えないハートを四方八方へ飛ばしながら、蒼くて小さな体でマオの頬をスリスリしていた。
マオ
「 ハハッ(////)
擽ったいよ、にゅい!
( 機嫌、直ってくれたみたいだな。
良かった〜〜 )
≪ ダンジョン ≫へはにゅいとオレだけで行く事になったんだ。
2人で頑張ろうな! 」
賢者の石:にゅい
「 にゅい〜〜〜(////)」
にゅいはマオの肩の上へ嬉しそうにジャンプした。
マオ
「( 可愛いなぁ〜〜〜。
にゅいは癒しだよな〜〜。
賢者の石を作ってくれたセロに感謝だよな!! )」
マオは壁の隅に立て掛けてある武器を手に取ると装備した。
セロフィートと一緒に武器屋へ行き、買った中剣,短剣,刀剣である。
長剣にしようとしたが、身長の低いマオには扱いが難しい事もあり、致し方無く諦めたのだった。
セロフィート
「 マオ、何時でも≪ ダンジョン ≫へ行けるようにしときました 」
マオ
「 セロ!
有り難な!
用事が終わったらさ、セロも来てよ。
なぁ、いいだろ? 」
≪ ダンジョン ≫の出入り口となる魔法陣を出してくれたセロフィートの腰に抱き付いたマオは、駄目元で甘えてみた。
セロフィート
「 はいはい。
気が向いたら顔を出しましょう 」
マオ
「 何だよ〜〜。
『 気が向いたら 』ってぇ〜〜!
気が向かなくても来てくれよ!
オレはセロと一緒に居たいの!! 」
セロフィート
「 ………………。
分かりました。
考えときます 」
マオ
「 ちょっ……。
もう〜〜、何だよ!
『 考えときます 』ってぇ!!
考えなくていいから、来るの!! 」
セロフィート
「 マオは我が儘さんですね… 」
マオ
「 『 来る 』って約束してくれる迄は離れないんだからな!! 」
セロフィート
「 マオ…… 」
腰から離れず、我が儘を言いうマオの態度に困ってしまったセロフィートは、クスリ…と静かに笑う。
マオの頭に手を軽く置くと、頭を優しく撫でてあげた。
マオ
「 〜〜〜(////)
頭を撫でて誤魔化そうとしても駄目だからな! 」
セロフィート
「 誤魔化してません。
…………仕方無いですね…。
≪ 街 ≫から戻ったら、マオと合流します。
それで良いです? 」
マオ
「 うん!
来てくれるならいいよ(////)」
満足したマオは、セロフィートの腰から離れた。
マオはにゅいを肩に乗せたまま、≪ ダンジョン ≫へ行く為に魔法陣の中へ入った。
ポウッ──と魔法陣が光り、マオとにゅいの姿が宿泊室から消えた。
マオとにゅいを見送ったセロフィートは、《 画廊喫茶 》に使えそうな物件を探す為に魔法陣の中へ入る。
ポウッ──と魔法陣が光ると宿泊室からセロフィートの姿が消えた。