セロフィート
「 はい♪
マオ、壁を見てください 」
マオ
「 う、うん… 」
セロフィートに言われたマオは素直に壁を見る事にした。
マオが先ず目を向けたのは、右側の壁だ。
飾り気のない真っ白だった壁には、小さい額に入れられた絵画が12点程掛けられていた。
マオは芸術品に対する知識はないに等しく、御世辞にも絵心に関してはズギャギャンで、あるとは言えない。
芸術品を愛でる機会のない環境で育った事もあり、本物と偽物の区別も付かない。
見る目が養われていない事もあり、作品の価値や素晴らしさも全く分からない。
そんなマオでも、好感の持てそうな絵画が壁には掛けられていた。
更にマオは後ろの壁にも目を向けてみる。
中ぐらいの額に入った絵画が10点程掛けられていた。
マオ
「 はぁ〜〜〜……。
何か食堂の雰囲気が、ガラッと変わった気がする……。
良いかも! 」
セロフィート
「 マオに気に入ってもらえて、ワタシも嬉しいです 」
マオ
「 描かれてる絵の何が良いのかサッパリだけどな〜〜…… 」
セロフィート
「 ふふふ。
安心してください、マオ。
ワタシにもサッパリです 」
大嘘吐きだった。
歴代の先代達の中には芸術品や美術品,絵画にも詳しい先代も居た。
セロフィートには知識があり、真作だけを見極める目も持っていた。
真作と区別の出来ない贋作すら簡単に作り出せてしまう程の腕を持っている。
本画を複写する訳ではないので、分かり易い場所に名前と番号を必ず書き入れるのが、先代達である人形流の方法である。
セロフィートの手に掛かれば、高性能な贋札すらも容易く作れてしまうのだ。
〈 原質の源 〉を構成すれば、本画を大量生産する事が可能なセロフィートにとって、贋作や贋札を作る事は面倒な作業である為、未だ手を出してはいない。
犯罪者達から崇拝され、拝まれ、 “ 犯罪の神 ” と呼ばれたとしても何等おかしくないセロフィートが、マオの目の前に居るのだ。
マオ
「 そうなんだ?
セロだったら、詳しそうな感じがしたんだけどな…。
オレと同じなんだ?
嬉しいな(////)
──ところでさ、1ヵ月経ったら、この絵画はどうするんだ?
凍ってる美術館に戻すのか? 」
セロフィート
「 まさか。
そんな勿体無い事しません。
残さず全ていただきます。
立ち寄った≪ 街 ≫で小さな《 画廊喫茶 》を開いて、稼ぐのも良いですね 」
マオ
「 マジかよ……。
入場料を取って、タダ同然で手に入れた絵画を売っちゃうのか?? 」
セロフィート
「 勿論です。
その為の《 画廊喫茶 》です 」
マオ
「 …………じゃあさ、1階に展示してる絵画を見た光剣騎士団の皆さんがさ、『 絵が気に入ったから欲しい 』って言って来たら、あげちゃうのか? 」
セロフィート
「 勿論です。
高値で売ります。
本画を売るわけではないですよ。
売るのは複写した絵画です。
歴史的価値を売買するだけですし、本画の半値程から売り出し始めるのが妥当でしょう 」
マオ
「 複写??
贋作って事?? 」
セロフィート
「 まさか。
甚も簡単に本画を大量生産出来るのに態々手間の掛かる贋作を描くわけないでしょう 」
マオ
「 ………………。
なぁ、セロ…。
犯罪の匂いがプンプンするのは、オレの気の所為なのかな?? 」
セロフィート
「 そうですね。
気の所為です 」
セロフィートは至極最もだとでもいうかの如く、「 これでもか! 」という程の真顔でドキッパリと答えた。
マオ
「 ……………………。
で、でもさ…本画を大量生産なんて事したら、大混乱になるんじゃないのか?? 」
セロフィート
「 裏側に “ 複写 ” である事と番号を明記してますし、犯罪になりません。
仮に複写が悪用されたとしても、持ち主が犯罪者となります。
複写を販売したワタシ達は無関係です。
それに複写の販売は何処の画廊でもしてます。
マオとワタシが販売する複写しゃ品ひんは他ほかの複ふく写しゃコピーと違ちがって高こう画が質しつです。
少しょう少しょう高たか値ねで販はん売ばいしても文もん句くクレームは言いわれません。
安あん心しんしてください 」
マオ
「 ……………………。
文もん句くクレームを言いわれたらどうするんだ? 」
セロフィート
「 売うらなければ良よいだけです。
『 高こう額がくで買かい取とりたい 』と言いう愛あい好こう家かは多おおいですし、一いち々いち文もん句くクレームを言いう客きゃくの相あい手てを無ム理リにする必ひつ要ようはないです 」