♥ 初めての釜料理 3
セロフィート
「 窯を使わない時は、上下の摘まみを0に戻すだけで良いです 」
マオ
「 焼け具合を見ながら判断するんだな。
使い易い窯で助かるけどさ、どういう仕組みになってるんだ? 」
セロフィート
「 マオ、気になっても其処は敢えてスルーしてください。
常識的な大人の “ たしなみ ” というものです 」
マオ
「 そ、そうなの?
そういうもんなのか?? 」
セロフィート
「 そうです。
“ 大人の事情 ” を察する事は世界に共通する大人としての礼儀,暗黙のルールです。
大人ならば、決して忘れてはいけない必要な優しさです 」
マオ
「 ……………………。
そ…そうなんだ……。
分かったよ。
気にはなるけど……、窯の仕組みについては詮索しないよ 」
セロフィート
「 そうしてください。
そろそろ、焼き上がります 」
マオ
「 楽しみだな〜〜〜。
甘い香りがして来た! 」
セロフィート
「 マオ、パエリア鍋を取り出してみます? 」
マオ
「 うん! 」
セロフィート
「 ミトンです。
火傷しないように気を付けてください 」
マオ
「 ありがと、セロ(////)」
セロフィート
「 マオ、パエリア鍋は熱いです。
窯の中に手を入れるわけにもいきません。
窯からピザを出し入れする際に使うピールです。
ピールの上に上手くパエリア鍋を載せて、窯から出してください 」
マオ
「 分かった 」
セロフィートから手渡されたピールを使い、マオはパエリア鍋を窯から取り出す事になった。
──*──*──*── 食堂
──*──*──*── ティータイム中
セロフィートが作った窯スイーツ “ 林檎のお菓子 ” を紅茶と一緒に味わいながら、マオは満面の笑みで、林檎のお菓子を頬張っていた。
マオ
「 セロ!
これ、凄く美味しいよっ!! 」
セロフィート
「 ふふふ。
マオの口に合って嬉しいです 」
マオ
「 オレにも簡単に作れそうなスイーツだな!
クリッキスチタルさんは、こういう甘いお菓子は好きかな? 」
セロフィート
「 はい?
マオ……まさか、クリッキスチタルさんに作る気です? 」
マオ
「 うん。
そうだけど?
明日から剣術の稽古を直々に付けてもらうわけだしさ、手ぶらじゃ失礼だろ? 」
セロフィート
「 何もマオが作らなくても良いでしょう 」
マオ
「 何言ってんだよ?
オレが稽古を付けてもらうんだぞ。
オレが作らないと意味ないだろ? 」
セロフィートに作り方を教えてもらったマオは作る満々だ。
これにはセロフィートも面白くなさそうな表情をする。
とは言っても、セロフィートの表情の微々たる変化をマオが気付く事はない。
人形の些細な表情の変化に気付ける者は存在しないのである。
セロフィート
「 マオ、クリッキスチタルさんへ渡すのは1切れにしてください 」
マオ
「 それこそ何言ってんだよ!
1切れなんて少な過ぎるだろ!!
失礼だよ! 」
セロフィート
「 駄目…です?
クリッキスチタルさんへのお礼は、マオの “ 保護者 ” のワタシが作ります。
マオはワタシにだけ作ってください 」
マオ
「 何でセロはオレの邪魔するんだよ〜〜 」
セロフィート
「 邪魔等してません。
他人に手料理を振る舞わないでほしいだけです 」
マオ
「 セロ……(////)
別に誰彼に振る舞うわけじゃないしさ。
大目に見てよ 」
セロフィート
「 ………………。
クリッキスチタルさんだけです。
それ以外の人は駄目です。
良いです? 」
マオ
「 分かったよ。
クリッキスチタルさんだけにするよ。
有り難な、セロ!!(////)」
セロフィート
「 どう致しまして…… 」
セロフィートから許可が出てマオは上機嫌になった。
マオ
「 ──よし!
じゃあ、明日のサンドイッチは奮発しちゃうからな!
今からサンドイッチ用のパンを作るよ 」
セロフィート
「 はいはい。
好きなだけどうぞ。
ワタシは宿泊室へ戻ります 」
マオ
「 セロ??
どうしたんだよ? 」
セロフィート
「 どうもしません 」
マオ
「 もしかして……、怒ってるのか? 」
セロフィート
「 何故です? 」
マオ
「 何故って……。
オレがセロ以外に料理を作るから──だよな? 」
セロフィート
「 そう思います? 」
マオ
「 機嫌直してよ 」
セロフィート
「 クリッキスチタルさんに作りたいのでしょう? 」
マオ
「 ………………うん… 」
セロフィート
「 精々美味しいスイーツを作ってください 」
椅子から腰を浮かせ立ち上がったセロフィートは、マオの顔を見る事なく食堂を出て行った。
マオ
「 ──っ、セロ!! 」
慌てて椅子から腰を浮かせて立ち上がったマオは、セロフィートの後を追った。
然し、既にセロフィートは階段を上がってしまっていた。
マオ
「 ………………セロぉ……。
( ……怒ってるって事は、それだけオレの事を思ってくれてる──って事でいいんだよな??
オレ、セロに思われてる!!
あのセロがオレを……フヘヘヘ(////)
明日はボリュームたっぷりのサンドイッチを作って、セロを驚かせてやるんだ!!
セロから相手にしてもらえなくても、明日の朝食まで は我慢しよ…… )」
空になったパエリア鍋の中に、使わなくなったケーキナイフ,ティーカップ,ソーサー,ケーキ皿,フォークを入れるとパエリア鍋を両手で持ち、厨房へ入った。
◎ パエリア鍋の重さを知りません。
ピールにパエリア鍋を乗せても大丈夫なのかも分かりません。
パエリア鍋の重さに耐えきれずに、バキッと折れてしまわないか心配です。
そもそも、持ち上げられるのか──。
ですが、これはファンタジーなので大丈夫なのです!
マオは意外と腕力があるので、持ててしまうのでした。