02話 愛犬、いや愛剣になります。
「タツヤ。では改めて、魔剣の君に頼みたいことがある。我々の村にはとある脅威が襲ってきている。東の森のベヒモスだ。ことのきっかけは2週間前………………」
ユリウスはその後30分ほど、途切れることなく話し始めた。長いわ! 話下手か! てか、途中嫁自慢が5分くらいあった気がする。
あんな長い話を書いてしまうと、読者が飽きてしまうので俺が要約しよう。
東の森の奥地に、洞窟がある。そして、そこにはベヒモスという巨大なドラゴンがすんでいる。ベヒモスは森の動物たちを主食としていて、今までこの村までやってくることはなかったのだが、2週間ほど前から突然、夜この村に来て人を襲うようになった。しかし、村にはベヒモスを倒せるほどの実力者はいない。だから、魔剣をつくった。んで、その魔剣が俺だから、力を貸せってことらしい。
なるほどな……。それは大変だ。ドラゴンなんて勝てる気がしないもんな。このピンチに力を貸さなければ人でなしだ。
「断る」
「「「え?」」」はもるおっさんたち。
一話でもはもってたよな。仲良しか! だち○うくらぶみたいなおっさんたちだな。
「なぜだ。こちらの失敗は許してくれたんだろう?」
「それとこれとは別だ。協力してやる筋合いはない。」
そうだ。力を貸さなければ人でなしだが、俺すでに人じゃないしな。
この世界に呼んでくれたことには感謝してるが、正直面倒なのはごめんだ。使い手がこんなおっさんたちだと、いくら魔剣でも折られるかもしんないしな。
それにほら、手汗とかべたべたしそうだし。
おっさんたちが会議を始める。「どうする。」「これじゃ村が……」「もう一度頭を下げよう」うむ、我に頭を垂れるが良い。何度頼まれても断るがな!
「いやまて、相手は魔剣といえどもただの剣。いくら文句を言っても抵抗できないのでは?」
おい待て。最後のやつなんていった?
「「「そうだよな。」」」
「はもるな! 待て! 無理に労働させる気か!
「今日村で話し合って、君の持ち主を決める。明日ここへ連れてくるから、よろしく頼むよ。」
おいユリウス。自分の話は長かったくせに人の話は聞かないのか。
「いや、だから協力は……。」
「いやー本当に助かった!」
「ありがとう。タツヤ!」
「タツヤ、ぐっジョブ。」
「たすかったぜー。」
「い、いやあの……ちょっとまってください。」
おっさんたちは俺の話を聞かずにぞろぞろと去っていく。
「この人でなし!!」
あいつら、俺が文字通り手も足も出ないことをいいことに……いつか絶対呪ってやるからな!
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ちゅんちゅんという小鳥の鳴き声に目を覚ます。空を見ると、身体が雀で頭部がペリカンに似た鳥が飛んでいる。
きも! バランス悪!
異世界に来たんだったか。
にしても、魔剣も眠くなるんだな。ぐっすり寝てしまった。てか、いくら剣だからって屋外に放置はひどくね?
ちらっと、周囲に目をやると。おっさんたちがなにやら会議をしている。
この村には集会所とかないのか? あれか、ベヒモスに壊されたのか。
「ユリウスさん、リズさんには……」
「伝えた。大丈夫。あいつも覚悟は出来ている。」
「対価……本当にあれなんですかね?」
「固有能力から考えて間違いないだろう。」
なんだ、なんだ。俺の使い手の話か? おっさんの手汗べたべた人生は嫌だ。くっそー、魔剣なんだからなんか魔法で抵抗できないのか?
ユリウスが近づいてくる。
おっさんよ吹き飛べ! と念じるが、何もおきない。
「タツヤ、いまからお前の使い手を連れてくる。」
「どうしても、使われなきゃ駄目?」
「どうしても使われなきゃ駄目。」
そんな、無慈悲な……まさか、人の持ち物として生きていくとは……
どんなやつがくるんだろうか。せめてやさしく使ってほしいな。
「つれてきた。」
はや! 早いよ。覚悟できてないよ! くそぅ、やっぱりおっさんのおもちゃにされるのは嫌だあああああ!
ユリウスの後ろに誰かいる。そいつが使い手だろう。結構身長低いな。150cmくらいか? ちびおっさんか。
「リズ、これがお前の剣だ。」
ユリウスに呼ばれ、そいつが顔を覗かせる。どんなおっさんがくるんだと覚悟していたが、現れたのは、水色の長い髪をなびかせた美少女だった。
「やあ! 僕は魔剣デスサイズ! 君を守る剣になるよ!!」
次回からやっと冒険しますよ!
しばらくは、主人公とリズの二人のたびです。
そのあとは……