第3話 メフィスト物語
「突拍子のない事を言われても困ります。あなたが何者なので、なぜこの世界に、どうして来たのか教えてください」
正論を言われて勇者はオドオドしている。目線を下にして何かを模索したかと思えば、上に目線を上げ、何かを思い出すかのように悩んでいる。
「実は・・・」
長い沈黙の後、勇者はゆっくりと口火を切った。
「まずは突然お邪魔してすいません。私はソラシドと申しまして、メフィスト物語の勇者をしております。旅の途中大切な仲間を失ってしまい、行く先の魔物にもまともに戦えず、どうにも出来ず禁断のチートを使い、現実世界へと来ました」
「メフィスト物語ってあの人気RPGゲームの・・・」
「そうあのRPGゲームです。私の顔ご存知ないでしょうか?」
屈託の身体に似合わず、童顔の純粋な眼差し。眉が少しつり上がっているが、銀髪の長い髪がなびいている。(もちろん扇風機の風で)その憎めないキャラクターと操作のしやすさで惹かれたプレイヤーも多いはず。
「まさか、本当にあのソラシドなのか?」
勢いよく立ち上がり、ゲームソフトを立ち上げる。鼓舞する行進曲が流れた後、いつもの画面に出てくるソラシドはそこにはいなかった。
「そうですよ。分かって頂けましたでしょうか? 1350円でどうか魔女退治を」
こいつこんなにも食わせ者だったのか。