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06 目撃――再会と再来2

実際、何ができるだろう?

とりあえず、いろんな人に話を聞くべきだろうか。

あたしの記憶は混乱しているから、人に訊いて再認識したほうがいい。

警察の足跡をなぞるだけかもしれないし、

蒸し返されるのを快く思わない人も多いとは思う。

でも、それでも警察の見落としていることがあったなら。

そうだ、警察の人と接触を持ったほうがいいだろう。

まだ、たまにうちの高校に来るのを見かけることがある。

誠君のほうにも行っているだろう。

警察だって、事件のことを知りたがっているはず。

情報のギブアンドテイク。

あと、お互いの高校に一度行ってみるといいかもしれない。

共通点があるかもしれないし、

逆に共通していると思っていたことが全然違うと分かるかもしれない。

逆の立場になると分かることがあるかもしれない。

それから、それから……


……一般人にできることなんて、それくらいだろうか。

超能力が欲しい。

過去に戻る力が欲しい。

人が何を考えているのか分かる力が欲しい。

いや、人を生き返らせる力が、一番欲しい。

空間を切りとる力なんて要らない。

怪物を作り出す力なんて要らない。

人を殺す力なんて要らない。

強く念じれば、あたしも超能力が使えるようになるのだろうか。

それとも、死に際に念じないと駄目なのだろうか。


……ダメだダメだ。

そんな変なことを考えるんじゃない。

あれは夢だ幻だ。現実なんかじゃないんだ。

じゃあ今の状況は現実なの? 夢や幻じゃないの?

そうだったらどんなにいいことか。

また、気付いたら机で寝ていたなんてことだったらどんなにいいか。


時々分からなくなる。

あたしが今いるのは夢の世界じゃないかって、思うときがある。

でも、感じるこの寒さは、紛れもない現実であることを教えてくれる。

非情な宣告だ。


真面目に考えろ。

論理的に考えろ。

科学的に考えろ。

あたしは数学が苦手だ。英語も苦手だ。漢文も苦手だ。

暗記ならできる。解釈ならできる。論理的な思考が苦手なんだ。

人の心理状態を論理的に考えることなんてできるのだろうか。

それは国語の問題に近い。

状況を把握して、想像して、解釈する。

でも、あたしは現にその場にいたのに、分からない。

先生は、国語も論理だと言っていた。

小説で、登場人物の心情を読み取るのさえも論理だと言っていた。

全ては、論理的に説明できる。


そんなのは、嘘だと思う。

この世界には、論理的な頭の人がいっぱいいる。

なのに、もう1か月以上経つのに、誰も答えを出せていない。

問題は、論理的に求まるから問題なんだ。

それはどの教科だって同じなんだ。

テストの問題は、解けるように作られている。

でも、現実の感情を、論理的に説明することなんかできない。

現実はそんな簡単じゃない。


とは言っても、少なくとも隼人君の事件の一部は説明できると思う。

物理的な謎があるからだ。

そこは、誠君の得意分野だろうし、世間一般の得意分野だろう。

それでも、あたしだからこそ分かることも絶対に無いとは言えない。

考えよう。あたしなりに考えよう。

荒唐無稽だろうと構わない。あたしが納得できる説明を。

あたしにとって「論理的」ならそれでいい。



……いつの間にか、辺りが騒がしくなっていた。

誠君は戻ってきていない。

救急車のサイレンが聞こえた。

頭の中に、黒い霧が立ち込める。

もしかして。もしかしてもしかして。


綾乃ちゃんと隼人君のつながりはほとんど無いと言っていい。

唯一のつながりは、半年前にあの電車に乗ったこと。

もし……そのつながりで……事件が起きているのだとしたら……


誠君も?


飲み物を買いに行っただけにしては遅すぎる。

確かにこの公園内には自動販売機が無い。

景観を損なうからとか何とかで。

でも、それほど遠くまで行かないと無いなんてこともない。

公園はそれほど複雑な構造でもないし、初めての場所じゃないと言っていた。

迷ったなんてこともないだろうし。


立ち上がる。

騒ぎの方向へ行ってみよう。

今からでも遅くはないかもしれない。

そう思ったとき。


「……あ……」

こちらへ向かって、歩いてくる人影が見えた。

それが誠君であることを確認し、あたしは胸を撫で下ろす。

怪我もない、血もついていない。

それどころか、顔はさっきにも増して白かった。

足取りが、ふらついている。


「どうしたの? 何かあった?」

「……さっき、そこで……交通事故があったんだ……」

「……見たの……?」

「……うん、男の人が、急いで走ってきて、交差点でトラックに轢かれた。

 救急車に運ばれていったけど……多分助からないと思う」

「……そっか……」

それは無理もない。事故の瞬間を、間近で見たのだ。

あたしだって、あれから数日は……


そういう意味じゃ、なかった。

誠君が、やっとの思いで口に出す。


「……その人が……轢かれた人が……亜深さんだったんだ……!」


チャリンチャリン

ベンチの下に落ちた小銭を、あたしは拾うことができなかった。

尾崎栄一郎:

誠のクラスメート 父親は教頭

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