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21 標的――誠の真相2

つまり犯人は、その殺したい誰かのために、

関係ない人たちを殺した。

じゃあ、その本当に殺したかったのは誰なのか。

まず、最初と最後の人間は除かれる。

最初はまだ法則がつかめないから、

警察は被害者に恨みを持つ人間を調べるだろう。

そこに自分がいてはならない。

最後も同様だ。

警察は連続殺人が終わった理由を考える。

一番もっともらしいのは、殺したい人物を殺し終えたから。

これまた関係者が調べられる。

そしてさらに、僕と隼人をこれだけ大掛かりなことをしてまで

殺す理由を持つ人物が見当たらない。

だから、一番可能性が高いのは亜深さんなのだ。


実際に僕が目撃したのは亜深さんの事件だから、

そこから考えるのが一番確実かもしれない。

亜深さんは走っていた。

ひどく慌てていた、と思う。

すれ違った僕にも気付かなかった。

そして、道路に飛び出してトラックに轢かれた。

さて、どうやったら亜深さんを殺せる?

轢かれる直前、亜深さんの周りには誰もいなかった。

それは僕が一番知っている。

だから、突き飛ばすなんてことは無理だ。

だったら、トラックの運転手が犯人?

それはない。

故意だろうが過失だろうが、絶対に警察の取調べを受ける。

それで今までの犯罪がばれる危険性は大いにある。

自ら直接手を下すことはできない。


少し見方を変えて、あれは犯人にとっても不測の事態だったとする。

あれは本当に事故だったとする。

じゃあ亜深さんはどうしてあんなに慌てていた?

まるで命を狙われているかのように。


え?


そうか!

亜深さんは、犯人に追われていた。

きっと社長を殺したのもそいつだろう。

だから亜深さんは逃げていた。それで、轢かれてしまった。

犯人にとっては好都合だっただろう。

残念なことに、僕は犯人の姿を見ていない。

だから、犯人が誰なのかは分からない。



この話はこれくらいにして、次に移ろう。

最も不可解なのは、綾乃さんの行動。

彼女が人を殺すなんて、信じられない。

自殺するなんて、信じられない。それは隼人も同じ。

隼人に関しては、目撃者がいない。

だから、隼人も尾崎君も殺されたと考えるのは簡単だ。

密室トリックなんて、いくらでも思いつく。

ドアがガタついていたから、隙間から投げ込むこともできる。

でも、綾乃さんはそうじゃない。

実際にクラスメートを殴って飛び降りたのを、何人も目撃している。

それは何故か?

綾乃さんはそんなことをする人じゃない。

だから、真っ先に疑うべきは、薬物。

人を錯乱状態に陥らせる興奮性薬物を摂取させたのではないか。

綾乃さんから薬物反応が出たか、警察の人から聞き忘れたのは痛手だった。

いや、聞いても答えてくれなかったかもしれないけど。

明日、休み時間にでも電話で訊いてみようか。


凶行が薬物によるものだとしよう。

いや、それしか考えられない。

犯人はそれを、どうやって摂取させたのか。

確実で強力で即効性があるのは静脈注射。

でも、そんなのは絶対にばれる。

こっそりやったとしても、本人は痛みを感じるはず。

騒ぎ立てられたらアウトだ。

だから誰にも気付かれずに体内に入れるには、

何かに混ぜて食べさせるしかない。

これは事件が起きたのが昼休みだったことと合致する。

クラスメートなら、自分の弁当に混ぜておかずを交換でもすればいい。

でもさっきも言ったように、

綾乃さんとつながりがある人間は犯人じゃない。

つながりの無い人間が毒を盛るには、

無人の教室に入り込んで綾乃さんの弁当に細工するしかない。

きっとあの日は教室移動の授業でもあったのだろう。体育とか家庭科とか。

やはりこれも、自由に学校に出入りできる人間でなくてはならない。

学校内をウロウロしていてもさほど怪しまれない人物でなくてはならない。



次に考えるのは、不可解な法則。

「動機が無い」。

これは綾乃さんや隼人が犯人じゃないから当然だ。

「50音順に死ぬ」。

何らかの意思が反映している、呪いだと思わせるためだろう。

でも、

「人を殺して自分も死ぬ」ように見せかけるのは?

こんな法則を作って、犯人に何の得がある?

殺す人数を増やすと、それだけリスクも高まる。

犯人は隼人が一人のところを狙うべきだった。

その方が絶対安全なのだ。

二人を逃がさないのは至難の業だし、

どちらか一人でも助かったら自分の犯行が露呈する。

なのに何故、二人でいるところを殺した?

綾乃さんが偶然人を殺したから、

従って二人ずつ殺すことにしたというのも無理がある。

呪いに見せかけるために規則性を持たせるなんてのは大して重要じゃない。

そんなことより自分が捕まらないことを優先するに決まっている。

何故そうしなかった?

隼人を狙って入ったら、偶然尾崎君がいたから口封じに?


逆だ。

犯人はわざわざ、隼人が誰かと二人きりになるところを狙ったのだ。

犯人は、その法則を作らざるをえなかった。

その理由は、一つしかない。

僕達5人の中に、本当に殺したい人物はいない。

巻き添えになって死んだと思われる人間こそ、

犯人が殺したかった人物なのだ。


そうか。

もう狙いは分かった。

犯人が本当に殺したかったのは、社長だったんだ!

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