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願いはハッピーエンド

作者:徒花 諒一
 出会い。
 それは、不思議なもの。

 わたしは捨てられていた。
 魔族の住む谷に。

 人間と魔族は仲が悪い。
 いや、仲が悪いというより、人間が一方的に嫌っていると言った方が正しい。

「力がないゆえの哀れな嫉妬だ。」

 人間は、弱いし、脆い。
 魔族は、階位ごと違うが上位の者は、人間が束になっても敵わない。元々授かった身体能力の差だ。

 極稀に人間にも魔族の上位者のような能力を持って生まれる者もいる。

「わたし、みたいに……。」



 わたしは、普通の農民の家で生まれた。
 生まれたと同時に母様を殺した。

 わたしは生まれつき魔法が使えた。誰にも習わず、ましてやただの赤子がコントロールできるはずもなく、母様の命を奪ってしまった。
 村中の人々から嫌われ孤独な生活を虐げられた。

「ただし、父様は違った。」

 父様は、わたしの魔法が暴走して殺される心配もあったのに、いつもわたしの側にいてくれた。

 五歳のとき、父様が殺されるまでは……。

 父様を殺したのは、どこかの貴族の男だった。
 男は、軍事力としてわたしを必要とし、父様に献上することを強要した。父様は、最後まで断り続けた。

 結果として、ただの農民である父様は、貴族の用意した兵士に切り殺された。化け物扱いされていたわたしを、助けてくれる村人なんているはずもない。

 わたしは貴族の男に連れられて、地下牢のような部屋に閉じ込められた。

 そこで三年間、勉強させられた。
 男は財力を使って、何人もの教師を用意した。 

 結果として、三年間で七人の教師を誤って殺してしまったが、わたしは魔法をコントロールできるようになった。
 闇、氷、毒、風、雷の魔法を……。

 それに加えて、教師の誰も使えなかった『空間』を扱う魔法も独自に訓練した。

「準備が整った。」

 そう思ったのが、連れてこられて四年が経った時だった。
 わたしは牢屋を抜け出して、男に復讐しようとした。


 結果は……、失敗に終わった。
 男の用意した兵士や魔導師にボコボコにされた。

 まだ、早すぎた。
 たかが九つの子どもが、三十人近くいた屈強な男たちを相手には荷が重すぎた。

 貴族の男は、捕らえられたわたしを殴った。
 殴られ、蹴られ、罵声を浴び、牢屋に叩き込まれた。

 それだけでは、男の怒りは収まらなかった。毎日、拷問を受けた。

 棘だらけの鞭で何度も何度も叩かれた。
 長時間、水中に押し込まれ、溺れて意識を失い、気がつくとまた押し込まれ、の繰り返し。
 裸にされ外に張り付けられ、三日間そのままの時もあった。
 炎で炙られることも、指の骨を一本一本 潰されることも
 抵抗すればするほど、拷問は冷酷かつ残忍な物となった。

「拷問ばかり受けて一年がたった。」

 貴族の子供の中に、わたしのような魔法を持って育った者が現れた。男は、すぐさまその貴族の親に金を渡し、その少年を買った。表向きは、男の養子として。

 少年は、教養があった。頭もよく、剣術や体術のスキルを上々、そのうえ魔法も使えて礼儀も正しい。

「男は最高の買いものをしたものだ。」

 その結果、わたしはいらなくなった。
 日々の鬱憤を晴らす為の奴隷は他にいたし、性奴隷としては体の成長が足りなかった。

 ただ、そこそこの魔法を使えることもあって、普通に捨ててしまったら、別の貴族が拾う可能性もある。
 そこで男が出した結論は、魔族の谷に棄てることだった。

 そこなら誰も近寄らず、魔族ならわたしよりも強いものがたくさんいるから、すぐに殺すだろうと判断してのこと。

「こうして、わたしは棄てられた。」



「ただ……、わたしは生きている。」


 わたしを助けたのは魔族の男。出会いとは、本当に不思議なものだ。

「やぁ。珍しいね、人間がこんなところにいるなんて」

 そう言って、男は近づいてきた。格好からして魔族の中の貴族だとすぐに察した。

「来ないで!!」

 わたしは魔族の男に臆することなく、きつい口調で唸った。

「ふむ。やはり人間は魔族のことを化け物と考えてるようだね。」

『化け物』その言葉にわたしは親近感を覚える。わたしも『化け物』扱いされていた。

「おや、どうしたんだい?」

 男は尋ねる。何について?

「なんで、泣いているんだい?」

 泣いている……? 
 知らないうちに、わたしは泣いていたようだ。

「何があったかは知らないけど、とりあえずその傷は癒さないとね。」

 男が手を差しのべる。
 わたしはその手にすがり付きそうになって考え直す。魔族が人間を食べることは、常識だ。
 わたしは食べられるのだろう。先程、この男は人間が珍しいと言っていた。久しぶりの獲物に会えたということなのだろう。

「どうしたんだい? おいで。人間が思ってる程、魔族は悪い奴じゃないよ。ほら、人間にも悪い奴はいるだろ? そういった者の噂が人間たちに伝わってしまってるだけで、全ての魔族が悪い訳じゃないんだよ。」

 そうだ。
 魔族は強いから妬まれてるだけ。
 それに、あの貴族の男なんかよりもよっぽど優しい。

 わたしは、魔族の男の手を取っていた。

「さぁ、いこう。僕の城へ案内してあげる。僕の名前はマリシテン。階位は十三……、おっと、階位については知ってるかい?」
「知ってる。十三ってことは一番強いんでしょ?」

 マリシテンは少し難しい顔をした。

「ま、そう思ってくれればいいかー。」

 一人でそう納得していた。
 どうやら、ただ強い能力を持ってる訳じゃないみたい。

「君の名前は?」

 マリシテンはニコニコと聞いてくる。なんだか調子が狂う。

 わたしの名前……、両親から貰った大切な名前、

「わたしの名前は、ルルナ・アルシエル」

 今まで、使うことがなかった名前だ。

「ルルナか、いい名前だ」

 マリシテンは、満面の笑みでそう言ってくれた。
 わたしの名前を呼んでくれたのは彼で二人目だ。彼の前は父様だけだ。

 ――――また、涙がでた。

「ルルナ、君は泣き虫だねぇ〜。」
「茶化さないで」

 なんで、涙が出るか分からない。今までは、辛いときも耐えてきたというのに……。

「大丈夫、一人じゃないよ。僕がいるから安心して」

 その言葉は、わたしの中にあった塊を溶かしていく。

 ――――余計に涙がでた。

「あちゃー、余計泣かせちゃったか。ふむ、小さいころ僕が泣いたときは、母さんのこの言葉で泣き止んだんだけどな。」

 マリシテンは、真剣に考える。あまりにも真剣で逆に可笑しく思えてくる。

 …………あ、そうか。わたし嬉しいんだ。こんな優しい言葉は、父様以来だ。

 また、涙が出そうになるけど、今度は堪えた。

「あ、ありがとう。」

 それだけはなんとか伝えれた。

「ふむ。どういたしまして。」

 マリシテンは、一瞬戸惑ったが、笑顔で答えた。

「さぁ、見えたきた。あそこが僕の城だ」

 マリシテンが示す場所には、黒い立派な城が聳え立っている。

 そしてこの出会いが災厄をもたらすとは誰も想像しなかっただろう。


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