日常
俺ができることなんて限られている。
人間がたった一人でできることなんてたかが知れてる。
俺は全てを救いたかった。もちろん自分も。
だけど、大切なモノが壊されるんだ。無くなって消えてしまうんだ。
それならこう考えるに決まっているじゃないか。
自分を捨ててでも救いたいって。
過去の俺よ。傷ついても立ち向かえ。
そして後悔だけは、絶対に残さないでくれ。
後悔ってなあ、今でも俺を苦しめるんだよ。
長い夢を見ていた気がする・・・
目が覚め、いつも通りの天井を見て少し安心してカーテンを開ける。
もう昼過ぎだろうか。太陽が高くにのぼり、春の指し日が部屋を照らす。
5月3日、快晴である。
部屋を出て、伸びをして母親が作り置きしてくれた親子丼を平らげると、昨晩録画した映画を見よ「撮れてない・・・」
ちゃんと録画したと思われた映画「駆動騎士ガムダス~反逆のアズマ~」が録画されていないではないか。
「こ、これは誰かの陰謀か!?」
と独り言と共に今日一日はどうやって過ごそうかなと考える。
いつも通り本屋へ行こうか・・・
それともたまにはゲーセンで時間でも潰すか・・・
彼の頭にハロワへ行くという選択肢も、働いて母親を楽にさせようという考えもなかった。
まだ昼なのに外ではカラスが鳴いていた。
俺は速水玄徳19歳童貞。玄徳なんて大層な名前だが、ゆとり世代を生きるゆとり思考の半ニートである。
別に学校の成績が悪いわけじゃなかった。
ただ、このまま大学に行って就職をして定年まで働くというレールに乗るのが、ある日を境に怖くなっただけだ。
俺の道は俺が決めると意気込んで高校を卒業した彼であったが、結局何をしても長続きせず、気が付くと20歳の誕生日の数日前である今日に至るのであった。
「そう誰も俺を縛ることはできない!!俺は自由だ!!フリーダム!!」
あまり一人で叫ぶと近所のおばちゃんたちから苦情が来るのでやめておこう。
まあこんな感じで毎日を怠惰に、凡庸に過ごしているが悲壮感を漂わせないところは俺の長所であり、短所なのかもしれない。
そしてそんな俺、速水玄徳は他人には、いや肉親にも、人生で一度もできたことのない恋人にも言えない秘密があった。
「やっぱり映画を見直すのが無難だな・・・」
目を閉じ、日にちを頭に思い浮かべロードと念じると・・・
「やっぱりこの感覚は何回やっても慣れないな」
5月2日前日の昼過ぎに遡っていた。
これが俺の秘密、人生をセーブした日時にいつでもロードできるのである。
俺はこの能力を使って、結果が分かる競馬や株などで小金を稼いでいた。
ただあまり大きく稼ぎすぎるといらない妬みなどを買いそうなので、自分が使う分のお小遣い程度に抑えている。
これが何をやっても本気になれない理由の一つなのかもしれない。
「まあとりあえず、映画が始まる時間になるまでゲームでもしてよ」
コントローラーを握ってゲームを始める玄徳であった。