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しまい朝顔

作者: 水守かなた

初投稿になります。

誤字脱字には気をつけていますが、もし見つけた方がいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです。


2016/5/13 ご指摘いただいた誤字脱字を訂正いたしました。

                    

 鏡台の引き出しの中にころりと黒い粒が転がっていた。

 最初はゴミか虫かと少し身を引いたものの、よく見れば何かの種のようだった。引き出しの奥をのぞき込むと色の変わった和紙のようなものが出くる。折り目がついた紙には褪せた青いインク文字で「あさがお」と書かれていた。

 その頃の私は大学四年生だったが、すでに卒業に必要な単位分の講義をとり終えていて、時々ちょっとした用のために大学に出向く以外は、家とアルバイトの往復をするだけの生活を送っていた。ほんの少し、退屈していたのかもしれない。

 そもそも芽が出るかどうかも分からない代物だったが、それはそれで困ることもないだろうと、母から植木鉢をもらって育ててみることにした。

 

 鏡台は古めかしい半三面鏡のついたもので、鎌倉彫というのだろうか、椿の模様の彫られたものだった。親戚の家で不要になったのでもらい手があればという話になって我が家に引き取られたものだ。高さも私の身長ほどあり、引き出しのついている分、幅もあったのでなかなか躊躇したらしいのだが、つい最近我が家唯一の姿見を誤って割ってしまっていたので、結局もらうことにしたらしい。私としても、姿見が無くなったのは随分と不便に思っていたところだったので助かった。

 その鏡台を我が家の庭に面した和室に備えつけるにあたって、ふらふらと家で勉強しているだけだった私に掃除をする役目が与えられた。前の家ではもうだいぶしまい込まれていたらしく、先方も急ぎだったのでざっとほこりを払っただけなのだという。中身は抜いてあるっていってたから、と慌ただしくパートへ出ていく母の言葉にうなずいて、濡れた布巾を持った私は和室へと向かう。

 鏡台は左右対称の造りになっていて、真ん中に薄い引き出しが一つと左右に三段ずつ大きさの違う引き出しがついている。

 全体的に元々黒いのか汚れて黒いのか判別に困る色合いをしている。漆製品だったと思うが、どのように手入れすればいいのだろうか。とりあえず水拭きぐらいは平気なのではないかとあたりをつけて、できるだけ固く絞った布巾で表面を擦ってみた。

 細かいほこりと黒っぽいものが布を汚す。これは相当苦労しそうだとため息をつくと、窓を開け空気を通すことにした。戻って、先に引き出しをすべてはずしておこうと、左の一番上を引き抜いたときだった。

 からからと小さなものが転がる音がする。

 引き出しの内側は白木がむき出しで、その中に五つの種が転がっている。取り出して手の上で見ると、硬く小さな黒い種は乾燥しているふうではあるがまだ新しいもののようでもある。それをリビングの机に避難させて、布巾を片手にまだ所々ほこりの残る鏡台と対峙することにした。

 鏡の部分は、曇ってところどころシミがついてもいた。何回か拭いているうちに見違えるように綺麗になった。シミも消えていた。乾拭きもすれば、前の鏡よりもずっと澄んでよくうつる。やはりそれだけ値打ちのあるものなのかもしれない。

 まだ多少カビなのかほこりなのか分からない匂いがするものの、使っているうちに薄れていくだろう。途中で、段々と下にあるはずの赤い色が透けて見えてきたときは、うっかり擦りすぎたのではないかという考えがよぎったが無視することにした。最初に擦っていた左側面だけほんのりと赤みが強く見えるのも気のせいということにする。

 念のために一時間ほど風通しした引き出しに、母の化粧道具やヘヤケア関連のものを詰めていく。まだ入りそうだったので、ついでに私のものも部屋から持ってきて右の引き出しに詰め込んだ。どうせならば大きな鏡で見たほうがやりやすいだろう。母に比べて私の物はずっと少ない。最後に開いていた鏡を閉めて、周りに散らばっているものを片づける。

 一息ついたところで、机の上に置いたままの種を思い出した。ふと考え、リビングの小さな本棚をあさる。料理の本やら着物の着つけの本やらに紛れているガーデニング入門と書かれた無駄に分厚い本を引っ張り出す。朝顔の項目は簡単に見つかった。

 帰ってきた母に種と紙を見せた。育てられると思うかと問えば、埋めてみればという。鏡台から出てきたのだと告げてみるが、母は特に気にするようすはなかった。

 朝顔なんて簡単なものじゃないと庭いじりの好きな母がいうので、それは母さんには簡単かもしれないけれど、とぼやく。だってあなた前に育ててたでしょう。それは小学生のときの話じゃないかと小さく反論した。母はすっと目を細めてこちらを見る。育てるといったわりには文句が多いので、あきられたのかもしれない。鉢を一つくれといえば、勝手にどうぞと返ってきた。


 梅雨が近いせいか、やたらと湿度が高い。

 二又に分かれた葉が一対。土の上に顔をのぞかせていた芽が、今朝になって大きく開いていた。表面が波打っている。朝顔の本葉は三つ又である。最初は二又というのが、自ら幼さを主張しているようでほほえましい。

 指先で柔らかな土に種を一つ一つ埋め込んでから一週間。種は芽が出たのは一つだけのようだ。間引きようもない。いつからあったのかも分からないのだから、出ただけで御の字である。

 母にはどうせすぐに枯らすのではないかとからかわれたものの、なにかと手伝ってくれた。あんどん仕立てにするといいと母からアドバイスをもらい、とりあえず鉢の真ん中に苗をうつすと、緑色の支柱三本と輪のようなものをくれた。それらを組み合わせてどうにか土に突き刺すと、苗自体は未熟なものの鉢全体の見栄えは良かった。鉢は庭におりるガラス戸のすぐそばに置いた。

 それまでは夕方からのアルバイトと家での勉強ぐらいの生活だったので、ほとんど夜型の生活を送っていた。朝顔は夏も近くなれば朝夕の涼しい時間に水やりをしなくてはならなくなった。めんどうくささが無かったわけではないが、せっかく始めたのだからという気持ちがまだ勝って、気だるい体を引きずりつつも起きる。庭にある水道から如雨露に水をくんで鉢にたっぷりと水をかける。双葉が出たあとはあっという間に一つ二つと新たな葉をつけた。水を受けた葉は上下に揺れながら滴を弾く。黒々と濡れた土から立ちのぼるにおいが鼻をくすぐった。母がついでに他の植物にもかけおいてというのを三回に一回ほど請け負ったりした。庭には母の育てた紫陽花が咲いている。

 朝の水やりを終えると、私は近所の図書館に通うのが日課になった。最初は朝顔について別の本を見てみようと思って行ったのだが、どうせそろそろ卒業論文の準備も進めなくてはならない。近所とはいえ駅前を通るのだからと、ここ最近はめんどうくさがっていた化粧を毎日するようになっていた。必然的に鏡台の前にすわる時間も長くなる。古めかしい鏡台は我が家に来たばかりのときには場違いのようなちぐはぐさがあったが、徐々に違和感も消え、最初からここにあったかのように根づいていた。青みがかった畳と所々赤みをみせる黒い鏡台のおかげで、和室の中は一層空気が澄んだように落ち着いている。母も気に入っているようで、最初に鏡台の話をもらってきたことをことあるごとに話す。父も私も最初は素直に相槌を打っていたが、最近は放置している。

 鏡に向かいながら、目元に線を引く。私は母に似ているのだという。違うのは母が一重なのに対して、私は父に似てはっきりとした二重だった。さっさと済ませると、私は鏡をパタンと閉める。

 朝顔は気がつけば三十センチの高さまで伸びていた。慌てて入門書の説明通りに根元から五枚目の葉まで残して上を切り落とす。母の剪定ばさみはずっしりと重く、若い茎は簡単に切れた。先の方はまだ柔らかな薄緑色をしていて、白い産毛のようなものが全体に生えている。しばらく手の上で切ったあとのそれを眺めてみたが、しようがないので庭の隅に片づけた。カサブランカの咲いた一角を通ると甘ったるい強い香りがまとわりつくようだった。

 朝顔は自分の身が切られたことなど微塵も気にしていないように、色を一層深めた葉を伸ばしている。濡れた緑が朝日を反射してきらきらと輝いた。そのうち脇芽が生えるというので、それを支柱に絡ませればよいのだという。ようやくこの意味もなく囲むだけの棒きれも役に立つのかと思いながら庭から引き上げる。ガラス戸を開けるために顔横のあたりについた手のひらから、薄らと土と草の湿った匂いが漂った。

 部屋に入ると鏡が開いたままになっていた。鏡台の上にものを置くと鏡の開け閉めができなくなる。何度そういっても上に化粧水や乳液が出しっぱなしになっている。台所で食器を洗っている母に、ちゃんとするように声をかけるが、いつもはしまってるよ、といい加減な返事をされる。毎回片づけをしているのは私だった。鏡台の棚の上に置かれたものを左の引き出しに入れる。どうしても一本入りきらないので仕方なく私の使っているほうへしまう。顔を上げると大きく両手を広げた鏡があり、自分と目が合った。私の後ろには襖と奥のリビングがうつり、庭からの日差しとフローリングの照り返しで全体が白っぽく光っている。鏡の中の私は眩しそうに目を細めている。眉の間にしわをよせた顔はむっつりと不機嫌そうであった。若いのだからもっと化粧をしなさいという母の言葉を何回聞いたか分からない。まだ何も刷いていない頬、目の下にはそばかすが散っている。


 朝顔は脇芽もだいぶ伸び、うねる細いつる状の茎がふらふらと空を泳ぐように風にあおられている。鉢の三方に立てた支柱に伸びてきたつるを左巻きになるように軽く巻きつかせ、園芸用のビニタイで結わえてやる。なかなか自分から巻きつかないという説明を読んで、つる植物の癖に根性のない奴だと悪態をついてみる。うねうねと上に伸び上がるだけで本当にこれが曲がるのかと心配になるが、そのうちどうにかなるだろう。そのまま出かけて、夕方に戻ってきてみると、タイが緩かったのか、抜け出したつるはまた上に戻っている。ぐっと引っ張って巻きつくように矯正し、朝よりも強めに止めておく。先に水をかけてしまったので触るとつるが水滴をはね飛ばした。四苦八苦していると、けっこう育ったね、と声が降ってくる。夕飯の準備をしていたはずの母が戸口に立っていた。うん、と手元を見たまま返事をする。水やりするならついでに他のにもかけておいてよ、という。また水道に戻るのは面倒だと思った。如雨露が小さいので庭を回ると何回も何回もくむのを繰り返さないといけない。このまま無視しても、私がやらなければ母は自分で水やりをするだろう。立ち上がって如雨露を持つと指先が濡れた。影から出たので西日がじりじりと体を照らす。眩しい。母もさっと手をかざした。目を眇めた彼女の顔には夕日に照らされて陰影がはっきりと出ていた。目元や口元に深い切れ込みがあるのに気がつく。手の中のプラスチックをぐっと握りこむと、結局私は水を溜めに水道へ向かった。夕飯は焼き魚とほうれん草のおひたしだった。

 携帯電話の通知音に布団からはい出した。昨日から雨が降っていたので、水やりはいいだろうと久しぶりに昼過ぎまで自室で転がっていた。開いて見れば友人からで、久しぶりに会おうという誘いだった。二人とも明日が空いていたので急ではあるが明日会うことにする。夕方、ガラス戸越しに鉢を見ると雨は上がっていたが、土は十分湿っているようだったので何もせずに庭に出ることもなかった。

 次の日、時間をかけて丁寧にパッティングを終え、下地を顔に伸ばしているとやたらとなじみが良いことに気がついた。鏡にうつる顔は血色よく見える。肌が荒れやすかったのが、ここ最近は気にすることもなくなっていた。つるりとした丸顔がこちらと向いている。そっと口の端を持ち上げてみれば、少しは愛嬌があるように見える気がした。思い立って、母の引き出しからそっと無断でコンシーラーを取り出して、そばかすの上にのせる。母はすでに出かけていて、家にはいない。上から自分のファンデーションを重ねると、いつもは透けて見えていたのがすっかり見えなくなった。

 せっかくなので、シャドウとチークを取り出していつもより手を加えてみる。明るい一色をのせるだけにしていたのを複数色使ってグラデーションになるように時間をかける。アイラインも念入りに引けば、目元はずっと華やかになった。頬に赤みが差したことで表情もいくらか明るくなったような気がした。鏡の中の私は母とは似ていない。

 準備も終わり家を出るころになって、今日はまだ庭に出ていないことに気がついた。急いで窓辺によると、鉢の土は乾いて表面が白っぽくなっている。支柱に絡みついた茎は力なくもたれかかっている。朝顔の葉はすべてでろんと端が下に垂れるように項垂れていた。胸の内側でどくどくと心臓が嫌な音を立てる。戸を開けて、つっかけに足を差し込むといっぱいの水をくみにいった。如雨露の重さによろめいて、スカートの端が少し濡れた。さあと音を立てて偽物の雨が朝顔にかかる。渇いた土から一瞬黄色い土煙が上がり、すぐに消えた。背中に力強い日光を感じて肩が強張る。しわの寄った葉はかかる水に湿りながらぽたぽたと滴を零した。鉢の底から水がしみ出して周りの地面に流れる。水のかかった朝顔は一層みすぼらしかった。

 もう出かけなければ、友人を待たせてしまう。帰ってくるまでに朝顔が元に戻っているかは分からなかった。如雨露を片づけながら傍らの花壇を見る。庭のどこも他のところは水やりがなされていた。湿ったままのスカートを撫でながら、鳩尾の辺りが詰まる心地がした。

 駅前で落ち合った友人とショッピングモールへ出かける。最近できた郊外型のモールは駅からシャトルバスが出ていて、二人で乗り込む。入口につくころには朝顔のことなど忘れてしまっていた。色々な店を冷やかしているうちに、すっかり夕方になっていた。

 家につくと母の踵のない靴がきっちりと揃えられて玄関の端に寄せてあるのが目に入って、どことなく胸がざわついた。まだ誰も帰ってきていないようだった。部屋はフローリングから立ちのぼる冷気が漂っている。シンクには何もなく、食器かごには布巾がかけられていた。今まで忘れていたのが嘘のように心配になって、鞄もおろさずに朝顔を見に行く。

 庭を見るとピンと張った葉を茂らせて、いつものようにつるを遊ばせている朝顔があった。朝のようすが幻だったかのように、元気になっている。ときおり風に吹かれて、ゆったりと揺れている。

 なんだ簡単じゃないか、と思った。鏡台は今日も開いたままになっている。そっと閉じて、表にあらわれた椿模様をひと撫でした。ぼこぼことした木彫りの固さが伝わってくる。手に持ったままの袋から買ってきたものをとりだして、鏡台の引き出しを開ける。切れかけていたものや新しく買ったものをしまっていくと、どうしても入りきらなくなってしまった。大きな引き出しの中に、母のものが入ったままになっていた。それを取り出して鏡台左側のたもとに置いた。私のものを空いたところに詰め込むとすっきりとした。


 するすると蔦を伸ばし、自ら支柱に巻きついていくので、私もそのあとにわざわざ紐で結んでやることもなかった。本来ならばまっすぐ伸びていくので定期的に添わせるように調節しなくてはいけないらしいのだが、ほっといても大丈夫そうだった。

 段々と本の説明は読まなくなった。読まなくとも母はすっかり覚えてしまっているようで、私がどうすればいいかと迷っているうちに、そろそろ肥料をあげないと、と庭先に必要なものを出してくれる。

 朝顔にはいくつも小さな蕾ができていた。蕾は白い飴をよじったように滑らかで、花の先には筆で差したように濃い青が螺旋を描いている。

 難しいことはない。私は朝夕に鉢をたっぷりと湿らせるだけだった。私が朝顔について調べると、そのうち名前の由来やら歴史の方に気が向いてしまって、栽培方法からどんどん脱線していってしまう。

 卒業論文の資料集めのほうはあまり進まなかった。図書館では雑誌コーナーで立ち読みだけして帰ってしまうこともあった。

 

 八月に入った。庭では鳳仙花がいくつも咲いていた。

 朝、昨日のうちに大きく膨らんでいた朝顔の蕾が開いた。

 最初の花は、淡い青色をしていた。真ん中はしっかりとしていて、縁のほうへいくにつれて薄絹のように繊細だった。そっと指先で撫でると鳥の羽に触っているようにやわらかかった。如雨露の口を根元に近づけて、花にかからないようにそっと水を注いでやる。

 手のひらにすっぽりと収まってしまう花は、朝日に照らされてしなやかに揺れる。花の奥には小さな雌蕊と雄蕊が寄り添っている。

 その日は休みで母が家にいたので庭から戻ると、朝顔咲いたよ、と声をかけた。母は見たよといってテレビの画面から目も離さなかった。私は憮然として、もう一度窓越しに見にいった。途中で、鏡台の前が開いたままになっているのに気がついたが閉めなかった。

 次の日になると、三つの花が開いていた。どれも薄青の丸い花びらを咲かせていた。

 昨日咲いた花が一番左の花の隣でしおしおと頭を垂れている。朝顔の花は一日しか持たないのだという。やがてあれも種になるのだろうと、楽しみにしていると、横から母がやってきた。今日も綺麗に咲いたのね、というのでうんとうなずくと、あなた種をとるつもりはあるの? という。一応あるよと答えると、そうなのといって彼女が朝顔に手を伸ばす。そして、咲いた花の隣で萎んでいた花を茎からぷつりと摘んでしまった。あっと私が声を上げたときにはもう摘んだものを下に落としてしまっている。ぞっとするぐらい腹が立って、なにをするのと責めると、びっくりしたように種をとるんでしょうという。摘んでしまったら取れなくなってしまうじゃないかというと、なんだというように彼女は笑った。信じられない気持ちで母を見る。母は種をとるなら最初の花は摘んでしまわないと、といった。

 最初の方に種を作らせると、すぐに花が終ってしまう。種もよい種ができない。

 朝顔は種を作るのに体力を使う。だから今じゃなくて秋に咲いた花からとりなさい。

 摘まれた花を拾いあげる。花は手の中で水気もなくなって端の方には枯れたように変色している部分もできていた。しわの寄った先の方に色の褪せた紅色が紫がかってへばりついている。青かったはずの花はなぜか色が変わってしまっていた。

 それから数週間、花は毎日咲いては萎み、咲いては萎んだ。

 朝夕の気温もやや落ち着いて、庭先に出るのも心地よい陽気だった。

 花盛りも過ぎた朝顔は、最後に二つほどを残してすべての花が萎んでいた。九月の頭から摘むことを止めたので、いくつかの実がガクだった部分からふっくらと顔を出している。

 私は、その種を紙に包んでどこか見えない場所に仕舞ってしまおうと思っている。








読んでいただきありがとうごさいました。

感想等いただけると、とても嬉しいです。

また、改行などあまり行ってません。読みづらい等の感想もあれば言っていただければと思います。

(こちらの作品は、後に改稿再編集の上、短編集の中の一作として本に収録する予定です。)



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