肉まん
「ねぇ、知ってる?」
「知ってる、知ってる。あの屋台のことでしょ」
それは、私の学校で流行っている都市伝説。
肉まんを出すというだけの屋台。
でも、そこの肉まんを食べてはいけない。
この都市伝説が生まれたのがいつかは分からないし、知らない。
でも、私がこの高校に上がってきたときには、すでに古くから言われているという都市伝説だった。
「あそこか……」
そんな噂に導かれて、私は気になって、とても気になってしまったのでとうとう見に来てしまった。
近くにある手野鉄道ガード下、普段は昼でも暗いところであるが、夜になると、それも午後7時から9時までの間に限って、その屋台が現れる。
赤ちょうちんには「肉まん」とでっかく書かれている。
そこに、私は歩いて近寄った。
「いらっしゃい」
肉まんは、湯気を立てている、竹でできた桶のような籠のようなものに盛られていた。
撃っている人は、男であるというところまではわかったが、そこから先は暗くて見えない。
肉まんにスポットライトを当てているから、周りが相対的に暗く見えるのだ。
そして、私は勇気を出していう。
「あの、肉まん一つ」
「あいよ。食べていくかい」
袋に入れつつ、そんなことを聞いてくる。
「いえ、食べながら帰ります」
「そうかい。250円だね」
私はそういわれ、300円を出してお釣りを受け取る。
「まいどー」
毎度、と言われても、来たのは今日が初めてだし、これから来ないかもしれない。
そういう店だ。
私は家に帰りつつ、肉まんをハフハフと食べていた。
全部食べ終わると、包んでいた紙の袋は、懐にしまう。
「普通においしかったけどなぁ」
特に都市伝説で言われるようなことにはなっていない。
私は、何事もなく家に帰り、晩御飯を食べて、お風呂に入り、ゲームをして、パソコンでメールやチャットなんかしてから、眠りにつく。
そして、夢を見た。
私があの肉まんの店に行き、そして、服を全部脱いでこういうのだ。
「おいしくしてくださいね」
店主には、こう返られる。
「ああ、おいしく作るよ」
手には包丁を持ち、店主はにこやかに振りかぶった。
「……警察は、食品製造会社社長を逮捕しました。容疑は、肉まんを人肉で作っていたということで、食品衛生法違反、及び殺人罪に問われています。社長は「今まで何人もやってきた。人数は数えていない」と話しているとのことです。では、次のニュースです……」