第4章 おっぱい次元戦線異状なし 前編
気がつくと、目の前に巨乳全裸の女の子がいた。だがここはおっぱい次元、このくらいは日常茶飯事だ。かくいう俺も、この女の子と同じ格好である。サイズでは負けているが、感度には自信がある。
「おっぱい!」
「おっぱい!」
俺たちは出会い頭の自己紹介を交わした。禍々しき古の文言「おっぱい」を用いた自己紹介は、おっぱいバトルに臨むおっぱい次元の住人にとって神聖不可侵の儀式。そして俺たちは互いのおっぱいの成長ぶりを確かめ始めた。
「おっぱい!」「おっぱい!」「おっぱい!」「おっぱい!」
互いにおっぱいシャウトの絶えない高速おっぱい戦闘。女の子も俺も必死だ。おっぱいバトルに敗北したおっぱいの民は、恐るべきおっぱい牧場に強制収容されてしまうのだから!
俺たちの熾烈なおっぱい激闘は3時間34分に渡った。そして、最終的におっぱい勝負を制したのは――。
「うん……? ここは……?」
俺は朦朧とする頭を振り、己の状況を確かめる。
視界に映ったのは、所々ひび割れた天井。
腕を動かすと、鎖が擦れる音がする。
俺は牧草の敷き詰められた暗い部屋の中で、四肢を鎖に拘束されていた。
「なんだこれは!?」
「くっくっくっ、君がここに来るのは初めてだったね」
部屋の隅に眼を遣ると、一人の黒衣の男が佇んでいた。
俺は記憶を辿り、自分の置かれている状況を整理する。
そうだ、俺はあの時戦いに敗北して――――――。
「おっぱい牧場にようこそ、オノデゐラ=キオスク」
そういえば、自己紹介がまだだったな!
俺はオノデゐラ=キオスク! みんな宜しくな!
「くっ、離せ」
「嫌です。なので、早速だが搾乳させてもらうぞ。」
男が寄ってきて、俺の剥き出しのおっぱいに搾乳機を取り付ける。
これが噂に聞く、おっぱい牧場の惨状!
おっぱいバトルに負けた者は、この牧場で搾乳され、男たちのエナジーの糧となる母乳を提供する機関になり下がるのである!
搾乳機が凄まじい音を立てて起動し、振動する。
「おほおおおおおぉぉぉおぉぉぉおおぉおお!!!!!」
あああああああ!! 凄い、凄いよこれ!!
「フレーフレー! いっぱいおっぱい出したら負けよ! あっぷっぷ!」
男は3・3・7拍子を取りながら、(/ω\)を剥き出しにして射精している!
「もう嫌だ。やめてぇえええええええ。やめて。マジでさ」
迫りくる眠気を堪えながら、俺はそう呟いた。
すると男は途端に悲しそうな顔をしながら、俺の顔を覗きこんできた。
「まあまあ我慢してよ。そういえば、最近自己PRの練習したので聞いてください。私の名前は超兆蝶。みんな宜しくね!」
なんという巧な自己PRだ。さっきの私の自己紹介を超えている。
「くっ、男達の慰み物にされるなんて私はごめんだ!」
「そういうことはもっと早く言ってくれよ。それに、君はこの状況を見てもそういえるのかい?」
男は部屋のモニターを起動し、顎でしゃくる。
そのモニターには、何百、何千という女性たちが、まるで家畜のように小屋に入れられ機械的に搾乳されている様が映っていた。
およそ、人間が人間にやってよい範囲を逸脱している。
「てめぇ!」
俺は超兆蝶を怒りに任せて殺害し、おっぱい牧場から脱出した。
疲弊する体に鞭うって、俺はひたすら歩き続けた。
そう、全ての黒幕―――――Cを倒すために。
それがつい、3分前のことだった。
「見つけたぞ、C」
3分後、俺はCを発見した。この世界におけるCの外見は、25歳の金髪爆乳Hカップセクシーお姉様だ。Cは、あらゆる世界に共時的に存在し、その世界における「絶対的強者」の形態を取る。美形が至上価値とされるイケメン次元では超絶美男子に、筋肉が至上価値とされるマッチョ次元では筋骨隆々とした巨漢に、金が至上価値とされる資本主義経済次元ではブルジョワに、戦闘力が至上価値とされる世紀末次元では世紀末覇王に……そして、豊乳が至上価値とされるおっぱい次元においては金髪爆乳美女に。
「今度こそ俺はてめーに勝つ!おっぱいバトル、レディ、ゴー!」
「おっぱい!」
「おっぱい!!」
道端で乳をぶつけ合う俺とCの周りに、野次馬が続々と集まってくる。
「金髪爆乳美女最高! エロいぜ!」
「負けるな赤髪ツインテールの俺ッ娘ー! 応援してるぞー!」
野次馬たちのいやらしい視線に晒されて、恥ずかしいながらも興奮してしまう。この風、この肌触り、この匂いこそおっぱいバトルの戦場よ!!
「1ヶ月前に比べて腕を上げたわね、おチビちゃん。おっぱい牧場での責め苦に耐え抜いた成果かしら」
「ああ、寝ても覚めてもてめーの憎いクソデカおっぱいを思い描いていたさ! 今度こそ牧場送りにしてやるよ、C!」
「フフ……威勢のいいこと」
「行くぜ! 流派おっぱい不敗奥義、超級おっぱい電影弾!」
超級おっぱい電影弾は、二つの乳房から気力を放ち敵を穿つ遠距離攻撃技だ。俺の小ぶりなおっぱいから放たれるそれは火力は控えめなものの、速度と精度であらゆるおっぱいバトラーを凌駕する。
「破ァ!」
「なに!?」
「甘いわ、キオスク! その程度の攻撃では、私のHカップは揺れもしないッ!」
Cはとっさにおっぱいバリアーを展開し、俺の電影弾を防いだ。だが――
「その油断が命取りだ!」
俺はCの懐に入り込み、ブラを引き裂いておっぱいをさらけ出す。
「まさか、その技はッ……」
「必殺奥義! 射乳! 天! 驚! 拳!!!」
「グワーーーッ!!!」
説明しようッ! 射乳天驚拳とは、ゼロ距離で母乳を噴き出しその高濃度おっぱいエネルギーを相手にぶつける一回限りの一撃必殺技である! 妊婦のみが使える技だが、おっぱい牧場で身体を改造されていたキオスクは処女でありながらその技を使うことが出来たのだ!
「すげえ! 見た目14歳の赤髪ツインテール俺ッ娘が射乳天驚拳を使いやがった!」
「あえてブラでおっぱいをきつく締め付けることで、母乳の出る大きなおっぱいの存在を隠していたというのかー!」
「ロリ隠れ巨乳すげー! ロリ母乳飲みてー!」
野次馬たちが予想外の展開に狂喜する。勝った……ついに俺はCに勝ったのだ……。
俺は母乳を垂れ流しながら、気を失ったCの側に立ち尽くしていた。
しかし、その恍惚は長くは続かなかった。
「助かりましたよ、キオスクさん。これで我々『龍の眷属』の仕事が減りました」
「貴様は……?」
野次馬の中から突如、一人の黒髪の眼鏡をかけた美女が歩み寄ってきた。クルエと名乗った彼女は、俺におっぱいバトルを申し込んできたのだ。この世界の存亡を賭けた、「ハルマゲドン・おっぱいバトル」を。
「てめぇ!」
俺は怒りに任せて野次馬を全員殺害し、クルエと対峙した。