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11. vs 戦いの傷跡。彼らの行方とうごめく影編

あけましておめでとうございます。


相変わらず亀更新ですいません。

今回は展開上三人称で超短編風になってます。

□忍び寄るモノ


 林川克。彼は至って普通の生徒だ。

 一般家庭で育ったにも関わらず、持ち前の人の好さ、そして明るい性格も相まってこの天ノ宮学園でも友人は多い。入学当初こそ彼を馬鹿にする者も居たが一か月も立った今ではそんな者はおらず、男女関わらずに彼は人気者だった。

 そんな彼だが最近一つ悩み事があった。それは視線だ。どこからか最近視線を感じるのだ。不思議と悪意は無い。だが確かに誰かに見られ続けているという感覚に彼は戸惑っていた。気のせいかとも思ったが、一度気にしてしまうと忘れにくいのが人間だ。故に彼はここ数日、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。


「と、いうことなんだけどどう思う?」

「考えすぎじゃないか?」


 友人に相談しても笑い飛ばされてしまう。相手の言い分も尤もなのだがやはり気になる。そんな彼を見かねて友人は言う。


「そんなに気になるなら委員長に相談してみるか?」

「委員長か……」


 友人の提案に少し考える。確かに委員長は頼りになる。最近なんだか妙な趣向に目覚めたとか鞄の中に鞭があったとかロッカーの中に蝋燭があったという奇怪な噂もあるが噂は噂だろう。入学してから一か月、彼の人望と頭の良さ、そしてなによりクラスメイトを大事に思う気持ちは本物だと信じている。


「そうだな、委員長に相談してみるよ」

「おう、俺も何かあったら力になるぜ」


 友人の優しい言葉に胸が熱くなるのを感じつつ、林川は委員長を探す事にした。



□それが愛でしょう


「林川君が僕を探している」


 委員長こと丸山卓也がその事を知ってからの行動は迅速だった。即座に図書室に向かうと秀才と呼ばれるその頭脳を最大限に発揮し、林川が自分を探す為に通るであろう廊下を予測。彼の歩調、脚の長さ、体力から速度を割り出し何分後にこの図書室に現れるかをシミュレーション。およそ32通りのパターンから最も確立の高い可能性を定め、それに準備する。大丈夫、彼の事はここ最近ずっと見てきたから(・・・・・・)知っている。

 そう、準備だ。彼がこの図書室に来て扉を開けた瞬間、自分が逆に図書室から出ようとしてぶつかるための準備(・・・・・・・・・)


「嗚呼……」


 その瞬間を想像し、丸山は震えた。

 彼が思い出すのは少し前の事。この図書室で自分が新たな世界に気づき始めて間もない頃の事だ。悶々とした悩みを抱えながら歩いていた自分は注意を怠り、廊下の曲がり角で人にぶつかってしまった。その時の衝撃は中々大きく、思わず自分はよろけたかと思うと角に頭をぶつけ半回転しつつ顔面から廊下に倒れるという醜態っぷりだった。その時感じたのは激痛と羞恥心と…………快感。


『委員長、大丈夫か!?』


 そんな言い知れない感覚に悶える自分を慌てて助け起こしたのがぶつかった張本人、林川だった。心配そうにこちらを覗き込む林川の顔を至近距離で見た時、委員長の中で何かの殻が破れ、新たな世界が産声を上げた。


「あれを……あれをもう一度……」


 委員長、丸山卓也。今の彼はクラスメイトの男子を想い(・・)その欲望を満たそうとする一人の思春期の男であった。



□トラウマを乗り越えて


「荒木さん、やめて下さい!」

「黙れ、俺はどうしてもやらなきゃならない」


 放課後の寂れた喫茶店。ボロボロで辛うじて営業している様なそこは不良のたまり場となっていた。そしてそこで荒木健二は重大な選択をしようとしていた。

 彼の周りでは数人の友人と舎弟たちが顔を真っ青にして彼の行動を止めようとしている。どいつもこいつも健二の荒々しさにほれ込んで集まってきた不良たちだ。彼らは健二の圧倒的な力と何事にも揺るがない心に憧れている。だからこそ、今から健二がやろうとしている事には反対なのだ。


「おいケン、本当に……やるのか?」


 友人の一人、赤髪にシルバーアクセをジャラジャラとつけた少年が問う。その瞳は畏怖か嘆きか、わずかに揺れている。


「やるさ。タク……お前も知っているだろう? 俺はあの日、謎のパツキンドリル仮面に敗北した」


 その言葉にタクと呼ばれた赤髪の少年は『くっ……』と悔しそうに顔を伏せた。自分がもしその時健二と一緒に居れば……加勢していれば……。そう思えば思う程、大切な時に傍に居なかった己自身を攻めているのだ。


「あれ以来、俺は金髪を……そして何よりもドリルを見る度に恐怖に捕らわれてしまった……! 工事現場でドリルを見た時、テレビでドリルを見た時、コンビニでドリルを見た時っ、ファミレスでドリルを見た時にだっ!」


 思わず声を荒げてしまう健二に、タクも舎弟も居た堪れないといった風に顔を伏せる。


「健二さん……あんなにまで恐怖を植え付けられて……」

「無理ねえよ。こないだはたけのこ里を見ただけで怯えて居たんだぜ……」

「何故コンビニやファミレスにドリルが……」

「いったいどんな仕打ちを受ければあの健二さんがあそこまで恐れるんだ……?」


 ぜえはあ、と息を荒らげていた健二だがゆっくりと息を整えると改めて前を向く。


「俺は、俺はこの恐怖に立ち向かわなければならない。だからこれは必要な事なんだ」

「ケン、そこまで……」

「見ててくれ皆。俺は必ずこの恐怖を打ち破り、お前らが憧れてくれた荒木健二に戻って見せる。だからこそっ!」

「ケンっ!?」

「健二さん!?」


 健二は己の正面、テーブルに置いてある物を手に取った。タクと舎弟たちが慄く中、健二は己の手の中にある物―――金髪ドリルのカツラとメイド服を掲げ、叫ぶ。


「トラウマを乗り越える方法。それは――――俺自身がパツキンドリルになる事だ」


 覚悟を決めると健二は金色に輝くドリルなカツラをパイルダーオンした!



 数か月後、この街には謎のパツキンドリル不良集団『手羅怒利流武霊駈』が誕生する事になる。




□悪夢


 朱鷺信吾はショタである。

 そしてそれは本人も理解しており、それを最大限に利用していた。


「はい、朱鷺君。クッキー焼いてきたんだ」

「私もケーキを持ってきたよ!」

「ほらほら朱鷺君、口にカスが付いているよ。はい、取ってあげる」

「わあ、ありがとう!」


 自分を囲む女子生徒達が次々に構ってくる。そんな彼女達ににっこりとほほ笑むと彼女達は頬を染めて喜び、更に彼を甘やかす。それは何とも心地の良い空間だった。


「朱鷺君、オリエンテーションの後から元気が無かったけどもう大丈夫だね」

「えへ♪ 心配してくれてありがとう!」


 オリエンテーション、その言葉を聞くとあの悪夢のような光景を思い出す。


『ふははははは! 凄まじいわね山の王! 片目を失ってもまだ歯向かうか!?』

『いけー春華様! というかここで倒さないと私達が危ないのでガチで頑張って下さいぃぃぃぃ!』

『す、すごいよ綾宮さん! テンプル、テンプルにもう一撃だよ!』

『熊鍋には醤油かしら? 塩の方が野性味あっていいかしらねえ』


 悪鬼の如く笑顔で熊と死闘を繰り広げるお嬢様(多分)とその侍女達。そして何故か活き活きと応援しているクラスメイト。忘れたくても忘れられる光景ではない。

 あれ以来、綾宮春華の事は恐ろしくて目を合わせる事が出来ない。目を合わせたら自分にも電気銃からの強化ゴム弾&飛び膝蹴りから背後に回ってのヘッドロック&目つぶしコンボが飛んできそうで。

 だからこそ今のこの空間は癒される。自分を無条件で甘やかしてくれる女子生徒たちに埋もれるのは何とも心地が良い。傷ついた心もこれで少しは安らぐという物だ。


「そうだ朱鷺君、私ね、お裁縫始めたの」

「わお! 凄いね!」

「ありがとう! それでね、初めての作品を……その、朱鷺君に貰って欲しいなって」


 頬を赤らめて『駄目かな?』と聞いてくる女子生徒に信吾は『そんなこと無いよ。貰ったら嬉しい!』と媚びる。こんな可愛らしい女子生徒が作った物だ。きっと作った物も可愛いに違いない。可愛いものは大好きだ!


「ありがとう。まだあんまりうまくないから歪だけど……どうぞ!」

「わーい! これはとっても可愛い―――――――」


 女子生徒が鞄から取り出したそれを無条件で褒めようとして、信吾の顔が凍った。

 それは人形だった。いや、正確には違う。俗に言うテディベアと呼ばれる、熊のぬいぐるみだった。


「ぁ……ぁ……」


 ガクガクと震える。例の光景が脳裏に過る。だが駄目だ。これはあれとは違う。目の前の女子生徒が作ったただの人形だ。落ち着け、落ち着くのだ。今この場ではとりあえず喜んで笑って居ればいい。家に持ち帰ったら適当に放っておけばいいだけだ。今までだって贈り物はそうしてきた。だから今は、今だけは耐えるんだ。

 そう自分に言い聞かせながら信吾は恐る恐るそのテディベアを受け取ろうと触れた瞬間、その熊の眼の部分、おそらくボタンで出来ていたそれが取れた。その光景はまるであの時、綾宮春華が電気銃からの強化ゴム弾&飛び膝蹴りから背後に回ってのヘッドロック&目つぶしコンボで山の王の眼を潰した時の様で―――もうアカン


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「きゃああああ!? 朱鷺君が突然奇声を発しながら涙と鼻水垂らして失禁しながら泡を吹いて倒れたわ!?」

「た、大変!? 先生を、保険の先生を誰か呼んで!」


 朱鷺信吾。甘える事に慣れ過ぎた彼だったがこの出来事をきっかけに、父親に鍛えなおされる事になる。



□兄妹革命


「お父様、私セリカとお兄様のクリスは結婚致しますわ」

「え!?」

「阻むのならお父様とて容赦しませんわ。また、同時にこのラブドキキューン王国にOTAKU文化を取り入れたく思いますわ」

「ちょ!?」

「安心してください。お兄様と一緒に私も勉強しましたの。OTAKU文化の中でもHENTAIはお金にもなります。これを国策として進めましょう」

「待っ―――」

「ではお父様、これからお兄様とX指定の壁を突破してきますわ。では!」

「え、ちょっと待てセリカ!? いきなり何!? 何の話!? というか儂の出番これだけ―――」



□北の方の国から


「俺は今まで愚かでした」

「は、はあ」


 真剣な面持ちで語る青年を前に、受付の女性は困惑していた。だがそれに構わず青年は続ける。


「過去の事に縛られて、勝手に見下して嘲っていた。良く知りもしないのに決めつけて、そして利用する事で優越感を感じていたんです」

「そ、それは確かに問題ですね」

「ええ。今思えば何とも恥ずかしい。けど俺はずっとそうやって己の心を保ってきました。だけど今ならわかります、俺は少し無理をしていた。自分でも知らない内にストレスを溜めこんでいたんです」

「それは良くないですね」

「はい。だけど俺はそれに気付かず……気が付けばどんどん心が歪んでいました。だけど、そんな俺を彼女達が救ってくれた」

「彼女達……」

「はい。彼女達は多くは語りません。だけどそのつぶらな瞳が、肉感的な体が、あふれ出る乳が俺の荒んだ心を包み込んでくれたんです」

「もしかして今わたしセクハラされてます?」

「彼女達に出会って俺は変わった! 今までの自分の愚かさに気づき、そして真実の愛に気づいた!」

「そ、それはまあ良かったですね」

「俺は今までの自分を恥じて、新たな自分になるために踏み出し始めました。こんな人間では生徒達を導けない、いや、むしろ迷惑になってしまうとも思い教職から離れ彼女達と自分を見つめなおしながら生きていく事を誓った! それは険しい道だけど、だけど俺は彼女達と一緒なら歩いていけるんです!」

「よ、良かったですね……」

「貴方もそう思ってくれますか? ならば……ならば何故……」


 どんっ、と青年――加持若彦は机を叩き身を乗り出すようにして正面にいる女性に向けて叫んだ。


「何故この書類を受理してくれないんですか!?」

「人間と牛の婚姻届なんぞ受理できる訳ないでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ずだんっ、と加持に負けず劣らずの勢いで女性――市役所の窓口担当の哀れな女性は机を叩き叫び返した。


「何故ですか!? 彼女達の素晴らしさは貴方もわかってくれたのでしょう!? 何故受理されないんですか!?」

「何故といったかこの男!? むしろ何故それが通ると思った!?」

「愛があれば問題ない! それに親御さんには許可を取った!」

「大有りだゴラァ!? 大体なんですかこの名前は!? 加持佐代子ってのはまだいい! 問題はこっちよこっち! 加持アンドロメダって何だコレ!? どこの星の住人だ!?」

「大岩井牧場だが」

「冷静に回答するなこのど変態!? というか人間と牛ってだけでも頭痛ものなのに2頭!? 2頭同時!? どんだけ業が深いんですかアンタ!?」

「愛さえあれば、俺は二人を養っていける!」

「そういう問題じゃない!? 誰か、誰かこの変態を何とかして!?」

「俺達の愛を否定するのか!? あれだけ語ってもまだわかってくれないのか!?」

「知るかぁぁぁぁぁぁ!? 勝手に動物セラピーでもしてアニマル楽園で惚気てろ! というかもうこの相手嫌ぁぁぁぁぁぁ!」


 哀れな窓口担当女性が叫ぶが他の職員は目を合わせない。当然だ。誰だってこんな案件担当したくない。だがそんな中から一人、年配の男性が歩み出てきた。


「おーい、兄ちゃん。お宅が玄関前で繋いでる牛、ところ構わず糞をしてるんだが」

「何だって!? 大変だ! 早くこの書類を受理してくれないか。彼女達が待っている!」

「帰れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 

□ボス


「以上が、調査結果です」


 静かでうす暗い室内のあちこちからため息が漏れる。その原因は今しがた報告された内容による物だ。

 室内には6人の少年少女が居た。彼彼女らは頭を抱えたり眉間を揉んだりと、疲れた様子を見せている。だがその中で、一番奥に座っていた少年だけは厳しい顔で報告書を見つめていた。


「多少問題がある者も居ましたが、どの生徒、教師も我らの学園、そして日本の未来を担う逸材でした。ですがその尽くが道を外れてしまっています。そしてそんな彼らの近くでは常に彼女の影が見受けられます」


 説明を担当しているのは眼鏡をかけた少年だ。彼は淡々と手元の報告書の内容を語る。


「明確な証拠はありません。ですが、関係しているのは明らかです。如何いたしますか―――――会長」


 その言葉に室内の視線が一斉に奥に座る少年に向けられる。視線を向けられた少年は報告書から顔を離すと静かに口を開く。


「俺はこの学園を、そして生徒達を護る責任がある。だがもし、その生徒に仇を為すのが同じ生徒であるというのなら、それを裁く事も厭わない」

「では……」


 室内の視線を集める少年は立ち上がり、そして力強くうなずいた。


「この学園の生徒だけに飽き足らず教師までも狂わせる魔女を粛正する。生徒会長であるこの俺、氷帝正也が」


 おぉ、と室内がどよめく。その反応に頷きつつ、正也は鋭い眼差しで報告書に添付された写真、そこに映る女子生徒を睨みつけた。


「待っていろ、綾宮春華」


林川君→激突恋愛開始フラグは男にも適用だった

委員長→とっても楽しそう

不良→なん、だと

ショタ→実は腹黒だけどトラウマに敗北

異国の王子様→扱いが適当

先生→道は険しい


新年一発目からホモSM女装近親獣ネタってこれでいいのかと自問自答


けど恋愛要素あるしオッケーオッケー

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