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1. vs 入学式パン食いマラソン的出逢い編

普段書いてる物の息抜きで、悪役令嬢ブームに乗ってみました。

短編ではありませんが中編位で合間合間に不定期更新です

 生まれ変わったらその世界は乙女ゲーでした。


「と、いう事で対策会議よ。理奈、美奈」

「ね、姉さん! お嬢様が突然イカれた事を言い出しましたよ!?」

「最近熱かったものねえ」


 ある昼下がり、信頼のおける侍女姉妹を呼び出して告げた私の言葉に妹の美奈は慌て、姉の理奈はいそいそと清涼飲料水を差し出してきた。何て失礼な。


「別に狂った訳でも夏の暑さに内なるマモノが目覚めた訳ではないわ。唐突に思い出したのよ」

「姉さん、この病院はどうでしょうか!? 腕のいい闇医者が居ると評判です!」

「そうねえ、ここなら万が一情報を漏らしたら闇に葬っても問題無さそうねえ、闇だけに」

「聞けコラ」


 こちらを無視して話を進める二人は何やら不穏な言葉を口走ってる。だが今はそれどころではないのだ。


「良いから聞きなさい。この綾宮春華の凄惨な未来を」


 私は未だに病院を探そうとタブレットを弄っている美奈の頭蓋に優しくアイアンクローをかましつつ、自らが思い出した事を語り始めた。


 この世界が乙女ゲー。それに気付いたのは今朝の事だ。明日から私は高校に通う事になるのだが、今朝起きて、クローゼットに綺麗にかけられたその制服を見た瞬間、全てを思い出したのだ。自分が一度死んだ事。そして生まれ変わったこの世界が、前世でやっていた乙女ゲーの世界と酷似していると。

 ゲームの名は『直球恋愛(ストレートラブ)乙女革命ガールレボリューション』通称はストレボ。この口に出すだけで恥ずかしくなるようなタイトルが私が生まれ変わった先の世界。何故気づいたかと言えば通うはずの学園『天ノ宮学園』はまさにそのゲームの舞台だし、私の名前、綾宮春華はそこに通ういわゆるお嬢様という設定だったからだ。

 このゲームのコンセプトは『使い古された恋愛ネタをド直球でもう一度』という何ともぶっ飛んだものである。具体例を挙げるなら、物語の主人公でありヒロインでもある少女、神山姫季が入学式の日、食パンを口に加えながら走っていると曲がり角で攻略対象の男性キャラとぶつかる事から物語始まったりする。鉄板だ。ああ、確かに鉄板だ。もう鉄板過ぎて普通の恋愛ゲームではその手法はもう使われず、ギャグ漫画やアニメで多様される様なネタ。それをあえてやる、と言うのがこのゲームの全てである。というか主人公よ、仮にもお嬢様学校に通うのにその登校態度はどうなんだよ少しは自重しろ。

 因みにその主人公は例の如く、両親が他界した際に実は母方の祖父が資産家でありそこに引きとられた事で急に一般ピーポーからお嬢様へとジョブチェンジされた~というまたありきたりな物だ。まさに直球。

 いやまあそんな事はどうでもいい。他にも地名や他の使用人の名前。天ノ宮の生徒会の情報やその他諸々を私は調べ尽くした。朝起きてからつい先ほどまで調べ続けていたが、そのどれもがここがストレボの世界と同じだという事を示していた。

 と、なるとだ。この私もやはりその登場人物という事になる。確かにストレボに綾宮春華なる人物は居た。それも最悪な形で。

 すらりと伸びた整った体と控えめな胸。少し釣り目がちの強気な瞳は日本人らしかぬ碧眼だ。確か祖父がイギリスだがどっかの人だったので所謂クォーターである。煌びやかなな金髪は当然ドリルの様に巻かれている。何故なら直球だから。そんな私、綾宮春華のゲーム上での役割は簡単。ひたすら主人公をいびり倒す嫌われキャラ。つまり悪役令嬢って奴である。

 もうどこまで直球何だよと思う程に見事に悪役令嬢ルックな私はただひたすら主人公をいびり倒し、最後は主人公と結ばれた男性キャラによって断罪されて家は没落と言う、もう説明するのも面倒な程直球に悪役令嬢役なのだ。


「つまりそれが春華様の未来であると?」

「そうよ。嘘くさいと思うかもしれないけど、ここまで情報が揃ってるのよ? 嫌な予感しかしないわ」


 漸く落ち着いた二人を前に、私は話を聞かせる。だが当然ながら二人は首を傾げていた。


「姉さん、不味いですよ。これマジですよ……」

「ええそうね……旦那様に連絡しなければ」

「待ちなさい! いやもう気持ちは分かるけど待って! そんな生温かい眼で見つめないで頂戴!」


 本気で心配した様子の2人に必死に説明する。ここで見捨てられるとどうにもならないのだ。


「……あのー春華様。一応春華様のお話を信じるとして、先の展開が分かっているのならそうならない様に気を付ければ良いのでは?」

「そ、そうですよ! 確かに昨日までの春華様は金使い荒くて高飛車で傲慢チックな所がある典型的な悪役お嬢様コノヤローやーい貧乳! とか思ってましたけれど、今はそういう気配が無くてちょびっとおかしいな? とは思います。だけどそれなら明日から直せば良いんですよ! 胸はどうにもなりませ―――きゃああああ!? 痛いぃぃぃぃ!?」

「だ・れ・が貧乳だ……!?」


 失礼な事を抜かす美奈に再度アイアンクローをかます。ちっ、このボディは非力であまり力が出ない!


「私だってそう思ってるわよ。何もゲーム通りに行動せずに慎ましく生きて行けばいいんじゃないかって。けどさ、何か癪なのよね」

「癪、と言いますと?」

「いきなり変な世界に生まれ変わって、暗い未来しか見えないから大人しく隠れる様に過ごすってのはさ、なーんか気に食わないのよね。そんな事は気にせず好きに生きたいじゃない」

「まあ、言いたいことは判りますが。ではゲーム通り金に物を言わせて主人公に嫌がらせする鬼畜お嬢様コースを?」

「いやいやいや、それやったら本当にアウトだし」


 そう、コソコソ生きるのは嫌だ。だがあの学園に入る以上、何が起きるかが分からない。いつ何が、どんなきっかけでヒロインや攻略キャラと関係し、それが何を引き起こすのかも。ならばどうするか? 私はひたすら考え、そして一つの結論に至った。


「守るのは癪。だから攻めるわ。但し相手はヒロインでは無いわ。第一、何もかもゲーム通りになるなんてそれこそ気に食わない。だったら徹底的に壊してやるわ」

「うわぁ、何か危険思想。春華様って前世は一体何だったんですか……」

「確かにそこは気になりますが……それでどうするのでしょうか?」


 理奈が不思議そうに首を傾げる。そんな彼女に私は自信満々に答えた。


「恋愛させない」

『は?』


 二人の間の抜けた声が室内に静かに染み渡った。


「あのー春華様? それってつまり春華様曰くヒロインで主人公な神山さんとやらの恋愛を妨害するって事ですよね? それって結局ゲームと同じなんじゃ」

「違うわよ。別にいびったり苛めたりなんてしないわ。ただありとあらゆるフラグを叩き折って、ヒロインに極めて健全な学園生活を送らせてやるの」

「そ、それに何の意味が」

「乙女ゲーとは何か? それはヒロインと男性キャラとの恋愛ゲームよ。ならそのゲームをぶち壊すにはその恋愛要素を、それに至るフラグを全て叩き折ってやればいい! そうすることで私を寄りにもよって悪役令嬢なんかに生まれ変われさせた何者かへのあてつけにしてやるのよ!」

『お、おおう……』


 逃げるのも、怯えて隠れて暮らすのなんてクソ喰らえ。没落バッドエンドコースなんて持っての他だ。ならば攻める。極めて攻撃的にこの世界の有りとあらゆるフラグを叩き折ってやる。


「待っていなさいヒロイン……。この私が、貴女を恋の『こ』の字も知らない様な立派な健全女子にしてやるわ!」







『アルファ位置に付きました。目標を確認』

『べ、ベータ、位置に付きました』

「ご苦労様。ならば作戦通りに」


 翌日。天ノ宮学園へ続く道を歩きながら私は満足げに頷いた。

 入学式に相応しい煌めく太陽と爽やかな風が頬を撫でる並木道。他のお嬢様や御曹司共が車で学園に向かっていくのを横目で見ながら、あえて私は歩いて登校していた。それはある目的があるからだ。


「この先の曲がり角。そこが例の場所よ。各位、気を引き締めなさい」

『アルファ了解』

『ベータ了解……あのー春華様? 本当にやるんですか?』

「当然よ。貴方たちだって納得したじゃない」

『納得したというかさせられたというか……』


 耳に付けた超小型通信機から漏れるベータ――美奈の言葉に眉を顰めた。


「昨日あれから色々調べたでしょう? 私が知っている事が本当に正しいかどうか」

『え、ええ。確かにその何でしたっけ……所謂『攻略キャラ』とかいう人たちのプロフィールを調べたところ、1から10まで春華様の言う内容と一致しました』

「なら何が不安なのよ?」

『いえ、春華様がトンデモレベルの真正ストーカーだった可能性も否めないかなーと』

「アンタね……っ」


 よりにもよってストーカー扱いとは。プルプルと怒りに震えつつも何とか堪える。自分が言っている事が確かに馬鹿げているのは確かなのだ。多少の誤解位は許容範囲だ。


『駄目ですよベータ。春華様は私達の主。侮辱は許されませんよ?』

「アルファ……っ!」


 アルファ――理奈の言葉に私は感動した。やっぱり持つべきものは良き僕よね!


『思っていても口に出すものではありません。我々は金で買われた犬。犬は犬らしく飼い主に尻尾を振れば良いのです』

「……」


 いい、別にいいさ。言ってることは事実だし! 記憶が戻るまでの私の態度はそれはもう酷い物だったんだし! これから挽回するんだよ!


『わかりましたよぉ。所でずっと思ってたんですけどこのアルファとかベータって何ですか?』

「コードネームよ。何を今更」

『コードネームですね。それが何か?』

『いや、当然の如く言われる春華様もそうですがナチュラルに受け入れている姉さんも正直どうかと思うんですが……』

「馬鹿ね。秘密行動にはコードネーム! 鉄板でしょ?」

『それに直球でもありますね』

『…………なんとなくこの世界がイカレている事は理解してきた気がします』


 そう、それは何より。

 そんな事よりも今大事なのはいかにフラグを叩き折るかだ。昨日のうちにゲーム内のありとあらゆるフラグを思い出し、そして対策を考えてきたのだ。


「まずは入学式の日よ。入学式当日、主人公であるヒロイン、神山姫季は寝坊してしまい食パンを咥えたまま慌てて家を飛び出すの。そして急いで走る最中、ある男子生徒とぶつかってしまう」

『それが所謂攻略キャラですね』

「ええそうよ。名前は林川克。数年前に親が事業で大成功して一気に御曹司に成りあがった元一般庶民。つまり成金!」

『うわあ言っちゃった』

「だまらっしゃい。そんな訳で彼も天の宮に通う事になったけど、突然の環境の変化にまだ慣れておらず、不安だった。そんな入学式の朝にヒロインと衝撃的な出会いをしたことから切っ掛けが生まれるの。そして話している遂に二人はお互いの境遇が少し似ている事から親近感が……って所ね」

『成程。それが今日と言う訳ですね』

「ええそうよ。だから私達のする仕事は簡単。最初のフラグ『入学式の日に食パン咥えて走ってたらぶつかっちゃった♪ しかもスカート捲れてる!? このラッキースケベ♡』フラグを叩き折る事で、林川攻略を初っ端なから叩き潰す!」

『言ってて恥ずかしくありませんか?』

『いいんですよベータ。こういうのは雰囲気が大事です。例えどれだけアレがアレな内容でも』


 侍女二人がなんか言ってるが気にしない。そんな事どうでもいいのだ。もし本当にゲームの通り進むのなら、それは私は未来を、そしてそこに至る条件を知っているという事。ならば先回りしてありとあらゆる可能性を潰し、必ずやヒロインに超健全な学園生活を送らせてやる!


『っ、来ました! 来ましたよ! 対象B、林川克を視認しました! 確かに歩いて登校しています』

『こちらも確認しました。対象A、神山姫季です。確かに食パンを咥えて全力疾走しています。このルートで行けば林川と衝突コースです』

「流石ね。いい仕事をしたわねアルファ」


 今日の最大の問題。二人が何処でぶつかるかと言う点は、昨日のうちに理奈が両者の自宅からの通学コースを調べ上げ、最も事が起こる可能性が高いルートを算出していたのだ。


「なら作戦開始よ。何としてでも二人の衝突を阻止しなさい!」

了解です(ザーベルグ)

『ね、姉さん!? 今なんか不思議な言語が!?』


 美奈、じゃなくてベータの叫びは無視して私も鞄から双眼鏡を取り出した。二人と通信している間に私も通学路を外れ、問題の交差点を遠くから見える位置に移動している。近くにあったコーヒー屋の看板を壁にして事を見守る。


『まずは作戦A。手っ取り早く、道を塞ぎます』

「ええ、お願い」


 作戦A。最もシンプルなそれは単純にヒロインの通学路を塞ぐだけである。通らせたくない道があるのならそこを塞ぐという他人には迷惑極まりない作戦だが私は心を鬼にして市内の皆さんには心の中で謝りつつ許可をだす。


『……封鎖完了。対象Aは驚いた様子を見せましたが諦めて別の道に入りました。その道から対象Bの下へ辿り着くのは相当な遠回りになるので問題ないでしょう』

「そう。……案外あっけなか―――」

『ほ、報告! 対象Bの進行ルート上で突然ガス漏れ騒ぎが!? 対象Bがルートを変えました!?』

「何ですって!? アルファ。ルート算出!」

『算出しました。対象Bの変更ルートと対象Aの変更ルート。このままいけば別の曲がり角でぶつかります』


 何ぃぃぃぃ!? 何てタイミングの悪い! 私は怒りのあまりその場で地面を蹴り上げているとコーヒー屋の店主に不気味な物を見るような眼で見られた。大丈夫です、ただの運命に抗っているだけですので不審者ではありませんよ?


「次よ次! もう一度ルートを塞ぎなさい!」

『了解しました……対象Aのルート上に悪質セールス風黒服軍団を投入しました。対象Aはルートを変更』

『た、対象Bの進行方向で突然マンホールが爆発しました!? 水が溢れて来て通行不能! 対象Bは進路を変更です!』

『ルート算出。やはりまた別の道でぶつかりますね』

「な・ん・だそれはぁぁぁぁぁぁ!? マンホールが爆発ってここは中国か!? もう一度よ!」


 隠れていた看板を握りしめつつ唸る。店主が怯えた眼で一歩引いた。大丈夫です。ちょっとエキサイトしてるだけですよ?


『対象Aのルート上に電気工事を理由にバリケードを設置。対象Aはルート変更しました』

『た、対象Bのルート上に突然野犬の群れが!? 対象Bもルートを変更! 衝突コースです!?』

「だああああああああああ!? こうなったら全てのルートを防ぎなさい! 奴らを登校させるなぁぁぁ!?」


 握りしめていた看板がメキッ、と音を立てて潰れ始めた。店主は店内に逃げ出した。


『了解……水道工事、ガス工事、電気工事、電話回線工事。ありとあらゆる方法で全ルートを封鎖し―――いえ、いけない……対象Aが加速っ。恐らく遅れているペースを取り戻す気かと。このままいくと……回りに回って結局最初の交差点に向かっています』

『た、対象Bもです!』

「ぐぬぬぬぬう」


 そうか……これが俗にいう世界のISHIという奴なのか? どんなに妨害しようとも強制的にその事象を起こさせようとする所謂厨二的設定がこの世界にも働いているとでも? けどじゃあ、私はどうすれば、このままじゃ、このままじゃ……っ!


「舐めないで欲しいわね……っ!」


 私は決めたのだ。何としてでも運命に抗って見せると。世界のISHI? そんなもの、この私が許容するとでも思ったか!?


『駄目です。このままでは二人は激突します。つまりフラグが成立してしまいます』

『は、春華様。一体どうすれば――』

「決まってるわ……こうするのよ!」


 答えるが否や、私は全速力で駆け出した。目標は二人が激突する交差点。そこ目掛けて死にもの狂いで走る! 走るけど……なんて貧弱なボディなの!? 全然速度が出ない! だがそれでも私は走る!


「見えたっ!」


 正面に見える小さな交差点。私の直線状には対象Bこと林川が。そして私から見て右側の道からは食パンを咥えて対象A、つまりヒロインの姫季が走ってきている。それを確認すると私は迷わず走り抜けた…………ヒロイン目掛けて。


「どぉぉぉりゃああああああ!?」

「……えっ!?」


 ヒロインが交差点に入る寸前、ついに私は彼女へと届く。その姿を間近で見て油断した瞬間、私は足をもつれさせ、


「ぐほっぅ!?」

「え、え? あ、ああああああああごめんなさいぃぃぃ!?」


 もつれた拍子に沈んだ上半身。そのボディにヒロインの膝が華麗に決まった。だって車も人も急には止まれないから。


「ぶへっらっ!?」


 蹴りだされた私に肉体は宙に浮き、そこに繋がるヒロインのボディアタックによって大ダメージを受けた私は当然の如く地面に倒れ付した。


「きゃ、きゃあああああ!? す、すいません! すいません! ぶつかっちゃってすいません! うわあああどうしよう!?」


 腹と全身に走る痛み中、私の体を姫季が起こし涙目で叫んでいる。馬鹿ね、私からぶつかったというのにここまで心配するなんて。貴方に対する好感度が少しあがったわ。


『は、春華様!? 大丈夫ですか!?』


 通信機から声が聞こえる。だがそれよりも私には知りたいことが……


『ご安心下さい。対象B、林川克は春華様達を無視してそのまま交差点を抜けました。どうやら登校を最優先した様ですね。あのスルー力は中々……』

「それは……よかった……」


 つまり私はフラグをしっかりと叩き折ったのだ。運命に抗って見せた。ああ、なんて心地よいんだろう。勝利の美酒とでも言うのだろうか。久々に感じるこの感覚。


「あの、あの!? 大丈夫ですか!? い、今病院に!」


 ああそうだ。この子にも言っておかねばならない事がある。このヒロインには恨みも何もないが、私の未来と反抗の為、極めて健全に学園生活を過ごしてもらわなければならないのだから。

 私は薄れゆく意識の中、ゆっくりと腕を上げ、こちらを介抱しようとする姫季の肩を掴んだ。


「よく……覚えておきな、さい」

「え……?」


 涙目できょとんとする姫季に。私は出来るだけ真剣な眼差しで告げる。


「男なんて……駄目よ。運命に……抗っ……あふん」

「何の事ですか!? というか意識が!? きゅ、救急車―――!?」


 落ちていく意識の中、姫季の叫び声が聞こえた気がした。


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