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第1話 幻想世界の完人

完人録側の動きは実際の"完人録"本編とは全く関係はありません。いわゆる"もしも"話のようなモノ…


霧裂 想刃(きりさき そうじん)ーーーー



彼は19歳の"元"大学1年生であり、今現在最も恐れられる『人間』である。そんな彼を今の幻想郷の状態から振り返れば、然程長い話にはならない程度だ。


想刃は幻想郷に落とされ、紅魔館にて拾われ、執事として働く事になる。しかし彼はそれが嫌で嫌で仕方が無く、どうやって脱け出すかだけ考えていた。


そんな彼だが、執事と言うより人間としてあり得ない人物であった。紅魔館内の図書館の壁をブチ破って侵入した本泥棒を撃退し、紅魔館の恐るべき"妹"と殆ど対等に渡り合ったのだ。


更には格闘での実力は幻想郷随一の紅魔館の門番でさえ蹴り倒し、終いにはメイド長を半殺し、お嬢様を血で真っ赤に染まるまで斬り裂いた。だが飽く迄彼は"人間"、空すら飛べない弱い人間なのだ。


そんな彼は今、紅魔館を脱け出す事に成功し、一人道を歩いていた。何処に通ずるかもわからない道を、ただずっと歩いて…


ふと彼は何かの気配を察知し、地面を蹴ってその場から自分の間合いギリギリまで飛び退き、様子を見る。その直後、先ほどまで彼が居た場所に"人"が落ちてきた。


「何故落ちてきた? 落下の衝撃音からして然程打ち所は悪くない。落下距離も短い」


想刃は遠目から相手を観察、監視して、様子を伺いつつ、相手の状態を見極める。これが"完璧"と呼ばれる者の意味と能力と言う事なのか。


思えば、想刃は自分が何故幻想郷(ここ)に"居る"のか、紅魔館の執事をしていた当時は不思議で仕方が無かったが、今はそんな"重大そう"な事すらもどうでも良く感じ始めている。しかし、自分自身が何故そんな事をどうでも良く感じ始めてるのか、己が一番わからず、その理由を知りたがっていた。


「普通の人間か、または腐る程居るバケモノの一人か、確かめてやるか」


想刃は見事な湾曲軌道を描く刃の剣、TALWARL(ターワル)を服の袖から取り出し、剣の尖端を相手に向けながら一歩一歩と歩み寄って行く。


相手の目の前まで近づいた想刃は細心の注意を払いつつ、横向きになっていた"相手"の体を仰向けにする。仰向けにした直後に見えたのはパーカーを着た少年だった。


ーー様子からすると気絶しているだけだ。しかしこいつが落ちてきた場所に居ると、何だかイライラしてくる。


少年に近づいてから何故かイライラが止まない想刃は、先ほど少年が落ちてきた真上を見上げた。無論、誰も居る筈は無いーーしかし、想刃が見上げたと同時に想刃の中のイライラは消えていた。


「ーー面倒だ」


気怠そうに頭を掻きながらも、ターワルを袖にしまい直し、パーカーの少年を腕の脇を持って引きずり、近くの木に凭れされた。ついでにと言う具合に周囲に漂っている妖気を"断ち切る"。


妖気を断ち切ると同時に周囲から光が無くなり、"暗闇"が想刃を襲う。しかし、そんな暗闇でさえも想刃が全身に力を込めただけで全て断ち切れてしまい、暗闇は消えた。


「暗闇使って目隠しか、煙幕より易いな。隠れてないで出て来い、どうせお前も"バケモノ"だろ」


想刃は袖からターワルを素早く取り出し、逆手に持って身構える。このような経験を幾度となく体感してきた想刃には、既に日常茶飯事、そんな体験は(いず)れにしても全て想刃を何らかの形で強くしていた。


「私の闇を"斬る"なんて、大したものねーー」


妖しい女の声が見えない視線の先の暗闇からそっと聞こえてくる。暗闇から不気味で小さな笑い声が聞こえると、暗闇から女が空中を浮遊して現れた。


ーーやはりバケモノだったか。


予想通り、案の定だった想刃は、ターワルを強く握り締め、女を睨みつける。女は金髪の黒服、腕を大きく広げ、"十字架に掛けられた聖者"の如く佇んでいる。


「私はルーミア、闇に巣食う人喰いの妖怪。あなたの後ろに居るコが食べたいの、どいてもらえる?」


「嫌だね、あんた等みたいな輩に喰われたら、"こいつ"もイイ迷惑だし、俺に取っても胸糞悪りぃんだよ」


想刃はパーカーの少年の前に立ち、ターワルを順手に持ち替える。だが想刃は始めからパーカーの少年を守るつもりなど無く、ただ少年を狙う"奴"が気に入らないーーそれだけである。


「あら、ダメなの? イヤね、私もあなたみたいな人を喰うのは気が引けるの。だってあなた、強いし、私達と同じ匂いがするもの。あなたからは"吸血鬼"の血の匂いがするけど、まぁ、少なくとも血を浴びてる事には変わりない」


「テメェ等と一緒にするなクズが」


想刃は口調を荒げ、脚で地を蹴り、一瞬でルーミアの目の前まで近づいた。ルーミアも自身の闇から大剣を形成し、互いに高速で剣で打ち合い始めた。


目にも留まらぬ速さで凄まじい打ち合いを人外のルーミアと人間である想刃は行っている。普通の人間にはあり得ないであろう事も、想刃には"この通り"、決して容易いワケでは無いが、出来てしまうのだ。


打ち合いの中、想刃の剣とルーミアの剣が強くぶつかり、衝撃を生み出し、周囲の木々を薙ぎ払う。直ぐに地面に着地した想刃はスペルカードを取り出し、それと同時にルーミアもスペルカードを取り出した。


「飛燕『烏の傷翔』!」


「夜符『ナイトバード』…!」


想刃は剣を高速で連続で振るい、黒い剣気がルーミアに向かって飛ぶ中、ルーミアは剣を持ってない反対の手から自身の闇で形成した鳥を無数に飛ばす。しかし、火力や数で言ったらルーミアの方が圧倒的に有利になる。


「ウフフ、あなたも馬鹿ね。私の鳥は私自身の闇、永遠に形成出来るのに対し、あなたは自分の身体を目一杯使う事で無尽蔵に放つ。火力の差と体力の差は歴然」


妖しく笑い、尚剣を振るい続ける想刃を見て、徐々に高笑いし出すルーミア。ところが、ルーミアは闇の鳥に変化ーーいや、想刃の攻撃に変化が現れた事に気付いた。


想刃の放つ剣気が鳥を一つ落とすのが限界だったのに、今は闇の鳥を幾つも切り裂き、貫通して行く。更には想刃の動きにも乱れは無く、寧ろ動きとスピードがキレを増している。


「あり得ない、あり得ない。そんな馬鹿な…! 人間に、唯の人間に何故あそこまで…」


ルーミアが驚き、怯んでる間に、闇の鳥はいつの間にか想刃に攻撃に追いつけなくなり、行動を停止した。行動を停止した所為で、今まで来る筈の無かった想刃の剣気がやって来て、咄嗟に闇で自分を覆い、剣気を防いだ。


闇を開いたルーミアは周囲を確認するも、先ほどまで居た想刃は何処にも見当たらない。ふと背後から"吸血鬼"の血の匂いがし、振り向くが、その直前にルーミアの背中の胸部辺りを想刃の剣が貫く。


「どうして…」


「閻閣『孤高の朱炎刃』…」


ルーミアを刺し貫いた想刃の剣に朱い炎が纏いだし、ルーミアを焼く。そして自身の剣をルーミアから抜いた想刃は更にスペルカードを唱える。


「皇闇『雀琅の焔焉』…」


剣を思い切り横に振るい、朱い炎をルーミアに飛ばす。朱い炎は直ぐ様形を変え、炎の鳳凰の如く飛翔し、ルーミアにぶつかり、切り裂きつつ焼き尽くす。


直後、ルーミアの貼っていた全ての闇が晴れ、ルーミアが地面に向かって真っ逆さまに落下する。想刃はその瞬間を逃さず、地面に着地したと同時にルーミアの真下まで一瞬で駆け寄り、スペルカードを取り出し、唱える。


「天崩『蛇翔葬天牙』…」


唱えると同時に身体を捻り、180度横に脚を開き、自分の右足の蹴りを真上へ突き出す。その蹴りはルーミアの腹部へと直撃し、その威力のまま数十メートル先に蹴り飛ばされてしまった。


「はぁぁ、面倒だった」


そんな気怠げな言葉を吐き捨て、剣を服の袖にしまい込み、頭を掻きながらパーカーの少年が凭れるその場を後にした。そして彼はまた宛も無く歩く…






続く


"こんな感じ"の小説になります、皆さん良ければ読んで行ってください。


よろしくお願いします。


ではまた次回

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