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[資料]中世では家畜が食べられない?[内政物]

作者: 肥前文俊

・はじめに

中世ファンタジーでハムとか、焼肉とか平気で食べている描写を見ると、すごく違和感を感じます。

中世も中期になると、貴族を除き、一般人が肉を食べる機会は激減します。

もちろんお肉は食べましたが、それも冬の豚肉や年老いた家畜を間引くときぐらいです。


ほとんどの獣は、貴族の狩猟のために野放しにされていました。


そこで、家畜について書き、家畜化された動物のリアリティがもう少しあるとイイな、と思いました。




家畜とは「人間が利用する目的で野生動物から遺伝的に改良した動物」でした。


◆家畜化の始まり◆


野生動物を飼育し始めたのかについては、

宗教的な動機が大きいと考える人達が多いそうです。


石器時代の狩人たちは、神の加護によって獲物を得られると信じていたので、祈りを捧げた。


狩猟の強力な協力者として犬を家畜化していました。

当時は狼ですね。民謡や逸話が残っています。


狩猟の時代に家畜化されたのは犬だけです。

その他の農用家畜は定住して栽培・飼育生活を始めてからです。


歴史的に考えるとワンニャン戦争は犬の勝ちです。

私は両方好きです。



◆家畜化しやすい動物種◆


全哺乳類5000種の内、15種類ほどしかいません。

殆どが偶蹄目に属しています。


結構少ないですよね。

それは、家畜に選ばれる条件が結構厳しいからです。


条件を揚げていきましょう。


1.群居性が強く、順位制で群の秩序を保つ。

  群れで生活して、ボスがいてますよ、ということですね。

  羊が農用動物として一番早く家畜化されました。

  中国では太公望の一族がきょうという羊飼いの一族で知られています。


2.一夫多妻制。

  数を増やすだけなら、沢山の交配があった方が良いからですね。


3.大胆で人に慣れやすい。

  人に恐怖を抱かなかった結果、狩り尽くされて絶滅した動物も沢山います。

  違う世界線では家畜化が成功していたかもしれません。


4.草食性・雑食性。

  イノシシは自然界の掃除屋スカベンジャーでした。

  ブタが世界で飼育されているのは、その広食性が上げられます。

  本当になんでも食べるんですねえ。


  フランスでは人糞を食べるからと、街中で放し飼いされていたそうです。

  草食性なのは、肉食だと、食糧事情が厳しい中世の人たちが飼えないわけです。

  獲物の取り合いになってしまいます。

  草やドングリを食べておけ、ということです。


5.環境への適応力が強い

  色々な地域に連れて行かれたりしますからね。

  食べ物や気候など、対応する能力がいります。

  

6.性質が温順、行動が遅鈍。



◆家畜化による動物の変化◆


 野生動物から家畜化するにあたって、多くの変化が現れます。


1.体格の小型化

  飼料が不足しがちなため。例外はウマ。

  野生時の半分ぐらいにまで落ちたそうです。


2.頭骨の短縮

  下顎骨が小さくなる。イノシシは第一世代の10年の飼育で短縮があった。


3.繁殖能力の増大

  性成熟の早期化・繁殖季節の消失・一腹産子数の増加。

  飢餓に備える必要がないから、安心して子孫を残すようです。

  貧乏な農民が子沢山なのは……娯楽がないせいでしょう……。


4.変異の増大

  同種内で系統間の違いが大きくなる。

  犬の種類って非常に幅広いですよね。

  狼と犬の差よりも、犬同士のほうが大きいですよ、という話です。


5.自己防衛力の低下

  柵で守られているわけですから、力は弱くなります。

  ただし病気には強くなる場合もあります。


◆メンデル以前の家畜品種の改良◆


 手探りの時代です。

 ただ、人を代表に、なんとなく遺伝のようなものは知られていました。

 あいつの息子はチビばかり生まれるな、とか。

 赤毛の子供は赤毛なんだな、とか。


 16世紀ではまだ乳用種の分化は見られていません。

 つまり、この時点の牛は牛車をひいたり、犁をひいたり、戦車にされたりしていました。

 泌乳能力は500~700㎏。

 お肉としては老衰や病死のものを食べるのが普通でした。

 あとは、神様への供物です。


 18世紀赤褐色の短角牛一回の搾乳で2ガロン(約9㎏)です。


エリスの記録に

「母牛は分娩後最初の90日は1日3ガロン、次の90日は1ガロン、その次の90日は僅か0.2ガロン」

というものがあります。

乏しい乳を子牛と人間が分け合っていたようです。




◆ロバート・ベイクウェルさんの業績◆


1800年頃から厳密な遺伝交配が行われだしました。

体型・能力・血統の選別が行われ、ゲージ飼いが始まりました。

スーパー種牛の走りです。


近親交配を行なっていたので、キリスト教に目をつけられました。

生涯独身だったといいます。


1700年には体重170kgが平均だったのが、

交配後、1800年には380kgまで増えています。



その後、四輪農法などで飼料がたくさん採れるようになり、家畜の数は爆発的に増えました。

食肉として食べられ出したのは、産業革命時代以降という事になります。

中世ファンタジーのおかしさがご理解いただけたでしょうか。


◆まとめ◆


ドラゴンの家畜化はムリということですね。

ただし、オリジナルに最初の条件を満たした動物を作り出せば、リアリティのある畜産が可能でしょう。


ゲージ飼いと近親交配、そして農法改革をうまくすれば、内政物ではチート領主に十分なれます。

ただ、教会などに目をつけられないように気をつけましょう。

先進は異端です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんちゃって異世界やファンタジーはそれはそれはそれで楽しいですが、海外のfanficなどを読むと農耕民族と狩猟民族とでは「食糧確保」「環境適応」「宗教の絡み」「居住」等の考え方が違うなあと…
[良い点] とても、参考になります [一言] でも、正直、小説として、書けないのは辛いですね(´・ω・`)
[一言] >中世も中期になると、貴族を除き、一般人が肉を食べる機会は激減します。 とありますが、どの年代のどの地域のことでしょうか?
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