第85話 過去の惨劇と女狐と侯爵家令嬢
ダンジョンを抜けた先、廃墟と化した学園。そこで出会った、自称、よろず屋の狐耳、狐尻尾のあざとくウザイ、そして怪しい女性、遊羅さん。彼女の作ったという、不思議な鈴の力で、この世界の過去を見る事に。
全ての始まりは、20年前の大流星群。その際に落ちてきた隕石から精製された、永久エネルギー源にして、数々の能力を持つ驚異の結晶"コア"。やがて、量産型コアが作られ、世界中に広まり、繁栄の絶頂を迎えた世界でしたが、終焉の日が来ました。"コア"の反逆という形で……。
「全く、もう! ツッコミを入れてくれないなんて、ノリが悪すぎますよ。私の一番の持ちネタなのに!」
「申し訳ありませんが、私にとって、そんな事はどうでも良いのです。それよりも早く、1週間後。終焉の日の事を見せてくださいません?」
一番の持ちネタだという、自身の狐耳と狐尻尾に私がツッコミを入れなかった事が相当、気に入らなかったらしく、遊羅さんは先程から、ブツブツ文句を言っています。そのせいで、1週間後の終焉の日の記憶の再生が止まっています。そんなに自信の持ちネタでしたの?
「……はいはい、分かりました! それじゃ、1週間後、終焉の日の記憶の再生、スタート!」
私が急かした事で、投げやりではありますが、終焉の日の記憶の再生を始めた遊羅さん。さて、"コア"の反逆だそうですが、確かにこれは恐ろしい事ですわね。なぜなら、"コア"は世界中に広まり、あらゆる分野に食い込んでいます。もはや世界にとって、必要不可欠な存在。それらが一斉に反逆を起こしたなら、文字通りの世界の終焉ですわ。あ、始まりましたわね。
遂に、終焉の日の映像が出ました。場所はこの教室ですか。時間は前回と同じ、朝の授業前からですわね。よく有る朝の光景。やがてチャイムが鳴り、授業開始。それから30分程、経過した時でした。それは正に突然の出来事。
「う、グ……あカナャヤタヤハアノワヤナjtPwmgpヤかゆなあアナ1587690584390クハナナロヤajpwthtogアハヒナヤ!!!!」
先日、女子生徒達に囲まれチヤホヤされていたイケメン男子生徒。彼が突然、立ち上がり、意味不明な叫びを上げ、暴れだしたのです。騒然とする周囲。教師や男子生徒達が彼を取り押さえようとしました。ですがそこへ。
「あ……ガ……なまかはりかあたやらは57921495885gtdgpamwtagtmajtかなたらを名アマら他はかたわ はや綿はきゆ!!!!」
今度は金髪の女子生徒が同様に意味不明な叫びを上げ、暴れ出したのです。そして他の生徒達も次々と同じ症状を発症。どんどん増えていきました。周囲はパニック状態です。そして、こうなってしまったら、もはや収拾が付きません。そんな中、動いた人物がいました。赤毛のチリチリ天然パーマで目付きの悪い、そばかす顔の小柄な少年。そう、小島君です。
皆がパニックを起こす中、彼は極めて迅速に動きました。鞄を手に取り、更に突然、ナイフをその手に出現させると、パニック状態の教室から脱出。廊下を走り始めました。その際、窓の外が見えましたが、学園内同様、パニック状態でした。"コア"の反逆だとは分かりますが、彼らに何が起きたのでしょうか?
廊下を走る小島君。既に学園内は地獄と化していました。奇声を上げる生徒達や教師達が暴れまわり、無差別に破壊と殺戮を行っています。そんな中、小島君は見事な体さばきで、狂った生徒達、教師達をやり過ごしていきます。一々相手にしていたら、もちません。その時、聞こえてきた声。
「小島! こっちだ! 早く来い!」
声の主は白衣を着た大人の女性。ショートカットの黒髪に眼鏡。あれは、芦屋先生でしたわね。
「邪魔者は消えろ!」
そう叫ぶなり、芦屋先生は何かカードの様な物を投げました。それは小島君を追っていた狂人達に貼り付くと、たちどころに凍らせ粉砕。ちょっと、あれは呪符ではありませんの? そんな私の疑問はさておき、小島君は芦屋先生と合流。
「助かりました、芦屋先生。ありがとうございます」
「礼はいい。それより、四夜堂、グライリッヒ、バルディーニと合流せねばならん。簡単に殺られる奴らではないが、急ぐぞ!」
「はい!」
どうやら、あの3年生達を探しに行く様ですわね。無事だと良いのですが。
黒い糸が絡み付き、狂人達をバラバラに切断。プシュッ、プシュッというくぐもった音と共に、狂人達の頭が撃ち抜かれていく。金色の閃光が飛び、狂人達を両断する。呪符が張り付き、狂人達を凍らせ粉砕。
「……良かった。この人達が味方で」
一方的な殺戮を目の当たりにして、そう呟く小島君。幸い、3年生の3人組とは無事に合流。現在、彼らは学園からの脱出を計っていました。目的地は学園裏に有る林とか。
彼らの会話を聞くに、芦屋先生及び、3年生の3人組は、魔道に属する一族の末裔だそうです。故に、"コア"の危険性にも気付いていたと。ちなみに小島君は、科学者であり、"コア"について調べていた父親から、あれは危険だと聞いていたそうです。
「"コア"、奴らの目的は高い知能を持つ有機生命体と融合し繁殖する事だって、親父が言っていたんですよ。初めて聞いた時は、親父がとうとうイカれたかと思いましたよ。でも、"こいつ"を親父に託されて、嫌でも信じる羽目になりました」
小島君の右手の甲に融合している緑色の結晶。すなわち"コア"。
「結晶だけに"ケッシー"と名付けたこいつ。"コア"の中で唯一、仲間を裏切り、こっちの味方をしてくれた。戦いに関してド素人の俺を夢の世界でビシバシ鍛え、知識を教えてくれた。そのおかげで助かった。ありがとうな、ケッシー」
すると、ぼんやりと光る、小島君の右手の甲に融合している"コア"。
「油断するなよ、小島。まだ安心するには早い。皆で脱出するまでは!」
右手の甲に融合した"コア"に感謝する小島君に対し、油断しない様、注意する芦屋先生。そこへ突然、襲い掛かるピンク色のビーム。全員、素早く回避しますが、あのビームには見覚えが有ります。そこに現れたのは、やはりあの甲冑型兵器、いえ、パワードスーツでした。ただし、その内部から、大量の血が溢れ出ていましたが。
「ちっ! やはりそうきたか! "人間を取り込んだ"な!」
血塗れのパワードスーツに対し、吐き捨てる芦屋先生。なるほど、僅かな生命反応や、血液反応はそういう事でしたのね。人間を取り込み生体パーツとした事で、以前を上回る性能を得たそれに苦戦する5人。
「まずいですね。これは量産機。それでこの性能なら、専用機だと更に上回る事に」
「そうなるだろうな。特にあの生徒会メンバーの機体に来られるとまずい」
「ちょっと、やめてよ! そういうのフラグだから!」
量産機でも自分達がてこずる事から、専用機が出てきた際の事を危惧する四夜堂先輩に、グライリッヒ先輩が、生徒会メンバーの機体とやらの事を上げます。その事に対し、フラグ発言だと嫌がるバルディーニ先輩。
「やれやれ、バルディーニの言った通りだな。生徒会メンバーの成れの果てのお出ましだ!」
現れたのは、それまでの量産機とは明らかに違う機体。それが4機も。専用機となれば、確かに量産機とは段違いの性能のはず。そして始まった5人対、量産機に専用機4機を加えた戦い。
「全く、鬱陶しい! この学園の生徒会メンバー選出法の害悪がこういう形で証明されるとは!」
「麗華の言う通りだな。"コア"適性の高い者だけを集めたトーナメント。その上位成績者で成立した生徒会。奴ら"コア"からすれば、絶好の宿主だからな」
「こんな事なら、さっさと殺しておけば良かったね。まぁ、そういう訳にもいかなかったんだけどさ」
「ごちゃごちゃうるさいぞ、お前ら!」
量産機と専用機の混成部隊を相手に戦いを繰り広げる5人。ビームや実弾が飛び交う中、それでも応戦していました。しかし、量産機より高性能な専用機が出てきた事で、状況は不利になる一方でした。
四夜堂先輩の黒い糸がパワードスーツに絡み付くも、逆に糸を切られてしまい、グライリッヒ先輩の銃弾も装甲に弾かれ、バルディーニ先輩のナイフも刃が立たず、芦屋先生の呪符も通じません。私のオリハルコン製の剣でも簡単には斬れなかった程の頑強さでしたし。
「ふむ、残念ながら、火力が足りませんねぇ。まぁ、人間にしては出来る方ですがね。とはいえ、このままではじり貧で殺られますね。さて、どうするのでしょうね?」
5人の戦いを見ながら、そう言う遊羅さん。苦戦する姿を見ながら、ニヤニヤ笑っています。……やはり、私この人が好きになれません。そんな私に気付いたらしい、遊羅さん。
「そんなに怒らなくても良いじゃないですか。それよりも、ちゃんと見ましょう。彼らはまだ、諦めていませんよ」
「言われなくとも、そのつもりですわ」
遊羅さんの言う通り、彼らはまだ諦めてはいません。ならば、見届けないと。私は5人の無事を祈りつつ、過去の映像を見つめます。
「まずいな。このままでは押し切られて殺られる」
苦虫を噛み潰した様な顔の芦屋先生。どこまでいっても、所詮、5人。数で負ける以上、不利は免れません。ナナ様なら、大火力魔法で一気にケリを付けられるでしょうが、残念ながら、この5人にはそこまでの火力は有りません。しかも、専用機の内の一体。大気を操る機能を持つらしいそれが、風の刃を飛ばし、執拗に四夜堂先輩を狙ってきました。四夜堂先輩の様子から見て、心当たりが有る様です。
「……そんなに私が憎いですか、『生徒会長』。でも、それは逆恨みというもの。貴女が次期当主の座を失ったのは自業自得。私は貴女の無能ぶりを上に報告しただけですよ。『貴女の従者』としてね」
パワードスーツ達の攻撃をいなしながら、淡々と語る四夜堂先輩。この方、生徒会長とやらの従者でしたのね。で、生徒会長は次期当主の座を失ったのを、四夜堂先輩のせいだと恨んでいると。しかし、従者に見限られるとは、相当無能だった様ですわね。
「何せ、格下相手に勝ち誇り、同格や格上には挑まない。思い付きで物事を決める癖に責任は取らない。人望ゼロどころか、マイナスに突き抜けている、学園最強(笑)の生徒会長様だったからな」
「ぶっちゃけ、コア適性以外じゃ、勉強も運動も人望も全部れーちゃんに完敗だったし。そもそも、生徒会自体、コア適性が高いだけのクズばかりで、れーちゃんが助けてくれなきゃ、まともに機能してなかったし」
四夜堂先輩に続けて、グライリッヒ先輩とバルディーニ先輩も、ここぞとばかりに貶します。……とことん、無能者揃いの生徒会でしたのね。コア至上主義に凝り固まった、この学園のやり方に呆れる私。しかし、映像内の戦況は悪化の一途を辿っていました。コア適性の高い人間を取り込んだパワードスーツの力は5人の力を上回っているのですから。そんな中、四夜堂先輩が意を決した顔で言いました。
「ここは私が引き受けます。皆さんは逃げてください。敵の中心はあの無能生徒会長であり、私に執着しています。足止めには私が最適です。急いでください! 全滅したらおしまいです!」
その言葉に皆が反発。四夜堂先輩に全てを押し付けて逃げようなどと腐った考えは持っていない様です。
「バカな事を言うな四夜堂! ならば私が残る!」
特に反発したのは芦屋先生。教師として、生徒を犠牲にして逃げるなど出来ないと。
「芦屋先生、貴女は教師。皆を導くにはうってつけの人材です。それに私は元はあの無能女の従者。私が責任を持ってあれに引導を渡します」
「しかし!」
食い下がる芦屋先生でしたが、四夜堂先輩は翻意しません。それどころか、生徒会長を挑発しました。
「どうしました、 お嬢様? ご自慢の最新型の専用機、『エアリエル』を持ってして、たかが生身の人間である私一人殺せませんか? 笑えますね、だから、学園最強(笑)なんですよ貴女は! 悔しかったら、私を殺してみせなさい! このボンクラ!!!」
それまでの落ち着いた口調から一変。激しく罵ります。その効果は抜群。
『ダマレェェェェェェ!! 私ハ学園最強! 私ハ天才! 私ハ次期当主! 死ネ! レイカァァァァァァァァ!!」
四夜堂先輩の挑発にキレた生徒会長は、それまで以上に強力かつ、大きな風の刃を立て続けに放ってきました。ですがそんな怒りに任せた攻撃に当たる程、四夜堂先輩も他の皆も間抜けではありません。むしろ、味方であるはずの他のパワードスーツを巻き込み破壊する始末。恐らくこれが四夜堂先輩の狙い。自分達にパワードスーツを撃破する火力が無いなら、撃破出来る者を利用する。確かに頭の切れる人ですわね、四夜堂先輩。それにひきかえ、安っぽい挑発に乗り、味方を潰すとは実に無能ですわね生徒会長。確かに次期当主の器ではありません。そんな事をしている内に、パワードスーツは生徒会長だけに。
「チャンスです。皆、早く行ってください!」
パワードスーツが生徒会長だけになった今をチャンスと見た四夜堂先輩。皆に逃げる様に促します。
「……すみません! 四夜堂先輩! 後で合流しましょう!」
「麗華、先に行って待っているぞ!」
「れーちゃん! ごめん!」
「済まない、四夜堂。行くぞお前ら!」
四人は四夜堂先輩にその場を任せ、泣く泣く離脱しました。四夜堂先輩はそんな4人を見送る事無く、コアに取り込まれ、パワードスーツと融合した化け物と成り果てた生徒会長と相対します。
「私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強」
壊れたラジオの様に同じ言葉を繰り返す生徒会長。確かに、人として完全に壊れていますわね。そんな完全に壊れた生徒会長を冷たく見つめる四夜堂先輩。
「……なまじ、才能に恵まれたが故に、壁にぶつかる事も無く、周りから甘やかされ、好き放題。その結果、才能に胡座をかき、才能を錆び付かせ、他人の気持ちを考えない無責任な言動で余計な恨みを買い、次期当主の座を失った。挙げ句の果てにコアに取り込まれ、化け物になる始末。お嬢様、幼い頃より貴女に仕えてきた私からの最後の忠義。貴女1人を逝かせはしません。私も黄泉へとお供しましょう」
四夜堂先輩が取り出したのは、それまでの黒い糸と違う白い糸。そこへ生徒会長の放った風の刃。なぜか、四夜堂先輩はそれを完全にはかわしませんでした。脇腹を大きく切り裂かれ、真っ赤な鮮血が噴き出します。
「私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強、私ハ学園最強」
血塗れになってうずくまる四夜堂先輩を前に勝ち誇るかの様に、私ハ学園最強と繰り返す生徒会長。ですが、彼女の終わりがすぐそこに迫っていました。
「……四夜堂流……禁技…紅糸灼滅!!」
四夜堂先輩の手にする白い糸。今や鮮血に染まり真紅の糸と化したそれが、生徒会長へと襲いかかり、絡みつきました。生徒会長は赤い糸を切ろうと足掻くものの、それまでの黒い糸と違い、びくともしません。それどころか、どんどん絡みつき、ついには完全に赤い糸に包み込まれ、赤い大きな糸玉と化しました。重傷を負った身体のどこにそんな力が有るのか、それを自分の元へと引き寄せる四夜堂先輩。そして、大きな赤い糸玉に寄り掛かります。明らかに、彼女の命は尽きようとしていました。
「…………愚かな主の始末を付けるのも従者の務め……。さようなら……コルネリア、アドリアーネ、芦屋先生。…………小島君……滅却!!!」
それが四夜堂先輩の最後の言葉でした。彼女のかけ声の直後、赤い糸玉から凄まじい勢いで白い灼熱の業火が立ち上ぼり、それは天を衝く程の巨大な火柱となったのです。火系の魔法を得意とする私の目から見ても、その恐るべき熱量が分かりました。あのパワードスーツを焼くどころか、一瞬で蒸発させたのですから。同時に四夜堂先輩も……。
「おやおや、生徒会長を道連れに死にましたか。まぁ、仕方ないですね。火力が足りませんでしたし。では、逃げ延びた小島君達の方を見ましょう」
四夜堂先輩が自分の命と引き換えに生徒会長を倒した事に、何の感傷も無い遊羅さん。小島君達の方へと映像を切り替えます。
「貴女、四夜堂先輩が命と引き換えに皆を助けたのに、何とも思いませんの?!」
そのあまりにも冷たい態度が許せなかった私が食ってかかるものの、無意味でした。
「所詮、他人事ですからね。それに私は商人。利益にならない事に興味は無いですね」
「くっ!…………」
悔しいですが、遊羅さんは何一つ間違った事は言っていません。腹立たしい程に正論です。
「そんな事より、ほら、小島君達の映像が出ましたよ。どうやら、無事に目的地に着いた様ですね」
木々の生い茂る林の中、小島君達、4人がいました。彼らの前には、転送用の魔法陣。ですが、彼らは違う方向を見ていました。天を衝く、巨大な火柱を。
「……四夜堂先輩……」
「麗華……」
「れーちゃん……」
「済まない、四夜堂。本当に済まない……」
4人共、四夜堂先輩の死を悟り、涙を流していました。ですが、悲しんでいる場合ではありません。早く、脱出しなくては。皆が悲しみに暮れる中、いち早く動いたのは芦屋先生でした。やはり、年長者だけはあります。
「泣くなお前ら! 私達は一刻も早く脱出せねばならん! 四夜堂の犠牲を無駄にするな!」
「「「はい!!」」」
涙を拭いつつ、そう言う芦屋先生と、それに応える3人。急いで転送の準備を行います。やがて、準備が完了。ついに脱出の時が来ました。
「準備完了だ。全員、魔法陣の中に入れ。小島、エネルギーの方は頼む。グライリッヒとバルディーニは私の術を手伝え」
てきぱきと指示を出す芦屋先生。彼女に後を任せた四夜堂先輩の判断は正しかった様です。転送術が起動し、光り始める魔法陣。
「反逆したコアから放出されるコアエネルギー。それが転送術の原動力。コアが一斉に反逆したからこそ、脱出出来るとは実に皮肉なものだな」
反逆したコアのエネルギーを利用して脱出する事に自嘲気味の芦屋先生。
「仕方ないですよ。俺達だけでは、脱出する為のエネルギーが足りないんですから」
そんな芦屋先生をフォローする小島君。
「芦屋先生、小島、今は脱出に集中すべきだ。失敗は許されん」
「れーちゃんの犠牲を無駄にしないで」
グライリッヒ先輩、バルディーニ先輩が、そんな2人を注意。
「済まない。では行くぞ!」
芦屋先生が転送術を発動。眩しい光が魔法陣より放たれ、それが消えた時、既に4人の姿は有りませんでした。無事に脱出出来た事を祈りましょう。
「と、まぁ、こんな事が有ったんですよ」
胡散臭いニコニコ笑顔で語る遊羅さん。彼女が映し出していた過去の映像が消え、周りの景色は元の荒れ果てた教室へと戻りました。しばらく、言葉も無い私でしたが、気を取り直し、気になる事を遊羅さんに聞く事に。
「遊羅さん。質問が有りますけど、よろしくて?」
「何ですか?」
「現在、この世界に生き残りの人類はいますの?」
「いません。小島君達を含む、ごく僅かな者達は脱出しましたが、それ以外は絶滅しました。人類だけではありません。全ての有機生命体がね。貴女も気付いているでしょう? この世界からはまるで生命の気配を感じない事を」
「……えぇ。まるで生命の気配がしない。この世界が既に死んでいる事はすぐに分かりましたわ」
これは私がこの世界に踏み入れた瞬間に感じた事でした。命の気配が無い、死に絶えた世界。このような体験は初めてでしたわ。コアの力は恐るべき物ですわね。断じて向こうの世界に侵入させてはなりません。一刻も早く、この世界との繋がりを断ち切らないと。そんな事を考えていると。
「ところで、私からも少々お話が有るんですがよろしいですか?」
突然の遊羅さんからの質問。得体の知れない相手だけに、自然と警戒してしまいますが、それを押し殺し、平静を装いつつ、返事。
「何でしょう?」
対する遊羅さんはニコニコと胡散臭い笑みを浮かべつつ、言いました。
「いやね、ミルフィーユさん。貴女は先程、ここに来たばかりで、ここに関する情報は持っていないと言いましたよね?」
「それが何か? 嘘はついていませんわよ」
妙な事を言い出しましたわね。ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべるその顔からは何も読み取れません。仕方ないので、向こうの出方を見ます。
「えぇ、そうでしょうね。私もその事に関しては何も言いません。ですが」
ここで一旦、区切ってきました。一体、何を言おうとしているのか? すると彼女はズバリ本題を突き付けてきました。
「"貴女がここに来た理由”を聞いていません。私はここに来た理由を言いましたよ。ならば貴女がここに来た理由は何ですか? まさか、遊びに来た訳ではないでしょう?」
相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべる遊羅さん。……ここは正直に話すべきですわね。この人は底が見えません。下手に嘘やごまかしなどしたら、後が怖いですし。
「分かりましたわ。私がここに来た理由をお話しします。そもそものきっかけは……」
「なるほど。そんな事情が……。確かにそれは一大事ですね。それに、そのリゼル何とかと言う、剣士。実に怪しいですね。どこのアニメやラノベの主人公かと私も思いますよ。あまりにも出来過ぎていますし」
私から、ダンジョン化した廃坑の事や、黒い剣士リゼル・シュバルツ達の事といった、一連の事情を聞いた遊羅さん。うんうんと頷いています。
「貴女の大きな目的は、2つ。1つは、この世界と貴女の住む世界の繋がりを断ち切りたい。もう1つは、リゼル何とかとその取り巻き達を何とかしたいと」
「おっしゃる通りですわ。特に、2つの世界の繋がりは早急に断ち切らないといけません。ただ、原因が分かりませんの。これではどうにもなりません」
私が直面している一番の問題。それは2つの世界が繋がった原因が分からない事。原因が分からなければ、手の打ち様がありません。
「そうですねぇ。問題を解決するにはその原因を突き止めなくてはなりません」
所詮、他人事だと思っているのか、あまり真剣さの感じられない遊羅さん。事実、彼女からすれば他人事ですし。
「ま、それはひとまず置いておきましょう。もう1つの問題である、リゼル何とかの事を考えましょうか。話を聞く限りでは、見た目はともかく、中身は真っ黒みたいですしね。とりあえず、もっと詳しい情報は有りませんか?」
原因不明の世界接続の問題は、ひとまず置いておき、もう1つの問題である、リゼル・シュバルツ達のより詳しい情報を遊羅さんは求めてきました。胡散臭い人ですが、実力者でもあります。この際です、贅沢は言えません。私はノートパソコンを取り出しました。
「ならば、これを見てください。リゼル達とパワードスーツの戦いの動画ですわ」
「へぇ、それは良いですね。では、早速拝見しますね」
そして、しばらくの間、遊羅さんは動画を見ていました。
「ふむふむ、なるほどね。よく分かりました。ミルフィーユさん、もう良いですよ。ありがとうございました」
「随分、熱心に見ておられましたわね。そんなに興味深い内容でしたの?」
遊羅さんは何度も動画を再生しては熱心に見ていました。動画から少しでも多くの情報を読み取ろうとしていたのでしょう。さすがに目が疲れたのか、目薬をさし、こちらを向かれました。
「えぇ、なかなか興味深い内容でした。そして、いくつか確信した事が有ります。お話ししますね」
「ぜひ、お願いしますわ」
動画を見て何かを掴んだらしい遊羅さん。
「まず1つ目、リゼル何とかですが、彼は転生者ですね。私は冥府魔道の商人、転生者を見抜くぐらい容易い事。あまりにも出来すぎの外見と、それとは裏腹の腐った気配。ノートパソコンの画面越しでも分かりましたよ。ただし、ニコポ、ナデポの類いを持っている様なので、そこは警戒が必要かと。全く、絵に書いた様な典型的なクズ転生者ですねぇ」
遊羅さんの分析結果、1つ目。黒い剣士リゼル・シュバルツは転生者との事でした。まぁ、私もそうではないかと思っていましたが。あまりにも出来すぎていましたからね。大体、なんですか、あの黒ずくめのイケメン剣士などと中二病丸出しのキャラは。
「さすがは冥府魔道の商人ですわね。転生者の事もご存知でしたか。ところで、ニコポ、ナデポとはなんですの?」
耳慣れない単語が気になり、聞いてみました。まぁ、良からぬ事でしょうが。
「おや? ニコポ、ナデポをご存知ない? ならば説明しましょう。平たく言えば、魅了、洗脳、マインドコントロールの類いです。ニコポは笑顔を見せる事で、ナデポは相手の頭を撫でる事で発動します。クズ転生者御用達の能力ですよ。元がクズだけに、まともな手段ではモテないので。このリゼル何とかも、それで取り巻きの女達を手に入れたのでしょう。洗脳すればゲスな本性を見せても問題無いですし、やりたい放題出来ますからね」
嘲りに満ちた表情でニコポ、ナデポの説明をする遊羅さん。確かにクズ御用達の能力ですが、同時に恐ろしい能力だと思いました。ナデポはその性質上、相手に触れないといけないので、近付かなければ防げます。しかし、ニコポは笑顔を見せる事で発動します。つまり少々距離を置いた程度では防げません。ですが何より恐ろしいのは事前に知らなければ、対処が困難な初見殺しの能力である事。他者を支配し操る能力。地味ですが、とても恐ろしい能力ですわ。上手く使えば、自分の手を汚さず、目的を果たせるのですから。
「恐ろしい能力ですわね。確かに私にも心当たりが有ります。先日、リゼル・シュバルツに手を組む話を持ちかけられて断った際、取り巻きの女が激昂したのですが、その際、女の目にはっきりと狂気が見て取れました。洗脳されているなら納得ですわ」
「へぇ、良く見ていますね。感心感心。まぁ、あんな見た目だけのクズに引っかかる女など、同じくクズ。用済みになったら切り捨てられますよ。ウフフフフ……」
リゼル・シュバルツに洗脳された取り巻きの女達の行く末を語り、不気味な笑い声を上げる遊羅さん。……間違っても善人ではありませんわね。
「それでは次に行きますよ。今度は貴女にも関わる事です。良く聞いてくださいね」
「はい、お願いしますわ」
リゼル・シュバルツの正体や、取り巻きの女達の話に続き、新たな話題に。今度は私にも関わる事とか。
「先程見せて頂いた、リゼル何とか達の戦闘の動画。あれを見るに、彼らはなかなか良い装備をしていますね。特にリゼル何とかの持つ、黒い剣。あれは魔剣ですね。使い手もなかなかやりますし、敵に回すと厄介でしょうねぇ。この際、はっきり言いましょう。ミルフィーユさん、仮に貴女が彼らと戦った場合、勝ち目は薄いですね。まずは数の不利。そして装備の差。何か反論は有りますか?」
装備の差、そして人数の差。痛い所を付かれました。当家は国内五指に入る名門。しかしその当家でも入手困難な物は有ります。例えば、聖剣、魔剣の類い。アニメやゲーム等では良く登場しますが、現実には、極めて希少な物。滅多に世に出ません。故に大変な価値が有ります。もちろん、その性能は高く、魔力付与されただけの武器とは段違い。当家にも1つだけ有るのですが、あれはスイーツブルグ家、当主の証。私には触れる事も許されません。
そんな私を、恒例の胡散臭い笑みを浮かべ、見ている遊羅さん。
「まぁ、装備に関してはともかく、こんな所に1人で来る事自体、妙な話ですね。何人かでチームを組むのが基本でしょう?」
「それは……」
反論しようとしましたが、途中で遮られました。
「侯爵家令嬢という、立場。それが貴女にとっての枷となっている。その立場故に、心から信頼出来る相手がいない。いや、他人を心から信頼出来ない。そうでしょう? 可哀想な人ですねぇ」
「………………私、貴女の様なタイプは大嫌いですわ」
「おやおや、嫌われてしまいましたね。困ったものです。ウフフフフ♪」
本当に嫌な性格をしていますわね、この女狐! 人の気にしている事を! 確かに私は侯爵家令嬢という立場上、どうにも他人を信用しきれない所が有ります。しかし、この女狐にだけは言われたくなかったですわ。当の本人は相変わらず、胡散臭い笑みを浮かべていますが。
「まぁ、そんな事は私にとってはどうでも良い事ですけどね。さて、ミルフィーユさん。せっかく装備の話をしたんです。ついでに貴女の装備を見せてくれませんか? 私は商人であると同時に、職人でもあります。侯爵家令嬢の貴女の装備に興味が有りましてね」
また、妙な事を言い出しましたわね。ですが、断ったとしても、何をされるか。仕方ないので素直に従う事に。
「……どうぞ、ご覧になってくださいな」
「おやおや、これはすみませんねぇ。では、拝見」
少しもすまないと思っていないと分かる態度で、私の装備一式を手に取り、あれこれ見定める遊羅さん。何をする気なのやら?
しばらく、私の装備一式をあちこちから見たり、べたべた触ったりと好き放題していた遊羅さん。ようやく飽きたのか、私に返してくれました……正直、持ち逃げされないかと思いましたわ。
「いや~、ありがとうございました。侯爵家令嬢の装備一式、堪能させて頂きました」
ニコニコ笑顔の遊羅さん。喜んでくれたみたいですわね。そう思って返事をしようとしましたが、次の言葉でぶち壊しに。
「ですが、これではリゼル何とか達の装備には勝てない。素材は良い。防具とナイフは高品質のミスリル。剣に至ってはオリハルコン。手元のスイッチで蛇腹剣に変えられる機構剣ですか。作った者の腕も良い。確かに良い装備ですが、それだけ。魔剣の前には無力。困りましたね、負・け・確・実wwwww。思わず草生えますよ私」
愉快で堪らないとばかりに嘲笑う女狐。この場で殺しても、構いませんわよね? 思わず剣を抜きたくなります。ですが、女狐はまたもや思いがけない事を言い出しました。
「でも、そんな時こそ、よろず屋 遊羅!信頼と実績のよろず屋 遊羅! 貴女の欲しい物が見つかる、よろず屋 遊羅!」
何やら、ここぞとばかりに自身の宣伝を始めました。でも、気になる内容ですわね。特に、"貴女の欲しい物が見つかる"という所。そして、この女狐は商人。ならば……。
「もしかして遊羅さん、貴女は私にリゼル達に対抗出来る装備を売ってくださいますの?」
とりあえず、聞いてみました。すると女狐はニンマリと笑います。
「そうですねぇ、売ってあげても構わないかな~、とは思っていますよ。ちなみに私、そこいらの雑魚商人と一緒にしないでくださいね。私は"買ってもらう"のではなく、"売ってあげる"のです。店主である私が一番偉いのです。客に媚びる気なんて微塵も有りませんよ、ウフフフフ♪」
「随分と上から目線ですわね。よくそれで商売になりますわね」
商人にあるまじき、客を見下した態度に呆れる私。ですが、女狐は動じません。
「私の取り扱う品は全て、私が手掛けた物。しかも素晴らしい逸品揃いですからねぇ。そんな品を買える事に感謝して欲しいぐらいですよ。ま、論より証拠。百聞は一見に如かず。この私、遊羅が手掛けた珠玉の品の数々、とくとご覧あれ!」
そう言うや、いなや、突然、私の目の前に数々の武具を始めとした品々が現れたのです。
「これは?!……………………」
一言で言えば正に圧巻! 私は夢を見ているのでしょうか?
「どうですか? 当店の品揃えは? これでも、ほんの一部に過ぎません。見ているだけではつまらないでしょう? 存分に手に取って確かめてください」
目の前の品々に圧倒された私にニヤニヤ笑いながら、話しかける遊羅さん。
私の目の前に有る、品々。正に珠玉の逸品。かつて邪神ツクヨが見せた神々の武具に勝るとも劣りません。これらを遊羅さんが作ったという保証は無いですが、少なくとも、これらの品々を所有している事は分かりました。そして、これらの武具が有れば、リゼル達に十分対抗出来るでしょう。
……彼女が素直に売ってくれたらですが。まぁ、ダメ元で聞いてみましょう。
「おいくらですの?」
すると実に良い笑顔を浮かべて一言。
「おやおや? 私がいつ、貴女に商品を売ると言いました? 私はあくまでも、商品を見せ、その手で確かめさせてあげるだけですよ? まさか、売ってもらえるとでも? (笑)」
この女狐が!!!
ここぞとばかりに私をコケにする女狐。怒りを通り越して、殺意が湧きます。即座に斬りかからない私は褒められても良いですわね。ですが、女狐は更に続けました。
「でもね、貴女はなかなか見所が有りますし、侯爵家令嬢という立場も有ります。上玉の顧客候補なんですよね。だから、貴女にチャンスをあげます。このチャンスを掴めたならば、私から貴女へ装備一式、差し上げましょう。目先の利益に拘るばかりが商人ではありませんからねぇ。ただし、チャンスは一度きり」
胡散臭いニコニコ笑顔で語る女狐。本当でしょうか?
「……その言葉、嘘ではありませんね?」
「疑うならどうぞ。ですが、私は約束は守りますよ。商人たるもの、信用第一ですから。さ、どうします?」
私にチャンスとやらを受けるか否か問う女狐。
「分かりました。受けましょう」
受けると聞き、更に笑みを深める女狐。
「その意気や良いですねぇ。では、行きます。この私、遊羅が武器を作るにあたって、何より重んじている事。それは何か答えてください。あ、制限時間は1分です。では、始め!」
こうして始まった、女狐、遊羅とのクイズ勝負。果たして、彼女が武器を作るにあたって、何より重んじている事とは一体、何なのでしょう?
「ちなみに、外したら、私を失望させた罰として、死んで頂きますよ。時間切れでもね。ウフフフフ……」
「?!」
笑顔で恐ろしい事を付け加えてきました。これは絶対に正解しなくては! 時間も有りません! 正解は一体、何ですの?!
やっと書けました。僕と魔女さん、第85話をお届けします。
遊羅が見せた過去の惨劇。それは宇宙から飛来した隕石から精製されたコアによる侵略と世界の滅亡でした。この世界の人類はコアをあまりにも過信した。その結果、世界が滅びた。うまい話には裏が有る、それの典型。
ちなみに小島君達は無事、脱出成功しました。彼らに関する情報を少し。
小島 悟:1年生 赤毛のチリチリ天然パーマで目付きの悪いチビ。コア適正も低く、周りから酷いイジメを受けていた。実は右手の甲にコアが融合しており、超人的な身体能力を持つ。コアを研究していた父親から、コアの危険性を教えられた上で、対抗策として、友好的なコアを移植された。後に3人の先輩達、1人の教師と知り合う。
四夜堂 麗華:3年生 長い黒髪の清楚な美人。とある名家に仕える従者の一族。生徒会長を努める名家の令嬢に仕えていたが、令嬢のあまりの無能、傍若無人ぶりに頭を痛めていた。ついに、令嬢の無能ぶりを上に報告。結果、令嬢は次期当主の座を失い、麗華を恨んでいた。最後は生徒会長を道連れに死亡。
コルネリア・グライリッヒ:3年生 銀髪のセミロングの冷たい印象の美人。陸軍中将の孫娘であり、射撃の名手。とある遺跡から発見された魔剣を溶かして作った魔銃の使い手。
アドリアーネ・バルディーニ :3年生 金髪のショートカットの快活な性格の美人。マフィアのドンの娘であり、海中の遺跡で拾った金色のナイフを使う。
芦屋 道子:化学担当の教師。黒髪のショートカットに眼鏡の理知的な美人。ヘビースモーカー。呪符の使い手であり、小島君と最初に接触した人物。コアの危険性にも早くから気付いていた。
3人の先輩達と芦屋先生はコア適正が低く、故に実力が有るのに、コア至上主義が蔓延する学園内での地位は低かった。結果、小島君と知り合いました。ちなみにコア適正の高さは諸刃の剣。コアの力を引き出せる代わりに、コアに侵食されやすいという事。小島君達はコア適正の低さと、あらかじめ、防護策をしていた為、助かりました。
さて、最後に遊羅とミルフィーユ。リゼル・シュバルツが転生者である事。装備の差、人数の差でミルフィーユに勝ち目が薄い事を語った遊羅。更に神々の武具に勝るとも劣らない品々を出してきました。そして、ミルフィーユに問いかけます。
「私が武器を作るにあたって、何より重んじている事とは何か?」
正解すれば、装備一式を譲ると。ただし、間違えたり、時間切れになれば殺すと。
果たしてミルフィーユは正解を言えるのか?
では、また次回。